いま聞きたいQ&A

投資信託がいよいよ本来の役割を試されようとしている!?

いわゆる売れ筋の投資信託が、この10年間で様変わりしました。かつて隆盛を誇った毎月分配型投信に代わって、最近では20〜30代の若年層を中心に、低コストのインデックス型投信が大きな支持を得ています。日本の投資信託にも、「一般個人の資産運用に資する」という本来の役割を試される時が来たようです。

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Q.日本の投資信託をめぐる最新動向について教えてください

金融庁の「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」を見ると、つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)の商品別買付額を時系列で確認することができます。今年(2022年)3月末時点では、インデックス型投信の買付額が1兆5297億7603万円(18〜22年の利用枠で買い付けがあった金額の合計)となり、21年3月末時点の6595億0387万円から1年間で2倍以上に増加しています。

同じく22年3月末時点のつみたてNISAにおける年代別買付額は、20歳代が21年3月末時点から2.54倍と、年代別で最も大きな増加率を記録しました。30歳代も同2.32倍と、年代別で2番目に大きな増加率となっています。

投資信託協会が22年2月に発表した「2021年度投資信託に関するアンケート調査報告書」によると、投資信託を購入する際に積み立て投資を利用する人の割合(全年代)は、19年が42.4%、20年が53.0%、21年が62.7%と着実に上昇カーブを描いています。

なかでも注目したいは、若年層ほど積み立て投資の利用率が高いことです。19年から21年にかけて、20歳代は「67.2%→77.0%→80.9%」、30歳代は「63.9%→70.6%→80.1%」と上昇を続け、いずれも直近では積み立て投資の利用率が8割を超えています

ここ数年、運用会社の間では特にインデックス型投信において信託報酬の引き下げ競争が進みました。そこにつみたてNISAなどの少額投資非課税制度が整備されたことも加わり、投資の未経験者も含めて、20〜30歳代の若年層を中心にインデックス型投信を積み立てる人が急増しつつあると考えられます。

そうした傾向は、売れ筋の投資信託にも顕著に表れています。QUICK資産運用研究所が追加型株式投信(ETF=上場投資信託は除く)を対象に調査した、今年1〜6月の資金流入額ランキングによると、上位6本のうち4本がインデックス型投信となっています

具体的には、ランキングの2位が『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』、3位が『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』、5位が『SBI・V・S&P500インデックス・ファンド』、6位が『楽天・全米株式インデックス・ファンド』という顔ぶれです。いずれもつみたてNISAの対象商品であり、海外の株式を中心に投資するタイプです。

ちなみにいまから10年前、2012年1〜6月の資金流入ランキングでは、上位10本中9本までが毎月分配型投信で占められていました。それらの投資対象は、米国など海外のREIT(不動産投資信託)からハイ・イールド債券、豪ドル建て債券、新興国の株式や債券まで非常に多岐にわたっています。当時は極端にいうと、毎月分配型でさえあれば何でも売れるような状況だったわけです。

過去10年間にインデックス型投信の純資産残高が全体で約5倍となる一方、毎月分配型投信は分配金を引き下げるケースが続出したこともあって、大幅に純資産残高を減らしました。大きな流れとしてみると、日本で人気を集める投資信託のタイプは「毎月分配型」から「グローバルな株式に投資するインデックス型」へシフトしてきたと言うことができます

つみたてNISAで積み立て継続なら、投資成果はほぼプラス

実は今年1〜6月は、つみたてNISA口座の利用者にとって初めての試練とも呼べる時期でした。多くの人が積み立てている米国株や世界株の指数に連動するタイプのインデックス型投信において、期間中に基準価額が軒並み下落したからです。

ただし、積み立て投資を継続して行ってきた人は、依然として含み益が出ているケースが目立ちます。前出のQUICK資産運用研究所の集計によると、つみたてNISAの制度がスタートした18年1月当初から今年5月末まで約4年半にわたって、対象となる投信に毎月同額ずつを積み立て投資した場合、6月末時点では該当する140本中137本で投資成果がプラスとなっています

個人が積み立て投資を行うにあたっては、長期の資産運用を前提とするのが基本です。そこでは長期にわたって少しでも効率よくリターンを獲得するため、できる限り低コストの投資であることが重視されます。かつては高齢層を中心に、毎月分配型の「短期的に利益確定を繰り返す仕組み」が重宝されましたが、今日では若年層を中心に、低コストのインデックス運用という「長期投資のやりやすさ」が支持されているわけです。

約4年半の積み立て継続で投資成果がプラスとなった、つみたてNISAの対象商品には、少数ながらアクティブ型の株式投信も含まれています。

アクティブ型投信は、特に日本株で運用するタイプが金融庁から「コスト控除後の運用成果がインデックス型投信と変わらないか、下回るケースが多すぎる」と指摘されるなど、相変わらず厳しい状況が続いています。しかし、つみたてNISAの対象商品をみる限り、少なくともこれまでのところは、低コストのアクティブ運用という新しい可能性が示されていると言えそうです。

日本の投資信託は「一般個人の長期的な資産形成や資産運用に資する」という本来の役割を、どこまで果たすことができるのか、いよいよ本格的に試される時期にさしかかったのかもしれません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。