1. いま聞きたいQ&A
Q

金利が低下するなかで、円高が進んでいるのはなぜですか?

日米金利差の急速な縮小が要因

わが国では長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが、今年(2010年)の8月4日に1%を割り込み、25日には一時、0.895%まで低下しました。これは2003年6月11日に付けた0.430%という史上最低値以来、約7年ぶりの低水準となります。

一般に長期金利の低下は、企業や個人の景況感が悪く資金需要が弱い、すなわち景気が後退もしくは停滞局面にあることを意味します。事実、内閣府が8月16日に発表した国内総生産(GDP)の速報値によれば、物価変動の影響を除いた実質GDPの成長率は4~6月期に前期比0.4%増と、1~3月期の4.4%増に比べて大幅に鈍化していました。

デフレが長引くなか、日本経済の本質的な弱さは明らかです。こうした状況下では、日本の銀行や保険会社などの機関投資家が、運用難や安全志向の高まりから自国の国債を買い進むことはあっても、世界中の投資家が参加する外国為替市場で円が積極的に買われる理由は本来、どこにもないはずです。ところが8月に入って円高が急速に進んできました。24日の外国為替市場では対米ドルで一時、1ドル=83円台と15年2カ月ぶりの高値を記録。対ユーロでも1ユーロ=105円台前半と、約9年ぶりの高値を付けています。

今回の円高の背景として、米国で景気の減速懸念から長期金利が急低下したため、日米の金利差が急速に縮小したことが挙げられます。日米の長期金利差は、今年4月初旬の時点では2.6%程度でしたが、8月27日現在では1.6%程度まで縮小してきました。欧州でもここにきてアイルランドの財政悪化懸念が浮上するなど、南欧諸国の信用不安は相変わらずの状態です。安全資産としてドイツ国債の買いが膨らんだ結果、ドイツの長期金利は過去最低水準の2%台前半まで低下しています。

投資家は一般に、より高い金利を求めて運用する傾向があります。金利差が広がると、その時点で金利が相対的に高い方の国(例えば米国)に資金が流れ、円安・ドル高が進みやすくなります。反対に金利差が縮まると、為替リスクを負ってまで米国で運用しようとする投資家が減るため、円高・ドル安に進みやすくなるのです。

インフレ率の低い国の通貨に上昇圧力

特に今回は、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和の維持や追加に対して相次いで積極的な姿勢を示し、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和も長期化の様相を呈しています。欧米は景気の立て直しへ向けて出口戦略を先送りし、金融政策による下支えを続けるとともに、輸出に有利な自国の通貨安をなかば容認する構えにあるといえます。一方で、日本は政府・日銀ともに景気の刺激や円高の是正に対して腰が重く、図らずも円高を容認するような格好になってしまいました。

金利が低いなかでの円高は、今後も続くのでしょうか。これについて考えるとき、忘れてならないのがデフレの影響です。

長期的な視点で見ると、為替レートは2国間のインフレ率(物価上昇率)格差を反映しやすいといわれています。インフレ率が高い国では、同じだけの自国通貨で買えるモノの量が従来よりも減るため、結果として通貨の価値が下落することになります。反対に、デフレはインフレ率が低い(マイナス)ことを意味しますが、そのような国では通貨の価値が相対的に高まることになります。つまり日本でデフレが続くかぎり、インフレ率の高い他国の通貨に対しては、円高の圧力がかかり続けるわけです。

物価変動の影響を加味しながら、複数の主要通貨に対する円のレートを合成して算出した「実質実効為替レート」という指標があります。そのレートで見た場合現在の円・ドル相場は1995年に付けた1ドル=79円75銭という対ドルの最高値に比べて、まだ3割程度も低い(円安)水準です。95年の円高を現在に置き換えると1ドル=56円に相当するため、専門家の間では円高・ドル安が進む余地はまだ残っているという声も聞かれます。

しかしながら、経済成長率の低い国における通貨高や、財政悪化が著しい国における低金利(国債人気)に対しては、素朴な疑問を抱かずにはいられません。本来なら反対の「通貨安・高金利」になっていても不思議ではないからです。次回は為替や金利、デフレが今後どうなっていくのか、長期的な展望を考えてみたいと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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