いま聞きたいQ&A

中小型株はいったん発掘されると大化けも期待できる

国内外を問わず、中小型株のリターンは長期的に大型株を上回る傾向にあります。海外株式との分散効果が得られやすいため、米国株などへの投資比率が高い個人投資家にとっては、運用資産に中小型株を組み込むことも有効な選択肢となりそうです。まずは投資信託を活用して、中小型株への投資を始めてみるといいでしょう。

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Q.中小型株の定義や特徴について教えてください。

最初に株式の規模別分類について整理しておきましょう。東京証券取引所は大型株、中型株、小型株をそれぞれ以下のように定義しています。

  • ●大型株:TOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、時価総額と流動性が高い上位100銘柄
  • ●中型株:TOPIX構成銘柄のうち、大型株に次いで時価総額と流動性が高い上位400銘柄
  • ●小型株:TOPIX構成銘柄のうち、大型株と中型株に含まれない全銘柄

東証では2022年よりTOPIXの見直し作業に取り組んでいます。今年(25年)1月に完了した第1段階の見直しでは、流通株式時価総額100億円未満の銘柄が除外され、TOPIX構成銘柄数は従来の約2200から約1700まで絞り込まれました。これを上記の規模別分類に当てはめると、TOPIXを構成する小型株は約1200銘柄あることになります。

また、TOPIXを構成する小型株は時価総額1000億円未満が目安と言われています。時価総額でみる限り、除外された銘柄も含めて「TOPIXの非構成銘柄」はすべて小型株に類するものと考えていいでしょう。

個人投資家の間では、「大型株=世界的に著名な大企業」「中小型株=知名度が低い企業」というイメージが強いかもしれません。しかし、東証が定義する中型株のなかには、マツダやヤマハ、TOTOなどの有名企業も含まれています。サンリオや良品計画など、今年8月12日時点で時価総額が1兆円を超える銘柄もけっこう多く存在します。

長期的にみると国内外を問わず、中小型株のリターンは大型株を上回る傾向にあります。理由は大きく2つ考えられ、ひとつは中小型株の特徴として新しい商品やサービスを提供する高成長企業が多いこと。もうひとつは市場の注目度が低いことから、中小型株には割安に放置されやすい性質があることです。

日本経済新聞がQUICKコンセンサスやロンドン証券取引所を運営する英LSEGのデータを集計したところ、証券アナリストの目標株価予想がない日本の上場企業は24年12月末時点で2870社、全体の70.5%に達していました。一方で、時価総額上位50銘柄については平均10.7社の証券アナリストがカバーしており、調査対象が事業規模や時価総額の大きな銘柄に偏っていることが分かります。

中小型株が軽視される背景には、まとまった資金を動かす機関投資家が手掛けにくいため、証券アナリストにとって調査の費用対効果が小さいという事情があるようです。逆にいえば、中小型株のなかには市場で十分に認知されていない「お宝銘柄」が少なからず隠れていることになります。そのため、いったん発掘されると大型株以上に株価が上昇するケースも多いわけです。

大型株に比べて海外株式との分散効果が得られやすい

野村総合研究所が算出する規模別株価指数のうち、時価総額上位50%の銘柄で構成される「ラッセル野村Top Cap(超大型株)インデックス」と、時価総額下位50%の銘柄で構成される「ラッセル野村Mid-Small Cap(中小型株)インデックス」のパフォーマンス(配当込み・年率換算)を比較してみましょう。2001年1月~25年3月末の期間では前者が5.82%、後者が7.31%と中小型株の方が優勢ですが、2015年3月末~25年3月末の期間では前者が9.61%、後者が8.34%と大型株の方が優勢になっています。

これは2018年ごろから日本株市場で大型株が選好される流れが続いたことが要因です。大型株は一般に、海外売上比率が大きいことから円安進行下では利益が増えやすいと言われています。大型株には株式持ち合い解消など経営改善の動きで先行した企業が多く、その点においても市場で好感を持たれやすかったと考えられます。

ただし、今年に入ってからは中小型株に追い風が吹いてきました。ひと頃に比べると為替の円安要因が薄れつつあるうえに、トランプ米大統領の関税政策を受けて、輸出比率の高い大型株を敬遠する動きも出てきたからです。

中小型株には日本国内に絞ってビジネスを展開したり、ニッチ商品で高いシェアを握ったりするなど、独自色の強い企業が多いという特徴があります。大型株に比べて海外株式との分散効果が得られやすいため、例えば米国株などへの投資比率が高い個人投資家にとっては、運用資産に中小型株を組み込むことも有効な選択肢となりそうです。

個人が有望な中小型株を自力で発掘するのは難しいため、まずは中小型株に絞って投資するタイプの投資信託を利用してみるのがいいでしょう。多くの中小型株投信はアクティブ型であり、調査費用などがかかる関係上、信託報酬は相対的に高めとなっています。なかには低コストのインデックス型もありますが、アクティブ型に比べるとリターンはかなり低めです。

中小型株投信は全体的に値動きが大きくなりやすく、過去には好成績が急激に悪化したケースも目立ちます。保有する場合には日本株運用の2~3割など、あくまでも資産の一部にとどめることが基本になります。(チームENGINE 代表・小島淳)

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