欧州とは3.25%、米国とは5%の大きな金利差
日銀は今年(2007年)1月18日の金融政策決定会合で、昨年12月に引き続き、利上げ(政策金利の引き上げ)を見送りました。日本の政策金利は06年7月の「ゼロ金利解除」で0.25%となりましたが、それから半年以上も同じ水準にすえ置かれたままの状態が続いています。
一方、欧州ではECB(欧州中央銀行)が2005年12月から2~3カ月おきに定期的な利上げをおこない、政策金利は現在3.5%となっています。欧州経済は好調でインフレの懸念もあることから、ECBが今後近いうちにさらなる利上げに踏み切るのではないかと見られています。
米国も06年8月まで、FRB(米連邦準備制度理事会)が約2年間にわたって利上げをくり返し、政策金利は現在5.25%という高い水準にあります。最近の経済指標によって米国経済の安定感が確認されたため、今後はFRBが再び利上げを実施する可能性が出てきました。
このように、いま日本と欧州では3.25%、日本と米国では5%という大きな「金利差」が生じています。結果として、世界中のお金が運用通貨を相対的に金利の低い円から、金利の高いユーロや米ドルに変更する動きが広がりました。これは、私たち日本人がいま国内の銀行預金や国債より、外貨預金や外国債券に魅力を感じているのと同じ理屈です。
いま日本企業の前提以上に円安が進んでいる
為替はこの1年ほどで、円安・ユーロ高、円安・ドル高が予想以上に進みました。円はユーロに対して、2007年1月23日に一時1ユーロ=158円67銭の史上最安値を記録。ドルに対しても1月22日に一時1ドル=121円79銭まで下落し、約4年ぶりの円安水準となっています。
円安は自動車メーカーや電機メーカーなど、海外輸出が中心の日本企業には大きな追い風となります。円安になればなるほど、製品輸出の円換算額が増えて利益がかさ上げされるからです。企業は事業計画を立てたりその見直しをおこなう際に、それぞれ前提となる為替レートを設定します。その為替レートをもとに業績予想を発表しますが、前提以上に円安が進むと、輸出が中心の企業は収益が上積みされるため、想定していた以上に業績が良くなると考えられます。
現時点で主要な日本企業が前提としている為替レートは、対ユーロでは145円、対ドルでは115円が主流です。ユーロ、ドルいずれに対しても、すでにこれらの想定レート以上に円安が進んでいます。今後もこうした傾向が続くならば、欧州や米国など海外での売上比率が高い日本企業は業績が良くなる可能性が高く、業績を「上方修正」する企業も出てくることが予想されます。
単純に考えると、業績が良くなれば、その企業の株価は上がりやすくなります。円安による収益アップが株価に与える影響はあくまでも部分的なものなので、もちろん一概に言うことはできません。しかし、日本国内と海外の金利差の拡大と円安の進行が、輸出が中心である日本企業の株価を押し上げる、ひとつの要因となり得ることは確かです。