1. いま聞きたいQ&A
Q

資産運用において「国内債券」の位置付けは、どのように考えればいいですか?

預貯金+αのリターンと安全性を両立

例えば国内外の株式と債券からなる4資産の運用ポートフォリオにおいて、私たち個人投資家は「国内債券」に何を期待するでしょうか。他の資産と比べて値動きが非常に安定しているという性質から、国内債券には積極的なリターンの獲得を求めるのではなく、小さくても着実なリターンの積み上げや、リスク低減の効果を期待するのが一般的だと思われます。

すなわち、私たちは国内債券をいわば「守りの資産」と考えているわけです。ギリシャ危機をきっかけに世界中でリスク回避の動きが広がるなか、国内債券のこうした特性に、いま改めて注目が集まってきました。今年(2010年)に入って、日本の国債や社債で運用する投信(投資信託)が残高を大きく増やしています。過去の運用成果は年率に換算して2%前後というところですが、リーマン・ショックやギリシャ危機を通じてもほとんど値下がりしなかったという安定感が、安全志向を強める個人投資家の人気を呼んでいるようです。

さらに、もうひとつ違った角度から、国内債券の機能(使い道)を具体的に考えてみましょう。私たちはいったい誰のために、そして何のために、資産運用をおこなうのでしょうか。資産は子どもや孫に遺すものと決めている人や、投資を通じて経済や金融への造詣を深めたいという人を除いて、たいていの場合、「自分が将来的に使うため」だと思われます。

以前にもご紹介したように、私たちにとっての資産運用とは「預貯金+αのリターン」を追求することであり、預貯金(生活資金)をきちんと確保しながら、残りの余剰資金を増やしていくことが基本です。ここで問題なのは、資産運用の対象となるお金のなかに、自分がリスクを十分に取ってもよいと考えられる部分と、リスクをあまり取りたくない部分とが混在することです。

例えば、あなたが5年後に必要となるであろう子どもの大学進学資金として、現時点で取りあえず200万円を用意し、預貯金に入れてあるとします。これは当座の生活資金ではありませんが、大きく減ってしまっては困る種類のお金なので、純然たる余剰資金でもありません。そのまま預貯金に入れておく手もありますが、4年間の大学資金として200万円ではいささか心もとないので、少しでも増やせれば助かるところです。すなわち、できるだけリスクを取らずに資産運用したいお金ということができます。

このように自分が将来のいつ頃、何のために使うかが分かっているお金について、預貯金を少しでも上回るリターンを求めながら、安全性も両立させたいという運用に適しているのが、国内債なのです。

金利上昇が必ずしもマイナスにならない

債券はどちらかといえば短期運用に向く、と考えている人が多いかもしれません。意外なことに、国内債券は長期で見ると、株式と比べてもそれほど遜色のないリターンを期待することができます。

多くの投信がベンチマーク(運用基準)に採用している国内債券の指標として、「NOMURA-BPI総合インデックス」という指数があります。これは国債や地方債、社債など日本の債券市場全体の動きを反映した指数で、今年5月末現在、過去30年間の利回りを年率換算すると、プラス5.3%となっています。年率で5%以上というのは、かなり優秀な数字ではないでしょうか。

国内債券への投資では、今後の金利上昇による価格下落のリスクがありますが、これも多くの投信が採用している「ラダー型運用」においては、金利上昇が必ずしもマイナスに作用しないという試算も出ています。ラダー型運用とは、債券の保有金額が償還までの残存年数(1~10年)ごとに同じ金額となるよう調整することで、金利上昇による債券価格の下落リスクを平準化する手法のこと。この手法を用いると、あくまでも中長期運用が前提ですが、さまざまな金利上昇のパターンにおいて安定的にリターンが得られることが分かっています。

こうして見ると、国内債券はむしろ中長期的な運用において、その安定性がいかんなく発揮されるということもできそうです。資産運用の一般論として、若い時は株式などの高リスク資産へ多めに投資し、高齢になったら債券などの低リスク資産へシフトするという考え方がありますが、逆もあり得るかもしれません。何かと支出の多い30歳~40歳代の時期にこそ、国内債券で資産の中核を長期安定的に育てながら、さまざまな資金ニーズに対応できる態勢をつくることが大切なように思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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