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Q

国債バブルが日本経済に及ぼす影響について、どのように考えればよいですか?

国債バブルが日本経済に及ぼす影響について、どのように考えればよいですか?

国債バブルの影響について、ひとつ注意しておきたいことがあります。将来的に国債バブルが崩壊した場合、「国債価格の暴落」(長期金利の急上昇)が起きる可能性はありますが、それがそのまま「日本国債のデフォルト(債務不履行)」につながるわけではありません。日本国債のデフォルトは、言い換えれば「日本の財政破綻」に相当するものであり、国債価格の暴落とは意味するところがまったく異なります

そもそも日本国債がデフォルトを起こすことは、現実論として考えづらいものがあります。日本国債はすべてが自国通貨の円建てであり、その9割以上が国内での消化です。極端な話、国債償還の原資が足りなくなった場合には、日銀が円通貨を必要なだけ発行することで対応が可能です。

ギリシャ国債は事実上のデフォルトに陥りましたが、それはギリシャ国債がもともとの自国通貨であるドラクマ建てではなくユーロ建てであり、海外での消化が多かったからです。加えてギリシャは対外純債務国だったため、いったん国の信用力が低下すると市場でのユーロ調達が困難となり、国債の償還時に必要なだけのユーロを用意できなくなったわけです。

一方で、国債価格の暴落は日本でも過去に起こったことがあります。例えば近いところでは、2003年に銀行がVaR(バリュー・アット・リスク)というリスク管理手法に基づいて国債の保有リスクをいっせいに圧縮しようとしたため、国債の売りが売りを呼ぶ展開となりました。新発10年物国債の利回りは同年6月の0.43%から、8月には1.4%台まで急上昇しました。

国債消化の新たな形がインフレと円安をもたらす

今回の国債バブルが将来的に崩壊する場合、その引き金は国債残高の66%を保有する国内金融機関によって弾かれるかもしれません。銀行や生命保険会社といった国内金融機関が、新発国債を従来のようには購入しなくなり、あるいは購入できなくなり、保有している既発国債を売却することによって国債バブルの崩壊が始まると予想されます。

それは主に、以下のような理由によってもたらされます。

  • ●家計貯蓄率の低下や、貸出先企業による債務返済の滞りによって、金融機関に国債を新たに購入する余裕資金がなくなる。
  • ●国内景気の回復や復興需要の本格化などで企業の資金需要が急激に増加し、金融機関が対応を迫られて保有国債を売らざるを得なくなる。
  • ●政府による社会保障と税の一体改革が頓挫するなど、財政再建の停滞によって日本の信用リスクが高まり、金融機関が国債の保有リスクを強く意識する。

例え金融機関を中心とした国債消化が行き詰まったとしても、その時点で国が財源を国債に頼らなくて済む状態にあれば問題はありません。すなわち、景気が回復して法人や個人からの税収が増えたり、大幅な消費増税や社会保障改革によって歳入と歳出のバランスが改善されるといったケースです。

それらが国債バブルの崩壊までに実現せず、バブル崩壊後も国が引き続き「国債頼み」の財政運営を続けるならば、国債消化の新たな形を考えなければなりません。現実的には、日銀による国債引き受けか、海外での国債販売しか選択肢はないと思われますが、いずれもインフレと円安が進む要因になります

景気回復をともなわない物価上昇や、円安による輸入物価の高騰がインフレを加速するといった事態は、国民生活に大きな打撃を与えることになるでしょう。また、インフレと円安が同時に進行した場合、実質為替レートでみた円の価値は下がらないため、日本企業の輸出競争力を高める効果は得られないことになります。

インフレが進んで金利が上昇したら、その時点で高金利を目当てに国内金融機関が再び国債の購入に回るはず、といった見方も出ています。意見が大きく分かれると、私たち一般個人にとっては混乱が増すばかりですが、いずれにしても国がよほど性根をすえて財政再建に取り組まないかぎり、国債バブルの崩壊を機に、日本の経済環境が大転換に向かう可能性は高いようです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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