分散投資の対象として、どのような資産がふさわしいのでしょうか?(後編)
株式より高いインカムゲインが期待できるREIT
今回は分散投資の対象候補としてREIT(リート=不動産投資信託)を取り上げてみます。
私たちがREITに投資する場合、リターンとして期待できるものは2つあります。投資口価格の上昇による売買差益(キャピタルゲイン)と、分配金収入(インカムゲイン)です。その意味では、株価の上昇による売買差益と、配当金が期待できる株式に似ているといえますが、株式とは大きく異なる点もあります。
REITには、管理費用などの経費を除いた収益の9割超を分配すれば法人税が免除されるという制度上の特典が認められており、決算においては収益の大半を分配金に回すのが通例となっています。そのため、法人税引後の収益から配当を出す株式の配当利回りよりも、REITの分配金利回りは高くなりやすいのです。
国債にマイナス利回りが目立つ今日では特に、こうした分配金利回りの相対的な高さが投資家の注目を集めています。REITの分配金の主な原資となるのは、REITが購入した不動産物件から得られる賃料収入です。株式の配当原資となる企業利益に比べて、賃料収入は変動率が低く安定しているのが特徴です。
賃料収入が激減するような不動産市況の悪化にでも見舞われない限り、投資家はREITを通じて長期安定的な分配金収入を期待できるわけです。このようなリターン特性に着目して、最近ではREITを債券の代替商品として位置づける投資家も増えているもようです。
日本国内のREIT全体の値動きを示す「東証REIT指数」は2019年11月25日現在、2207.74と約12年ぶりの高値圏にあります。指数を構成する63銘柄の平均分配金利回りは3.46%で、東証1部上場株式の平均配当利回り(1.90%)や米国10年国債利回り(1.75%)をかなり上回る水準です。ちなみに18年末には東証REIT指数が1774.06、平均分配金利回りは4.16%だったので、年初からほぼ11カ月間で指数は約24%上昇し、分配金利回りは約17%低下した計算になります。
株式の配当利回りと同じく、REITでも分配金の水準が変わらなければ、投資口価格が上昇すると分配金利回りは低下する関係にあります。今年に入って以降、国内REITの分配水準に大きな変化は見られないため、この間の分配金利回り低下については、投資家の人気が高まって投資口価格が上昇したためと考えていいでしょう。
資産に安定リターンを加味するというREITの機能
REITにとっては現在、追い風となる経済・金融環境がそろっています。
例えば、国内REITが購入する物件のうち4割強を占めるオフィスビルの需要が堅調に推移していること。オフィスビル仲介大手の三鬼商事によると、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)におけるオフィスビルの空室率は10月時点で1.63%と過去最低水準にあり、平均賃料は10月まで70カ月連続で上昇を記録しています。
働き方改革に対応したレンタルオフィスや、災害時の事業継続計画(BCP)に基づく高機能オフィスなど、東京都心に限らず地方都市でもオフィス需要はまだ伸びる余地がありそうです。オフィス賃料の増加は分配金拡大につながるため、ここしばらくは国内REITの投資口価格、分配金ともに高位安定への期待が高まります。
低金利もREITにとっては有利に働きます。不動産物件の購入にあたって投資家から集めた資金のほか、金融機関からの借入金も活用するため、低金利が続くほど物件購入コストの抑制が可能になります。また、前述したように債券金利の低下は分配金利回りの相対的な高さをクローズアップするため、自然と投資家の注目が集まりやすくなります。
ただし、これらの好環境がいつまでも続くわけではありません。新しい投資家が多く参入している分、環境が変化した際にマネーが逆回転しやすいという懸念もあります。短期的には世界景気の後退局面が、中長期的には金利の上昇局面が、それぞれREITにどのような影響を及ぼすのか気になるところです。
米国などに比べて、経済成長やインフレが見込みづらい日本においては、REITはディフェンシブな利回り商品としての側面が強いといわれます。一方で価格変動リスクは株式と同程度という専門家の指摘もあり、世界景気や国内不動産市況の動向によっては、分配金で蓄積したインカムゲインが投資口価格の下落によって毀損(きそん)されてしまう恐れも残ります。
REITは債券の代替商品というよりは、すでに株式や債券に投資している人が、自らのポートフォリオ(資産構成)に安定的なリターンを加味するような商品と位置づけた方がいいのかもしれません。
そうした機能はこの先、日本の長期金利が本格的に上昇傾向を示すなど、金融環境が激変する日が訪れるまでは保たれると考えられます。価格変動リスクの低減を重視するならば、東証REIT指数への連動をめざすインデックス型投信や、複数のREITへ分散投資するアクティブ型投信を少額ずつ積み立てるという手もあります。