12 株価と世界の動きとつながっている!
日本国内を見ているだけでは、株価の先行きは見通せない
「経済のグローバル化」とはどういう意味だろう?
株価は、経済の大きな流れの中で上がったり下がったりしている。個々の企業が頑張っていても、経済全体がうまく動いていなければ、業績は伸び悩んでしまう。反対に、日本や世界の経済全体が好調になれば、企業の業績も伸びていく。国内外の経済に関するさまざまな出来事が企業の業績の先行きに影響を与え、株価を動かしている。
そこで覚えておきたいのが「経済のグローバル化」の流れだ。

これまで日本は、世界一の経済大国であるアメリカと密接な関係を築き、欧米諸国へ自動車や家電など輸出してきたけれど、輸出するモノも相手国も多様化してきている。コンビニやスーパー、飲食など海外ではあまり縁がないと思われていた分野の日本企業が、アジア諸国に進出して、店舗網を広げてはじめている。一方、欧米やアジアの企業も、日本に進出していて、国内企業にとっての強力なライバルになっている。
国と国との間でのモノの売り買い(=貿易)や人の移動、国境を越えたお金の貸し借りや投資活動などが活発化して、世界中の国同士の経済的な結びつきが強くなる…こうした世界経済の流れ全体を「経済のグローバル化」と呼ぶわけだね。
どんな国々でどのような海外ビジネスを展開しているか?各国の経済情勢はそれぞれどんな状態なのか?アメリカや中国の景気はこれからどうなるのか?----さまざまな要素によって、日本企業の業績は大きく左右される。おのずと株価の先行きも変わってくるんだよ。
株式市場における外国人投資家の比重の大きさ
日本の株を売買しているのは、日本人投資家だけじゃない。
経済のグローバル化はそれだけじゃない。
インターネットなどの情報通信技術が発達したおかげで、国境を越えたお金のやりとりも簡単にできるようになった。日本の投資家が海外の株式を買い、海外の投資家が日本の株式を買うといったことが、昔と比べて遥かに増えている。
世界中の投資家たちはそれぞれ、さまざまな考え方に基づいて各国の株式市場で株式を売り買いしている。
「日本企業の業績は伸びそうだから、日本の株式を買おう!」という投資家のお金が世界中から日本に集まって、日本の株価が急激に上がることもあり得る。逆に、「日本企業の業績は期待できないから、投資するのをやめて新興経済国の株式を買おう!」という投資家が増えて、日本の株価が下落し、ほかの国の株価が上昇するということもあり得るんだ。
ちなみに、日本の4つの証券取引所に上場された企業の株主のうち、約30%は外国人が占めるようになっている(日本取引所グループ「2023年度株式分布状況調査の調査結果について」より)。それだけ、外国の投資家がどのような考え方で株式を売買するかは、日本の株価を大きく左右するんだよ。

グローバル化で複雑になる株価の動き
経済のグローバル化が進んでいるということは、海外との関係や政府の活動が、これまで以上に株価を動かす重要な要因だということだ。

政府の政策に期待できれば、株価は上がる可能性があるし、日本の景気は回復しないと考える投資家が多ければ、個々の企業の業績がよくても、日本の企業の全体の株価が下がる可能性もある。
実際、株価の動きはとても複雑になっている。
たとえば、2019年末に発生した新型コロナウイルスの世界的大流行は、世界中の株価に大きな影響を与えた。多くの国で感染拡大防止のため海外への渡航が禁止となり、海外から日本への旅行者が激減した。日本国内でも外出制限などがあったため、観光業や旅行業は休業したり営業を縮小したりしなければならなかった。
また海外の工場の多くが稼働を停止したため、海外から部品を調達している企業は製品をつくれなくなった。新型コロナウイルスは需要と供給の両方の面から世界経済に大きな打撃を与えた。
投資家にとっては、未知のウイルスが経済や株式市場にどんな影響を及ぼすか予測するのは困難であったため、多くの投資家がリスクを避けるために株式を売り、世界中の株価が急落した(コロナショック)。日経平均株価も2020年1月からの2ヶ月間で約30%下落した。
経済のグローバル化が進んでいること。そして、その結果、株価の動きが今まで以上に複雑になっていること。…株式を学ぶ上では、このような新しい動きについてもぜひ頭に入れてほしい。