株式市場のマーケットコメントなどを読んでいると、時々「株式市場は調整に入った」、あるいは「調整局面入りは近い」という表現に行き当たります。日本経済新聞の株式市況面を読んでいても時々見かけます。今回はわかっているようでわかりにくい「株価の調整」という点について説明しようと思います。
一般的に言って「株価の調整」とは、かなりの期間上昇を続けてきた株価が、その上昇をもたらした推進力が徐々に薄れてきて、次の上昇波動に入る前に横ばい、または下落の時期を迎えることを指します。その横ばい期、または下落期をとらえて「調整局面」と呼んでいます。厳密な相場用語とはいえない部分がありますが、マーケットでは古くから慣例的に用いられています。
ここでたいせつなことは「推進力が徐々に薄れてきて・・」という部分です。株価の調整局面というからには、その前の段階で、ある程度の値幅と期間を伴った上昇期間がなければなりません。ダラダラと値下がりを続けているだけの状態は調整局面とは言いません。
ここで一重に上昇期間といっても一本調子に値上がりしているわけではありません。上昇の後に下落、または横ばいの期間があって、その後に次の上昇期間が訪れています。
株価が大きく上昇する銘柄というのは、上記のような軌跡を描きます。個別銘柄も日経平均株価のような株価指数も同じで、基本的に株価の値動きは、(1)上がる、(2)下がる、(3)横ばい、の3つのうちのいずれかです。株価は毎日値上がりすることはなく、上がったり下がったりを日々繰り返します。
ところがごくまれに、株価が何日間、何週間にもわたって毎日のように上昇することがあります。個別銘柄に関して言えば、市場全体にサプライズをもたらすような好決算が発表されたり、または会社の将来を変えてしまうような画期的な発明、提携話が出たり、あるいは株式市場すべてに及ぶほどの強烈な強気心理が広がったりした時です。
このような状態の時、その銘柄またはマーケットには上向きの方向性が発生しています。マーケットの参加者の多くが志向している上向きの方向性を「上昇トレンド」と呼びます。ひとつの上昇トレンドは、その上昇をもたらしたエネルギーが途切れるか消滅するまで継続します。
ある銘柄、またはマーケット全体には、何年間にも及ぶ巨大な上昇トレンドが発生することがあります。代表例としては、80年代後半の日本株式市場、90年代後半の米国株式市場などです。特に米国株式市場は1982年~2000年にかけて足かけ19年にも及ぶ超巨大な上昇トレンドを経験しました。
このような巨大な上昇トレンドにあっても、株価は毎日値上がりするわけではありません。上がったり下がったりを繰り返しています。巨大な上昇トレンドは、それより少し小さな中規模の上昇トレンドが連続して形作られます。さらにそれら中規模の上昇トレンドは、それより小さな小規模の上昇トレンドが連続してできています。
そして小規模の上昇トレンドと上昇トレンドの間には、小規模の調整局面がはさまっています。中規模の上昇トレンドと上昇トレンドの間には、中規模の調整局面が訪れます。大きな上昇相場には大きな調整局面がつきもので、ちょうど階段の踊り場のような状態が「株価の調整局面」と言えるでしょう。株価を大きく押し上げる上昇エネルギーが一息つくところです。
ある程度の調整局面を間にはさまないと、株価は大きな上昇トレンドを描くことはできません。それと同時に、ある程度の期間にわたって上昇を続けた銘柄が下げに転じた時、その下げは単に調整局面に入っただけなのか、あるいは本格的な下落相場の始まりなのか、この点の見極めが実は決定的に重要なのです。