長期金利の上昇・下落は、第1に国債人気と深い関係があります。
長期金利は、通常、満期まで10年の国債の「利回り」で示されます。より厳密に言えば、そのときの債券市場での流通価格で債券を購入し、償還されるまで保有したときに、どの程度の年利回りが得られるかを示した「最終利回り」で示されます。
国債は通常、額面100円で発行され、券面に表示されている利率で利子が支払われますが、発行された後は流通市場で売買され、株式と同様に需給関係で価格が決まります。
この価格が額面を上回れば、その国債に投資して得られる利回りは券面に書かれている利率を下回りますし、逆に額面を下回れば利回りは券面の利率を上回ることになります。
つまり、長期金利が下がる(上がる)ということは国債の流通市場での価格が上昇(下落)することを意味します。最近の長期金利の急低下局面では、国債の流通市場での価格が急上昇していたわけです。
なぜ、国債価格が急上昇したかといえば、金融機関を中心に国債を買いたいという機関投資家がたくさんいたからです。
金融機関は通常、預金者から預かったおカネを企業などに貸して利益を上げるのですが、不良債権を増やすような貸し出しはしたくないと慎重になるなかで、運用難になり、安定的な利回りを得られる国債が人気を集めたのです。そうした中、昨年後半から日本の景気の先行きを懸念する声が高まり、安全資産としての国債人気にいっそう拍車がかかりました。「価格が上がるから、買う。買うから価格が上がる」というさながら株式のバブルのような状況が起きていました。
この際、国債を買う論拠となったのは、ご質問にあるような「超低金利が長く続く」という見方でした。
例えば、1年ものの金利が10年間にわたって0.1%が続くとすれば、10年物の金利もそれに見合った水準まで下がってもおかしくないという考えです。
このように、長期金利の上昇・下落は、第2に将来の金利水準に対する投資家の予測と深い関係があります。 以上の状況のもと、長期金利は一時0.5%を割る水準まで下がったのですが、ここまで来て、投資家もはたと考えたようです。
長期金利の上昇・下落は、第3に日本の中長期的な成長率に関係があるためです。
日本の中長期的な成長力は物価変動の影響を除いた実質で2%ぐらいはあるといわれています。長期金利はこの中長期的な成長力とインフレ率を合わせた水準にほぼ落ち着くとされています。仮に、1%近いデフレが続いたとしても(つまり、マイナス1%のインフレ率)、1%(成長力2%-1%)ぐらいの長期金利があってもおかしくないのではないかと考えられるわけです。
その一方で、様々な景気指標が好転してきました。物価下落もやや緩和してきました。景気の先行き懸念が薄れるなか、国債の高値がいつまでも続くはずはないと、それまで債券を買い続けてきた投資家がいっせいに売りに回ったのです。これにより、国債価格が下落、長期金利が急上昇したわけです。
現在の金利水準は、まさに景気の先行き懸念が叫ばれ始めた昨年秋に戻っています。
その時点から現在まで、景気自体はほぼ横ばいで推移したのですが、行き過ぎた悲観論が国債バブルとその裏返しの長期金利の急低下を生み、その反動が最近起きたと考えられます。
今後の長期金利の推移は、まさに景気が横ばい水準から脱するのか、それとも後退局面に入ってしまうのか、デフレ傾向に歯止めがかかるのか・・・などの要因にかかっていると思われます。