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グロース株・バリュー株とは?意味と投資上の注意点を教えてください。(前編)

「グロース株」とは、企業の売り上げや利益の成長率が高く、今後の株価上昇が期待される銘柄。「バリュー株」は現時点の株価が本来的な企業価値をに比べて割安と考えられる銘柄を指します。それぞれPBRやPERが判断基準とされます。投資成果を見ると20~30年の長期ではバリュー株の方が、10年以内の短中期ではグロース株が優勢となっています。

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PBRやPERの水準が判断材料になる

「グロース株(成長株)」とは、企業の売り上げや利益の成長率が高く、その優れた成長性ゆえに今後の株価上昇が期待されるような銘柄を指します。革新的な商品やサービスによって市場シェアを拡大し、増収増益を続けているケースが多く、一般に投資家の人気が高いという特徴があります。

ここ数年でみると、グロース株にはデジタル化や脱炭素といった社会・産業構造の変化を背景に成長を遂げている企業が目立ちます。例えば米国市場では、GAFAM(グーグル=運営会社はアルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)に代表される巨大IT(情報技術)企業や、電気自動車(EV)のテスラなどが有名です。日本でも昨年(2020年)、医薬品情報サイトのエムスリーや工場自動化(FA)のキーエンス、EV向けモーターを手掛ける日本電産などが大きな株価上昇を記録し、時流にマッチしたグロース株として注目を集めています。

「バリュー株(割安株)」とは、売り上げや利益の成長がさほど期待できないなどの理由により、現時点の株価が本来的な企業価値を考慮した水準に比べて安い(割安)と考えられる銘柄を指します。相対的に知名度の低い企業が多いことから、堅実経営を続けているような場合でも、投資家の人気は低いのが一般的です。値動きも値幅も地味になりがちで、いったん売り込まれたまま放置されている銘柄も少なくありません。

バリュー株の判断材料としては通常、株価指標のひとつであるPBR(株価純資産倍率=株価÷1株当たり純資産)が用いられます。これは株価が帳簿上の資産価値(解散価値)の何倍まで買われているかを示すもので、解散価値の観点からみると本来は1倍を超えているのが自然な状態ですが、バリュー株にはPBRが1倍を割り込んだ銘柄も数多く存在します。

最近の全体的な印象として、バリュー株には日米ともに小売りや自動車(輸送用機器)、銀行などの業種が目立ちます。日本市場では昨年、三越伊勢丹ホールディングスや三菱自動車、関西みらいフィナンシャルグループなどの株価が上場来安値を更新しました。それぞれのPBRは21年1月22日現在、0.47倍、0.62倍、0.42倍といずれも1倍を割り込んでいます。

反対にグロース株ではPBRおよび、もうひとつの株価指標であるPER(株価収益率=株価÷1株当たり利益)が平均より高くなりがちです。資産や利益など株主価値の将来的な増大に対する投資家の期待が、すでに付加価値として株価に織り込まれているからです。

前述したグロース銘柄について1月22日現在のPBRとPER(予想値)を見ると、エムスリーが39.39倍と229.6倍、キーエンスが7.69倍と75.1倍、日本電産が8.60倍と79.2倍となっています。ちなみに同日現在で東証1部全銘柄の平均値はPBRが1.35倍、PERが28.2倍です。(*PBR、PERは連結決算ベース)

短中期の投資成果はグロース株が優勢

投資家にとってグロース株への投資は、現在成長中の企業が今後もさらに成長すると信じて資金を投じること、すなわち「企業の継続的な成長に賭ける」ことを意味します。一方のバリュー株への投資は、実力より低く見積もられた企業の価値(株価)が、いつか見直されると信じて資金を投じることを意味します。いわば「株価の戻りに賭ける」わけですが、その株価上昇がいつ、どのような要因で起こるかは分からないのが実情です。

野村証券金融工学研究センターと米国の資産運用サービス会社ラッセル・インベストメントは共同で、新興市場を含む日本の全上場銘柄を対象に、グロースやバリューなど運用スタイル別の株価指数を提供しています。昨年12月末時点における配当込みのパフォーマンス(投資成果)を、期間別に年率平均で比較してみましょう。

  過去30年 20年 10年 5年 1年
ラッセル野村総合グロース指数 1.2% 3.3% 12% 9.5% 21.7%
ラッセル野村総合バリュー指数 2.5% 4.2% 7.3% 1.9% -5.5%

20~30年の長期ではバリュー株の方が優勢ですが、10年以内の短中期では逆にグロース株が圧倒的に優勢となっています。これは米国でも同様に見られる傾向です。かつて製造業が中心だった時代には、企業価値の見直しがかなりの頻度で発生し、日米ともにバリュー株のパフォーマンスが市場平均を上回るケースが多く見られました。経済のけん引役がITなどの情報産業へと移行するにつれて、株式投資のトレンドも大きく変わることになります。

製造業の成長率は、事業規模の拡大や競合企業の市場参入に伴って鈍化するのが一般的です。ところが情報産業では、生産設備などの物理的要因が成長の制約になりにくいうえに、多くの情報をいち早く囲い込んだ先行者メリットが強く働くため、成長がさらなる成長を呼ぶという図式になりやすいのです。そのようにして本来ならば割高のサインである高水準のPBRやPERが投資家の間で正当化され、グロース株をいっそう買い進む動きが広がったわけです。

さて、以上のことを踏まえたうえで、私たち一般個人は今後どのような点に注意しながら、どのようなスタンスで銘柄選びに臨めばいいのでしょうか。次回、引き続き考えます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。