1. いま聞きたいQ&A
Q

株価が上がると企業にはどんなメリットがあるのですか?

企業は事業を進めるうえで、商品を仕入れたり、工場を建設したり、最近では他社を買収したりなどいろいろな場面で“軍資金”が必要となります。こうした資金は極力、内部資金でまかなおうとしますが、往々にして売上代金や利益の範囲内だけでまかない切れないことがあります。 必要な資金を外部から集めなければなりません。資金を外部から集める方法としては、大きく分けて「銀行、保険会社など金融機関から借りる」か、「株式、社債などを発行して投資家に購入してもらう」の二通りあります。

金融機関から借りたおカネはいずれ利息と元本を併せて返済しなければなりませんが、株式を発行して手に入れたおカネは返済する必要がありません。今は株主資本という呼び方が一般的になりましたが、かつては株式発行で得た資金を会社側中心の見方で自己資本といっていた時代もありました。「会社は誰のものか」の論議はなお続いています。

株式には経営支配権、配当受け取り、株価の値上がり期待などの“特典”があります。
欧米流に考えれば、株主は株式の持ち分(株数、持ち株比率)に応じて会社を保有しているともいえます。
一方で株式を発行した会社が赤字になったりすると、配当はもらえず、株価が値下がりするといったリスクに直面します。企業が倒産でもしたら保有株式は文字通り紙くずになってしまいます。

企業は株式を発行して得られたおカネには配当を支払いますが、配当は1株当たりいくらと決まっています。日本企業の間では額面(50円の企業が多い)に対して5円とか10円といったように、額面を基準にして配当を決める会社がまだ数多く残っています。しかし、グローバルに事業を展開したり成長著しい新興ベンチャー企業などの間では、額面にこだわらず10円単位、中には100円以上の配当をする会社も登場しています。
かつては高い株価で新株式を発行し配当を低く抑えれば、安いコストのお金をたくさん集められるなどと勘違いに近い思い込みをしている経営者が多くいました。しかし、こうした会社は長い目で見ると、株主、投資家から疎んじられ、株主が提供した資金の使い方がヘタで利益も増えず、結果的に株価低迷に見舞われているところがたくさんあります。

それでは、株価が高いと企業にどんな具体的メリットがあるのでしょうか。
思いつくままに挙げてみましょう。

まず、企業イメージが高まります。いい人材もたくさん集まってくるでしょう。
株価が上がり出すと新しく株主になったり、長く保有しようと考える安定株主が増える可能性が大きくなります。株主は持ち株を担保にお金を借りることがありますが、この際の担保価値が高まります。もちろん、株価が高ければ企業は必要なときにたくさんのお金をマーケットから集めることができます。

株高の利点はまだあります。
株価が高いと敵対的なM&A(買収・合併)の標的になりにくいことです。裏返せば、株価が高い企業は欧米流に自社株との交換方式で、高技術、魅力的な商品・市場を持っている企業に戦略的なM&Aや提携交渉を強く働きかけることができます。従業員、役員のストック・オプション(自社株を一定の価格で購入する権利)制度を導入している会社では、株高が従業員、役員のヤル気とモラル(規律)を高める原動力ともなります。
これといった事業面の裏付け、財務・収益面での実力もないのに株高をやみくもに求める上場・公開企業の経営者が増えているのはこうした背景があるからです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

バックナンバー2000年へ戻る

目次へ戻る