1. いま聞きたいQ&A
Q

「株価が割安」とは、具体的にどういう意味なのでしょうか?

利益や自己資本に対する株価水準を見る

株式投資とはつまるところ、投資家が企業の収益性や競争力、ビジネスモデルなどを自分なりに評価しながら、その将来的な企業価値(経済価値)にお金を投じることを言います。投資家による評価の総体が「株価」というかたちで表されるわけですが、株価が常に企業価値を正確に反映しているかといえば、そうとも限りません。

たとえば高い技術力や安定した収益基盤をもつ伝統企業でも、認知度の低さなどから過小評価されている場合があります。反対に、人気製品や店舗展開の拡大が目立つ新興企業が、投資家の大きな期待を集めて過大評価されることもあるでしょう。こうしたケースでは、株価の水準が本来的な企業価値に比べて安くなったり、高くなったりしていることが考えられます

一時的に安くなったり高くなったりした株価も、中長期的にみれば本来的な企業価値に見合った「適正な株価」に落ち着いていくことが少なくありません。つまり、現時点で適正な株価より安い(割安な)銘柄を見つけて投資することができれば、それが将来的に適正な株価まで戻る(値上がりする)可能性は高く、収益を得るチャンスが大きく広がるわけです。

とは言っても、ある銘柄の適正な株価を割り出すことは容易ではありません。そこで、株価が割安かどうかを判断する場合には、企業の利益や自己資本などに対して現在の株価がどのような水準にあるかを示す「株価指標」を用いるのが一般的です。株価指標のなかでも代表的なものが「PER」(株価収益率)と「PBR」(株価純資産倍率)で、それぞれ以下の計算式で算出されます。

PER(単位:倍)=株価÷EPS(1株あたり純利益)
※EPS=予想連結純利益÷発行済み株式数

PBR(単位:倍)=株価÷1株あたり自己資本
※1株あたり自己資本=自己資本÷発行済み株式数

倍率が低くなっている理由は何か

株価を利益で割って求めるPERは、企業が稼ぎ出す1年間の利益の何倍まで、現在の株価が買われているかを表します。これを投資家サイドから見ると、当初の投資額を回収するのに何年分の利益が必要かを計算していることになります。当然のことながら、投資額の回収に30年かかる銘柄(=PERが30倍)よりも、15年で済む銘柄(=PERが15倍)の方が割安であると考えることができます。

PBRの計算で出てくる自己資本とは、企業が解散したときに最後に残る価値と言うことができます。それを発行済み株式数で割った1株あたり自己資本は、いわば企業の解散時に株主へ返還される1株あたりの金額に相当します。株価を1株あたり自己資本で割って求めるPBRが1倍を下回っている場合、その銘柄は「いま買って、すぐに企業が解散すると、それだけで儲かる」ことになります。

すなわちPBRは、1倍を十分に超えているのが自然な姿なのです。何らかの事情でPBRが1倍を下回っていたり、1倍ちょうど近くまで下がってきた銘柄があれば、それらはいずれ通常の状態まで株価が戻る(上がる)可能性が高く、現在は割安と見ることができます。

このように、PERもPBRも基本的には倍率が低い方が割安と考えられますが、株価には将来の成長性が織り込まれているため、たとえばPERは成長産業の方が成熟産業よりも高くなりがちです。PBRが低い銘柄も、単に市場の過小評価が原因のケースもあれば、資本効率が悪くて完全に「ダメ企業」の烙印を押されたケースもあります。

株価が割安かどうかを判断する場合には、その銘柄のPERやPBRを同業他社と比較したり、業種ごとの平均値を確認するなど、複合的な視点から「倍率の理由」を探っていくことが大切です。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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