7 国債とは?~役割と赤字国債などの課題を知っておこう
債券のうち、国が広く人々からお金を借り入れるために発行するのが「国債」だ。
国債は、国がさまざまな公共サービスなどを運営するために必要なお金を調達するために発行しているが、課題も抱えている。
国債で得たお金の使い道に、道路や橋、ダムなど公共設備の整備がある。道路も橋も私たちの生活になくてはならないものだけど、莫大なお金が必要で、国が集めた税金だけで賄うのは難しい場合もある。それに道路や橋は一度つくったら、将来にわたって何十年もの間利用するから、いま働いている人たちから集めた税金だけで費用を賄うのは不公平ともいえる。
そこで、まず国債を発行してお金を集めて道路や橋をつくる。借りたお金はこれから何十年もかけて、国民から集める税金で少しずつ返していく。そうすれば、現在働いている人たちだけでなく、将来の世代も費用を負担することになる。このような考え方で発行される国債を「建設国債」という。
こうした意味で国債は、私たちの生活を支えるという重要な役割を果たしているといえる。
ただし国債の発行には、課題もある。特に問題なのは、道路などの建設以外で国の支出がかさみ、税金だけでは賄えなくなり、仕方なく国債の発行を続けてしまうことだ。このような国債を日本では「特例国債(赤字国債)」と呼んでいる。
もちろん、国債の発行を通じて国が借金をすること自体は必ずしも悪いことではない。しかし、収入と支出のバランスをまったく無視して借金と無駄遣いを繰り返していけば、やがて借りたお金を返せない状態に陥ってしまうだろう。このような状態を「債務不履行(デフォルト)」っていう。
実際に債務不履行にならなくても、あまりに国債を大量に発行しすぎて借金の総額が巨額になっていくと、人々は「あの国の国債は、満期にちゃんと返ってくるのだろうか?」と不安になるはずだ。すると、その国の国債は買い手がつかなくなり、価格が暴落することもあるかもしれない。さらに、その国に投資したいと考える人が減るので、為替相場や株価などにも影響を与えていくだろう。
世界に目を向けると、過去にはロシア(1998年)やアルゼンチン(2001年)などで国の財政が行き詰まり、事実上の債務不履行に陥ってしまったことがある。最近では2010年5月頃から、ギリシャの巨額の財政赤字を背景に、同国の国債が暴落するという出来事もあった。一般に国債は、安全な投資手段だと言われているけど、その国の財政状態によっては価格が暴落したり満期に元金が戻ってこない可能性もゼロではないんだ。
そして、じつは日本も深刻な財政赤字を抱えている。今のところ、価格が暴落するような事態にはなっていないけど、国債はこのような課題があること、利用する上でもリスクがあることは覚えておいてほしい。