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金利について整理しておきたいキーワードと基礎知識

日本では長らくゼロ金利の時代が続いてきましたが、昨年(2023年)あたりから金利の上昇傾向が目立つようになっています。金利は日本の経済・社会や国民生活にさまざまな影響をもたらすほか、個人の資産運用にも大きく関わってきます。金利について整理しておきたいキーワードと基礎知識をまとめてみました。

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Q.銀行の定期預金金利が一気に100倍まで上昇したのはなぜですか?

「金利のある世界」という言葉を最近、よく見かけるようになりました。金利の意味をひと言で表すならば、「お金を貸し借りする際に発生する手数料」ということができます。ただし、金利にはさまざまな種類があって分かりにくいのが現実です。今回は金利にまつわるいくつかのキーワードや出来事を取り上げて、それぞれが意味するところを整理してみたいと思います。

金利はまず、取引期間の長さによって「短期金利」と「長期金利」に分けることができます。短期金利は期間が1年未満のお金の貸し借りに関する金利のことで、日銀やFRB(米連邦準備理事会)など各国の中央銀行が操作・誘導を行うため、「政策金利」とも呼ばれます。

長期金利は期間が1年以上のお金の貸し借りに関する金利のことで、市場の需給関係や物価動向など、さまざまな要因によって変動します。例えば国内の景気が拡大して、企業や個人などお金の借り手が増えると長期金利は上昇し、反対に景気が後退してお金の借り手が減ると長期金利は下落します。大ざっぱに整理するならば、短期金利は国が意図的に動かす金利であり、長期金利は経済活動に応じて自然に決まる金利と考えることができます。

私たちにとって最も身近な金利といえば、銀行の預金金利ではないでしょうか。メガバンクでは現在、普通預金の金利が年0.001%、定期預金10年物の金利が年0.2%となっています。定期預金10年物の金利は昨秋まで年0.002%だったので、そこから100倍まで上昇したことになります。

銀行は期間が1年以上の定期預金金利について、対応する期間の長期金利をもとに、営業上の戦略も考慮しながら決めるのが一般的です。銀行が企業に設備投資などの資金を貸し付ける際の金利も、長期金利の水準がベースとなっています。

長期金利の指標とされる新発10年物国債利回り(期間10年の長期金利)は、21年まで0.1%未満に低迷していました。それが22年以降は徐々に上昇傾向を強め、23年11月1日には一時0.97%と約10年5カ月ぶりの水準まで上昇しました。同様に期間2年や5年の長期金利も上昇傾向にあります。

長期金利が上昇すると、銀行は企業への貸付金利を高く設定できるようになり、預金金利と貸付金利の差にあたる「預貸利ざや」が拡大します。また、事実上の無リスク資産といわれる日本国債で自己資金を運用する際に、従来よりも高い利回りを得られるようになります。すなわち銀行にとって長期金利の上昇は、収益増へのチャンス拡大を意味するわけです。

企業への貸し付けも国債購入も、原資(預金量)が多ければ多いほど有利です。ゼロ金利の状況でいくら預金を集めても使い道がないということで、これまでは預金の獲得に積極的でなかった銀行も、金利のある世界では口座数や預金量の確保が重要と考えるようになります。だからこそ、人々からより多くの預金を集めるために、金利を一気に100倍まで引き上げて定期預金の魅力を高めるといった行動につながるのです。

今後は変動金利型の住宅ローンが不利になる可能性も

私たちが資産運用を行う際にも、さまざまな形で金利が関わってきます。例えば金利の付き方には「単利」と「複利」があります。定期預金や債券投資で得られる金利の計算はもちろん、株式投資信託などのリターン(利回り)を計算する場合も複利が基本となるので、複利計算に慣れておきましょう。

前述した銀行の定期預金10年物に100万円を預けたと仮定します。1年目に金利が0.2%付くので、1年後の残高は「100万円×1.002=100万2000円」となります。2年目も金利が0.2%付きますが、1年後の残高が新たな金利計算のベースとなるため、2年後の残高は「100万2000円×1.002=100万4004円」です。このような複利計算を繰り返すと、10年後の残高は「100万円×1.002の10乗=102万180円」となります。

「固定金利」と「変動金利」の優位性について理解しておくことも重要です。文字どおり、満期まで金利がずっと変わらないのが固定金利で、一定の期間ごとに金利が変わるのが変動金利です。これから金利が上昇すると予想される場合、国債などに投資して金利を受け取るケースでは変動金利の方が有利ですが、住宅ローンなどを組んで金利を支払うケースでは逆に変動金利の方が不利になります。

一般個人が銀行や証券会社で購入できる個人向け国債「変動10年」は、満期が10年で変動金利タイプの国債です。長期金利の動きに合わせて半年ごとに適用利率が見直されるため、長期金利が上昇すると、私たちが国債から受け取れる金利も上昇します。

固定金利型の住宅ローンでは、長期金利に連動して適用金利が設定され、それが満期返済まで固定されます。一方、変動金利型の住宅ローンでは、短期金利の動きに合わせて半年ごとに適用金利が見直されるのが一般的です。

日銀が短期金利をマイナスとする政策を採用したことで、日本ではこれまで変動金利型の住宅ローン金利が非常に低い状態にありました。そのため、住宅ローンを組むにあたっては変動金利型を選ぶ人が圧倒的に多くなっています。

ところが今後は日銀の政策転換も予想されており、将来のある時点における変動金利型の適用金利が、現時点における固定金利型の適用金利を上回る可能性もあります。「あのとき固定金利型を選んでおけばよかった」と後悔することがないように、短期金利と長期金利の動向に目を配りながら、慎重に選択することが大切です。

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