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いま聞きたいQ&A

国債の価格と利回りが上下する仕組みについて、分かりやすく教えてください。

「国債利回り」とは、実際に得られる年間収益率です。国債の金利は発行の時期によって異なります。また株式と同様に市場での売買があり価格も常に変動しています。しかし償還時には購入金額にかかわらず額面金額が戻ってくるため、まったく同じ国債でも購入価格によって損益が異なり、つまり利回りが変動するのです。

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金利収入に売買差益も加えた収益率が「国債利回り」

「元本保証といわれている国債の価格が、なぜ上下するのだろうか」

これから投資を始めようという人や、金融の知識がそれほどない人ならば、こんなふうに思うかもしれません。この素朴な疑問を解くためには、最初に国債の価値を表すいくつかの言葉について整理しておく必要がありそうです。

国債の価値は、一般に「表面利率」「国債価格」「国債利回り」などの用語によって表されます。「表面利率」とは、国債の発行元である国が投資家に支払うことを約束した年間の利子率のことで、いわば国債の金利にあたります。固定金利型の国債では、発行時に決められた表面利率は満期償還まで変わりません。

ただし、それぞれの国債が採用する表面利率はさまざまです。新規に発行される国債の表面利率は、市中金利(金融市場で決まる標準的な金利)の動向などを勘案して決められるため、同じ年限(満期までの期間)の国債でも発行時期によって表面利率は変わることになります。

新規発行の国債を購入して満期償還まで保有し続けた場合、表面利率にしたがって毎年一定の金利収入が受け取れるほか、償還時には元本も戻ってきます。一方で、国債は一部の種類を除いて、株式と同様にいちど購入したものを市場で売却したり、すでに市場で流通しているもの(既発債)を購入することも可能です。市場での取引は「国債価格」に基づいて行われますが、その価格は常に変動しているため、安く買って高く売れば、株式のように売買差益を得ることもできるわけです。

「国債利回り」とは、表面利率による金利収入に市場取引による売買差益も加えて計算した年間収益率を表します。国債に投資するにあたっては、それがどのような投資形態であろうと、表面利率による金利収入の部分は変わりません。しかしながら、市場取引を行うと売買差益が発生するため、それに応じて国債利回りは変化することになります。

国債の「相対的な魅力向上→価格上昇→利回り低下」という図式

本題に入りましょう。国債の価格と利回りはどのように上下するのでしょうか。

国債価格に影響を与える主な要因としては、各国中央銀行の金融政策や各国内における資金需要の変動が挙げられます。例えば日本銀行が金融緩和策として利下げを行ったり、日本国内の企業や個人の資金需要が低下すると、それらに呼応して日本の市中金利も低下します。国債の金利はおおむね市中金利に連動して決まるため、新規発行される日本国債の表面利率も低下します

市中金利が低下するなかで、同じ年限の国債が2カ月連続して発行されたと仮定しましょう。新規発行された国債Aの表面利率が0.5%で、1カ月前に発行された国債Bが1.0%だった場合、投資家の立場から2つを比べると既発債である国債Bの方が金利面で有利なため、相対的な魅力の高さから購入が増えて国債Bの価格が上昇します。

国債は購入時期にかかわらず、償還時に戻ってくる元本相当分の金額(額面金額)は変わりません。そのため国債Bを価格上昇後に購入した投資家は、満期償還まで持ち切ると価格面で差損が発生し、同じ国債Bを新規発行時に額面金額で購入した投資家よりも利回りが低下することになります(*)。

すなわち国債に関しては、「市中金利がこれまでより低下→新規発行される国債の表面利率がこれまでより低下→既発の国債価格が上昇→既発の国債利回りが低下」という図式が成り立つわけです。反対に市中金利が上昇する局面では、まったく逆の図式となります

国債利回りが低下する要因として、上記以外にも中央銀行による国債の大量購入や運用難による国債そのものの人気化などが考えられます。日銀は2013年以降、異次元金融緩和の一環として年間80兆円を目標に市場から国債を買い入れてきました。結果として市場全体に占める日銀の国債保有シェアは4割超となっており、こうした日銀による買い占めがマイナス金利など、国債の極端な利回り低下に少なからず影響を及ぼしていることは否めません。

オーストリアが17年に発行した100年国債の表面利率は2.1%でしたが、同国が19年6月に追加で100年国債を発行した際に利率は1.2%台まで低下していました。世界的な運用難で多くの投資家が少しでも高い利回りの追求に躍起となるなか、100年国債に人気が集中して以前より低い利率でも買い手がついた格好です。

ちなみに日本には100年国債は存在しません。現状、日本で発行されている固定金利型の国債を年限で種類分けすると、償還期限が1年以内の国庫短期証券(割引国債)、満期が2年および5年の中期国債、10年の長期国債、20年・30年・40年の超長期国債があります。いずれも流通市場で売買されています。

一般個人が投資できる国債のひとつ「個人向け国債」は、今回のテーマからすると例外的な国債です。満期が3年・5年の固定金利型に加えて、10年の変動金利型も用意されており、購入から1年が経過すれば国が額面で買い取ってくれます。中途解約にあたって価格変動を気にする必要のない、事実上の元本保証商品です。

(*)厳密にいうと、国債は新規発行時に必ずしも額面金額で発行されるとは限りません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。