利回りが価格を下支えする特徴
REIT(リート)は、いわば投資信託の不動産版です。投資法人と呼ばれる運用会社が、投資家から集めた資金でオフィスビルや高級賃貸住宅などの不動産を購入し、おもに賃料収入からなる収益を投資家へ還元する仕組み。株式と同じく証券取引所に上場されており、今年(2007年)の7月20日現在、東京証券取引所とジャスダックに合計41銘柄があります。
投資家がREITで期待できるリターンは2種類あり、一方では株式的な性質を、もう一方では債券的な性質を備えています。
REITのリターンのひとつはキャピタルゲイン(値上がり益)で、株価に相当する「投資口価格」が購入時より上昇していれば、売却することで収益が得られます。リターンの2つ目は株式の配当にあたる分配金で、基本的に年2回支払われます。1年間の予想分配金を現在の投資口価格で割ったものを「分配金利回り」と言い、これは債券の利回りに相当します。
東証に上場しているREIT全銘柄の値動きを表す「東証REIT指数」は、2006年の秋から急上昇を示し、過去1年あまりで40%ほど上昇しました。その大きな要因として、日本の不動産を国際的に割安と判断した外国人投資家が、日本国内のREITを大量に買ったことが挙げられます。2007年に入って日本では株式・債券・不動産に分散投資するタイプの投資信託が登場し、人気を呼びました。こうした投資信託を通じて、個人投資家の資金がREITに大量流入したことも影響していると考えられます。
一方の分配金利回りは銘柄によって格差があり、平均で現在約3%となっています。これは10年物国債の利回りを1%ほど上回る水準です。分配金利回りの平均が6%近くだった2002年当時は、10年物国債との利回り差も4%以上に達していました。ここにきてREITの分配金利回りが低下したのは、過去1年で投資口価格が大きく上昇した結果です。債券の場合と同じように、REITにおいても「価格が上がると利回りは下がる」という関係にあるわけです。
反対に価格が下がれば利回りは上がるため、利回り商品としての魅力は高まります。たとえばこの先、外国人投資家が売りに転じてREITの投資口価格が大きく下がったとしても、そのときには分配金利回りの魅力から国内の金融機関などが買いを入れると予想されます。つまり、REITには利回りが価格を下支えする特徴があるのです。
有利子負債の内訳をチェック
原則的には地価や賃料に合わせて、REITの投資口価格も上下します。すなわちREITのキャピタルゲインは不動産市況に左右されるわけですが、不動産の動向を個人投資家が予測するのは難しいため、短期で売却益を狙うような投資はリスクが大きいかもしれません。むしろ分配金利回りに着目し、株式と債券の中間的な位置づけの投資対象として、中長期的にインカム(配当益)を積み上げていく投資を考える方がいいと思われます。
銘柄を選ぶ際には、分配金利回りとともに財務状況もチェックする必要があります。ほとんどのREITでは、新規物件の取得資金として銀行などから借り入れをおこなっています。借入金には変動金利の短期負債と、固定金利の長期負債があり、たとえばこれから日銀が利上げを実施した場合、前者の比率が高い銘柄では金利負担が高まることになります。
資産総額に占める有利子負債の比率が低いことはもちろん、有利子負債に占める短期負債(変動金利)の比率が低いことも、銘柄選びのひとつの目安となるでしょう。