いま聞きたいQ&A

新NISAで具体的・現実的な運用計画が立てやすくなる

2024年から少額投資非課税制度(NISA)が改正され、新たなスタートを切ることとなりました。念願だった制度の恒久化が実現するとともに、非課税で投資できる金額が大きく増えることで、使い勝手は格段に向上します。いずれの年代の人も資産づくりへ向けて、より具体的かつ現実的な運用計画が立てやすくなりそうです。

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Q.新NISAではどのような点が改正されるのですか?

現行のつみたてNISA、一般NISAはともに今年(23年)いっぱいで終了し、24年からは新NISAとして統合されます。つみたてNISAと一般NISAはそれぞれ、「新規で投資できる期間」と「非課税で運用できる期間」について利用期限が設けられていましたが、新NISAではいずれも無期限となります。

新NISAには、つみたてNISAを引き継ぐ形の「つみたて投資枠」と、一般NISAを引き継ぐ形の「成長投資枠」が用意されます。これまでは同じ年に、つみたてNISAと一般NISAの両方を使うことはできませんでした。新NISAでは、ある年にどちらか一方の枠だけを使うことも、2つの枠を併用することも可能になります。

年間に投資できる金額は、つみたて投資枠が120万円まで、成長投資枠が240万円までとなります。生涯で投資できる金額は、両方の枠の合計で1800万円(投資元本ベース)となりますが、そのうち成長投資枠として使えるのは1200万円まで。成長投資枠を使わずに、つみたて投資枠だけを使って1800万円を投資することも可能です。

なお、新旧のNISA制度は別個の取り扱いとなるため、今年中に現行のつみたてNISAや一般NISAで利用した投資枠は、新NISAの投資枠としてはカウントされません。今年中に旧NISAの投資枠を利用しておけばその分、生涯で投資できる金額は増えることになります。

NISAの制度改正によって、個人の資産運用にはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。例えば現在20~30代の人が、これから投資信託への積み立て投資を行って、将来的に老後資金として2000万円をつくるケースを考えてみます。

現行のつみたてNISAでは、投資できる金額が年間で40万円まで、生涯で800万円までに限定され、新規で投資できる期間も2042年までです。この条件だと、目いっぱい投資したとしても毎月約3万3000円ずつ、積み立て投資を20年間続けるのが上限となります。

毎月3万3000円ずつ20年間の積み立て投資で2000万円の資産をつくるためには、年率平均で8.3%のリターンが必要です。この数字は決して不可能ではないものの、現実問題として、かなりのリスクを取り続けることが求められます。

生涯を通じて運用に融通を効かせることも

新NISAでは非課税で積み立て投資できる金額が増えて、投資期間も長く取れるようになるため、以下のような運用計画の立案が可能になります。

  • ●例1:毎月1万8000円ずつ35年間、年率4.9%で運用
    積み立て総額756万円→最終的な運用総額2000万1184円
  • ●例2:毎月2万5000円ずつ30年間、年率4.8%で運用
    積み立て総額900万円→最終的な運用総額2005万3687円
  • ●例3:毎月4万円ずつ25年間、年率3.9%で運用
    積み立て総額1200万円→最終的な運用総額2027万0513円

自分の経済状況や年齢に合わせて毎月の積み立て金額と投資期間を設定できるうえに、必要なリターンがいずれも年率5%以下と、投資信託による運用としてはより現実的なレベルに収まることが分かります。また、いずれも生涯で可能な投資金額までには余裕があるため、ボーナスが出た際などに成長投資枠でスポット的な投資を行うのも一考でしょう。

成長投資枠では年間に240万円まで投資できるので、個別株への投資を検討する人にとっては、現行の一般NISAに比べて選択肢が大きく広がることになります。今年3月22日時点の株価でみると、東証プライム市場ではキーエンスやファーストリテイリングなどの5銘柄を除く1831銘柄が成長投資枠で購入できます。

ライフイベントを考慮して新規の投資を一時停止したり、その後に再開したりと、生涯を通じて資産運用に融通を効かせることができるのもメリットです。例えば現在30歳の人が、つみたて投資枠で毎月3万円ずつ、成長投資枠で毎年30万円ずつの投資を10年間行ったとしましょう。その時点で投資総額は660万円です。

40代になって子どもの教育資金など、まとまったお金が必要になった場合には、新規の投資を一時的に停止して、660万円の運用のみ継続しておきます。50代になり、ライフイベントが一段落して資金に余裕が生まれたら新規の投資を再開します。生涯で可能な投資金額はまだ1000万円以上残っているので、そこから17年間にわたって以前と同様の投資を行うことができます。

すでにまとまった預貯金を持つシニア世代が、短期間で生涯の投資枠を埋めるケースも考えてみます。つみたて投資枠で毎月10万円ずつ、成長投資枠で毎年240万円ずつ、合計で年間360万円の投資を5年間続けると生涯の投資枠1800万円に達します。

その後、例えば200万円で購入していた個別株が300万円まで値上がりしたため、売却して利益を確定したとします。新NISAでは保有商品の一部あるいは全部を解約した場合、翌年にその分の投資枠が「投資元本ベース」で復活します。すなわち上記の例では売却の翌年以降に、200万円分の新たな投資が可能になるわけです。

売却して得た利益は生活費に回してもいいし、当面の使い道がないならば、個人向け国債などの安全資産にシフトしておく手もあります。このように、新NISAでは資産の一部を取り崩しながら運用を続けることが容易になります。資産運用のゴールである「資産を使う」という場面においても、より具体的な計画が立てやすくなると言えるでしょう

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