いま聞きたいQ&A

低コストの送金手段や代替通貨として注目される暗号資産

暗号資産(仮想通貨)とは、インターネット上でやり取りできる新しいデジタル資産の総称です。金(ゴールド)と性質が似ている「ビットコイン」が有名ですが、価格が安定しやすい「ステーブルコイン」の市場規模も広がってきました。低コストの送金手段や法定通貨に代わる価値保存の対象として、今後も注目を集めそうです。

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Q.暗号資産の価値は何によって担保されているのですか?

暗号資産は一般的な紙幣や硬貨とは異なり、発行・流通に特定の国家や中央銀行などの公的機関が関与しません。代わりに「ブロックチェーン」という技術を用いて、発行・流通データがすべてコンピューターのネットワーク上に分散保存される仕組みになっています。

ブロックチェーンでは、暗号資産の新規発行や取引の詳細を「ブロック」という単位の暗号化データとして記録し、そのブロックをチェーン(鎖)のようにつないで保管します。データは多数の参加者がパソコンなどに分散して保存し、記録を相互にチェックし合うため、改ざんや消去が非常に難しく、安全かつ透明性の高い取引が期待できます。

そもそも暗号資産が注目されるようになった背景には、主として2つの理由があります。ひとつは銀行やクレジットカード会社などが介在しないため、送金や決済がいつでも低コストで可能になること。もうひとつは日本円や米ドル、ユーロといった法定通貨の信認が揺らいだ際に、それらを代替する価値保存の対象になり得ることです。

今回は数ある暗号資産のなかから、最も代表的なビットコインと、このところ話題に上ることが多いステーブルコイン(法定通貨担保型)の2種類を取り上げます。まずは両者の価値が何によって担保されているのか、それぞれ見てみましょう。

ビットコインはプログラムに基づいて世界中の事業者がマイニング(採掘)と呼ばれる計算競争を行い、マイニングを通じて自動的に新規発行される仕組みです。発行量の上限は2100万枚と定められており、供給量に制限があることが価値の裏付けとなっています。その点で埋蔵量に限りがある金と似ているため、「デジタルゴールド」とも呼ばれます。ただし、金が宝飾品としても重宝されているのに対して、ビットコインにはそうした付加価値はありません。

ステーブルコインは銀行や信託銀行、資金移動業者などに発行が認められています。日本国内では2025年10月に、フィンテック企業のJPYCによる発行が始まりました。発行体には「発行額と同額以上の裏付け資産を保有する」ことが義務付けられていて、裏付け資産は現預金や短期国債などが中心となっています。発行体がいわば準備金として流動性の高い資産を保有することで、ステーブルコインは法定通貨と常に等価で交換できるように設計されているのです。

なお、ビットコインの価格は米ドル建てを基準として表示されますが、ステーブルコインには米ドル建てのほか、円建てやユーロ建てなども存在します。ビットコインとステーブルコインは、いずれも金融庁に登録された国内の暗号資産取引所で売買することができます。

ステーブルコインは価格が安定しやすく、送金などに使いやすい

ビットコインは25年10月に12万6000ドル台の史上最高値を付けました。米国で景気後退の懸念から、利下げ観測が高まっていたことが主な要因です。金融緩和によって米国内の金利が低下すると、ドルの相対的な投資魅力が弱まるほか、財政出動などによる市場への資金提供はドルの価値低下につながります。その分、ドルの代替通貨としてビットコインの魅力が高まるわけです。

ところがその後、ブロックチェーン上の金融サービスがサイバー攻撃を受けて300万ドル相当の仮想通貨が外部に流出するなど、投資家の間で暗号資産に対する不信感が拡大。ビットコイン価格も下落に転じました。今年(26年)1月にトランプ米大統領が、利下げに慎重とされるケビン・ウォーシュ氏をFRB(米連邦準備理事会)の次期議長に指名すると、ビットコイン価格はさらに急落し、3月2日時点では6万6000ドル台で推移しています。

このように、ビットコイン相場は金利や為替など金融市場の動向に左右されやすいという特徴があります。金のように実物資産として認められた価値を持たないため、投資もしくは投機が目的の需要が多く、結果としてボラティリティ(価格変動率)は高くなりがちです。

一方のステーブルコインは、例えば「発行済みコインの1単位=1ドル」という具合に、流通市場において連動する(裏付けとなる)法定通貨との交換価格が一定に保たれます。長期で保有しても価格が安定しやすく、送金や決済に使いやすいという利点があります。

半面、裏付け資産の価値を超えて大きく値上がりすることは期待しづらいことから、投資対象としての魅力は低いといえるでしょう。発行体に信用不安が起きた際には、保有者が一斉に換金を求める「取り付け」が起こる可能性も考えられます。

調査・分析を手がけるRWA.xyzによると、世界のステーブルコインの市場規模は約3100億ドル(約48兆円)に上り、その9割超がドル建てで占められています。日本国内でドル建てのステーブルコインばかりが普及すると、裏付け資産としてドルや米国債の購入が進み、円や日本国債の売りにつながることが危惧されます。

そのため、三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは規格を統一した円建てのステーブルコインの共同発行に向けて実証実験を始めており、金融庁も支援に乗り出しています。今後は円建ての規模拡大が予想されますが、それに伴って銀行預金が減少するようなことになれば、銀行による国債購入余力がそがれる恐れも出てきます。専門家の間では、「差し引きで日本国債の需要がどれだけ増えるかは未知数」と指摘する声もあります。(チームENGINE 代表・小島淳)

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