サブプライムローン問題とは?金融危機の教訓と新たなリスク
2007年に米国で表面化した「サブプライムローン問題」では、高利回りに目を奪われた投資家や金融機関がリスクを低く見積もって証券化商品への投資を拡大。結果として、世界的な金融危機にまで発展する惨事となりました。類似性が指摘されているプライベートクレジットについても、同じ轍(てつ)を踏まないよう注意が必要です。
Q.サブプライムローン問題について改めて教えてください。
米国を中心に「プライベートクレジット」への不安が広がっています。プライベートクレジットとは、銀行が直接介在しない融資のことで、投資ファンドなど銀行以外の金融機関(ノンバンク)が資金の貸し手となり、主に中堅・中小企業などが借り手となります。
資産運用会社が提供するプライベートクレジットファンドでは、ファンドが広く投資家から資金を募り、その資金を使って中堅・中小企業などに直接融資を行います。一般的なファンドに比べて換金しにくい半面、利回りが相対的に高いことから、ここ数年で個人投資家にも大きな人気を呼びました。
ところが最近は、融資先企業の経営状況が悪化してデフォルト(債務不履行)に陥ったり、返済条件の見直しを迫られるケースが目立ちます。一部のファンドでは解約が急増したため、一時的に解約制限を設ける事態となっています。
こうしたニュースを目にすると思い出されるのが、2007年に米国で表面化したサブプライムローン問題です。
サブプライムローンとは、所得の低い人やクレジットカードで支払い延滞を繰り返す人など、信用力の低い個人を対象とした住宅ローンを指します。通常の住宅ローンより金利が高く設定されている分、審査基準は緩いのが特徴です。米国で住宅ブームが本格化した2004年ごろから普及し始めました。
サブプライムローンでは、最初の数年は金利が低めに固定され、それ以降は大幅に金利が高くなる「2段階ローン」の形式が多く採用されました。そのため利用者は購入した住宅の価格が値上がりした時点で、住宅を担保に金利が低い通常の住宅ローンへ借り換えたり、住宅を転売して返済に充てるなどの対応を取りました。
そもそも信用力の低い個人が対象なので、貸し倒れリスクは高いうえに、資金返済の前提として米国の住宅価格が上昇し続ける必要があったわけです。素人目に見ても危うい話だと思いますが、それでも当時はいわば相対的な高利回りを生む「魔法の杖」として、サブプライムローンに多くの投資家や金融機関が群がることとなりました。
誰がどの程度の損失を被るのか分からない事態に
サブプライムローンが魔法の杖に仕立て上げられた経緯は、おおむね以下の通りです。
まず資金の貸し手である住宅ローン会社などは、貸し倒れリスクの一部ないしは全部を回避・転嫁する目的で、サブプライムローンの債権を数百~数千件の単位で束ねて小口の証券化商品をつくりました。
証券化商品は投資銀行や証券化のために設立された特別目的会社(SPC)を経由して世界中に販売され、主としてヘッジファンドや機関投資家が購入したほか、個人投資家向けの投資信託にも組み込まれました。
なかでもヘッジファンドは、銀行や証券会社などから資金を借り入れて投資を大きく膨らませていきます。もともとサブプライムローンの金利が高く設定されていたため、証券化商品の利回りは米国債などよりも高く、運用手段として非常に魅力的だったからです。
当時の米国では2006年にかけて住宅価格の上昇が続き、購入住宅を担保としたローン借り換えや住宅転売が容易だったため、サブプライムローンの貸し倒れ率は低水準で推移していました。債権の一部が焦げ付いてもすべてが焦げ付く可能性は低いという認識が広がり、格付け会社もサブプライムローン関連の証券化商品に高い格付けを与えました。
しかし、米国の住宅ブームが終わって住宅価格が上昇から下落に転じると、当然のことながらサブプライムローンの返済に行き詰まる利用者が続出します。2007年には住宅ローン会社の破綻やヘッジファンドの清算・解約停止が相次ぎ、ヘッジファンドに資金を提供した銀行や証券会社にも損失が広がりました。
証券化商品が販売される過程では、投資銀行やSPCによって、住宅ローン債権と自動車ローンなど他の債権との合成が盛んに行われていました。表面的にはサブプライムローンが混じっていると気付かない証券化商品が世界中にばらまかれたことで、最終的に誰がどの程度の損失を被るのかよく分からないという事態に陥ります。
2008年には米国の大手投資銀行リーマン・ブラザーズが、サブプライムローン関連の損失拡大によって経営破綻しました。いわゆる「リーマン・ショック」です。これを機に金融市場では疑心暗鬼と信用収縮が広がり、大手銀行や保険会社も巻き込んで、金融危機が米国から世界中へと波及していきました。
一連の問題を厳しく総括するならば、サブプライムローンに関わった投資家や金融機関はいずれも高利回りに目を奪われ、ローンそのもののリスクを低く見積もったうえに、商品設計の複雑さに潜むリスクも見過ごしていたと言えるでしょう。
冒頭で紹介したプライベートクレジットは、実は2008年の金融危機後に資本規制が強化されて銀行がリスクを取りにくくなり、その代替手段として普及したものです。米国の銀行はプライベートクレジットファンドに対して融資を行っており、事実上、プライベートクレジットと関わりを持っていることになります。
プライベートクレジットの融資先には規模の小さいソフトウエア企業などが多く、ファンド融資が金融システム全体のリスクにつながる可能性は小さいと見られています。一方で融資の透明性や評価基準が十分ではないなど、サブプライムローン問題との類似性を指摘する声もあり、今後の動向には細心の注意が必要です。(チームENGINE 代表・小島淳)