1. いま聞きたいQ&A
Q

米国株への投資について、留意すべきポイントを教えてください。(後編)

3本の投信を組み合わせて世界株に投資

世界の株式市場における米国株のシェア拡大は、私たち日本人の資産運用にどのような影響をもたらすのでしょうか。

例えば、つみたてNISAの対象商品には、先進国から新興国まで世界中の国・地域の株式に投資するインデックス型投信が10本用意されています。そのうち6本は、日本を含む世界株の指数である「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」や「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」に連動するタイプ。4本は日本を除く世界株の指数である「MSCI ACWI 除く日本」に連動するタイプです。

これら10本について直近の月報などから国別投資状況を確認してみると、米国が全体に占める割合は53~69%となっています。割合に多少の差が生じているのは、株価指数への連動手法が投信によって異なるためです。

10本の投信は本来、どれか1本を購入するだけで、世界中の株式(一部は日本を除く)へ幅広く分散投資できる点が魅力とされています。しかし、米国株の及ぼす影響が相当に大きい現状では、その分散機能が十分に発揮されないとも考えられます。

私たちにはいま、ちょっとした工夫が必要なのかもしれません。これから本格的に世界株への分散投資を始めようという人ならば、運用資産の全体を「日本株」「日本を除く先進国株」「新興国株」という3つの部分に分けて、3本のインデックス型投信でまかなうという手があります。

つみたてNISAには、日本を除く先進国の株価指数「MSCIコクサイ・インデックス」に連動する投信18本と、「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」など新興国の株価指数に連動する投信12本もラインアップされています。若干の手間はかかりますが、これらから1本ずつを選び、そこに日本の株価指数に連動する投信を加えて「世界株投資」とするわけです。

米国株は相対的に割高になりやすい

ここ数年で投資を始めた日本の個人には、米国の株価指数に連動する投信や米国の個別株を、長期的な資産運用の柱にしようと考えている人も多いようです。実際に20~30歳代の若い世代からは、「何も考えずに米国株投信を毎月買う」といった声がよく聞かれます

確かに過去のデータをみると、日本の個人投資家が米国株の高い成長性に便乗したくなる気持ちも分かります。日本でバブルが崩壊した後の1990年から2021年9月まで、各種の株価指数(配当込み、円ベース)に毎月同じ金額ずつを積み立てたと仮定すると、対象が米国株(S&P500種株価指数)の場合には、累計積立額に対して資産が6.9倍程度に増えた計算となります。

対象が日本株(日経平均株価)の場合では、資産の増え方は2.6倍程度にすぎません。ちなみに米国株の資産増加レベルは、積み立ての対象が世界株(MSCI ACWI 除く日本)や新興国株(MSCIエマージング・マーケット・インデックス)の場合も上回っています。

こうしたデータをみる限り、前述した「世界株への分散投資をどうするか」といったテーマなどは、かすんでしまう感もあります。要するに、米国株の一択で何も問題はないだろうと。

しかしながら、米国株は過去30年間で2回、バブル崩壊によって大きな下落に見舞われています。2000年のITバブル崩壊時と08年のリーマン・ショック時です。いずれも2年程度の間に、S&P500種株価指数は50%前後の下落を記録しました。

米国株でバブルの発生・崩壊が起きやすい背景として、専門家の間には「利益の裏付けのない企業が成長期待だけで高評価を受けやすい体質」を指摘する声があります。これは言い換えると、多くの投資家が米国企業の高い成長を見込んで買いを入れるため、米国株は他の国・地域の株式に比べて割高になりやすいことを意味します。

その影響でしょうか。S&P500種株価指数と「MSCI ACWI 除く日本」の値動きを過去30年あまりで比較すると、米国株と世界株がそれぞれ優位な時期は、ほぼ10年周期で循環してきていることが分かります。仮にその循環が続くとすれば、今後の10年間は世界株が優位となり、次の10年間は米国株が優位となります

特に積み立て投資では、投資対象がどのような値動きをするかによって最終的なリターンは少なからず変わってきます。同じ投資対象であっても、実際に得られるリターンは私たちが投資する期間、すなわち「投資をいつ始めて、いつ終わるか」に大きく依存するわけです。

これらを考え合わせると、日本の個人にとって過去30年間においては米国株への積み立て投資が最も有効だったとしても、今後の数十年間についても同じとは限らないことになります。短期投資ならいざ知らず、長期の資産運用ではどうしても分散の考え方が重要になってくることを、米国株への注目度が高い現在だからこそ、改めて確認しておきたいところです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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