いま聞きたいQ&A

「仕組み債」は、一般的な債券の範疇に入る商品ではない

商品内容が複雑で、個人にとっては理解するのが難しい「仕組み債」。金利は高めですが、結果としてリスクに見合った利回りが得られにくいことや、実質手数料が割高なことはぜひとも知っておきたいところです。国内債券へ投資する判断材料として、日本の基本的な金利状況を日ごろから確認しておくことも大切です。

メインビジュアル

Q.「仕組み債」の商品内容を具体的に教えてください

日本の長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは今年(2022年)2月、6年ぶりに一時0.2%台を記録しました。その後はおおむね0.2%台が定着して、7月27日時点の終値では0.200%となっています。

金利の上昇を受けて、私たち一般個人でも購入が可能な「個人向け国債」の利率も上昇してきました。例えば、実勢金利(世の中の金利)に応じて半年ごとに適用利率を見直す「10年変動金利型」では、昨年秋ごろまで下限の年利0.05%が続いていましたが、今年7月7日~29日に募集が行われた第148回の当初適用利率は0.17%(税引き前)となっています。

そんななか、「仕組み債」という商品が年利2~3%などの高金利をうたって個人に販売され、トラブルが多発するなど大きな問題になっています。仕組み債には「株価指数リンク債」や「EB債(他社株転換社債)」など、いくつかの種類がありますが、その商品内容はおおむね以下のとおりです。

いま仮に期間3年、年利2%の「日経平均株価リンク債」を100万円で購入したとしましょう。このタイプでは、指標となる日経平均株価(以下、日経平均)が仕組み債の保有期間中にどのような動きをするかによって、最終的な投資成果は大きく変わることになります。

日経平均の「当初価格」が3万円、「ノックイン価格」がその70%にあたる2万1000円、「トリガー価格」が105%にあたる3万1500円だったと仮定します。当初価格は仕組み債を購入した時点の価格、ノックイン価格は元本減額の基準になる価格、トリガー価格は早期償還の基準になる価格にそれぞれ相当するものです。

仕組み債の保有期間中に日経平均が一度でもノックイン価格以下になり、なおかつ償還時に当初価格を下回っていた場合には、償還時の株価と当初価格の比率に応じて元本が減額されます。例えば日経平均がいったん2万円まで下がった後、償還時に2万4000円だった場合、これは当初価格3万円の20%減にあたるため、償還額も元本100万円の20%減にあたる80万円となります。

一般的な債券と同じように「満期まで保有して3年分の金利と元本が戻ってくる」のは、保有期間中に日経平均が一度もノックイン価格以下にならないか、あるいはノックイン価格以下になったとしても、その後に上昇して償還時に当初価格以上となることが条件です。

収益は限定的だが、損失は大きくなる可能性あり

仕組み債の保有中に日経平均が上昇した場合はどうなるでしょうか。通常、仕組み債には「3カ月ごとの早期償還判定日に、参照する指標の価格がトリガー価格以上なら額面で早期償還」といった早期償還条項がついています。先の例でいえば、購入から3カ月後の判定日に日経平均が3万1500円以上になっていたら、早期償還されて3カ月分の金利と元本が戻ってきます。

本来は満期まで保有すれば3年分、合計6%の金利がもらえるはずですが、3カ月で早期償還になると12分の1にあたる0.5%だけを受け取って、いわば投資を強制終了させられることになります。このように仕組み債は、損失が大きくなる可能性がある一方で、収益は一定の範囲内に限定されているうえ、当初の見込みより小さくなることも珍しくありません。投資家にとっては、結果としてリスクに見合った利回りが得られにくい商品といえます。

仕組み債の手数料は販売価格に盛り込まれていて、一見すると手数料がないかのように見えることも問題です。実質的な手数料の平均水準は投資元本の3~5%程度といわれており、投資信託などと比べても割高な商品が目立ちます。早期償還になった場合、投資家は新たに発行された仕組み債に乗り換えがちですが、早期償還と再購入を繰り返すことにより、気付かぬうちに手数料の支払いが増えるケースも多いようです。

金融庁は今年5月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート 2022」のなかで、仕組み債のひとつであるEB債に対してかなり手厳しい指摘を行っています。とりわけ注目したいのは、リスク・リターンと手数料について言及された以下のくだりです。

——商品特性上、株式との相関が強い一方で、リスク・リターン比は劣後するため、株式に代えてEB債を購入する意義はほとんどないと考えられる——

——取扱金融機関(販売会社もしくは組成会社)側から見ると短期間で収益を上げやすいため、償還済み顧客に繰り返し販売する回転売買類似の行動に対する誘因が働きやすい商品性となっている——

こうした指摘はEB債に限らず、仕組み債全体に当てはまるものと考えるべきでしょう。金融庁が株式との比較でリスク・リターンの水準を語っていることからも分かる通り、仕組み債は一般的な債券の範疇(はんちゅう)に入る商品ではありません。

金融機関から仕組み債の購入を勧められた場合、特に高齢者などは商品内容を正確に理解するのが難しいと思われます。だからこそ、少なくとも冒頭に掲げた日本の基本的な金利状況だけは、日ごろから確認するように心がけたいところです。期間が短いわりに利率が高い国内債券には、それ相応のリスクが隠れていることは確かだからです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。