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いま聞きたいQ&A

株式市場の先行きと投資の在り方について、どのように考えればいいですか?(後編)

日銀による株式購入が個人投資家の買い場を奪っている

日銀は2%のインフレ率をめざす金融緩和の一環として、これまで日本株を大量に買い付けてきました。具体的には、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった株価指数に連動するタイプの上場投資信託(ETF)を、現在も年間6兆円のペースで購入し続けています。

日銀が公表する資料などをもとに試算すると、今年(2019年)6月末時点でETFの累積保有額は29兆円(時価ベース)に達した模様です。これは東証1部上場企業の時価総額全体の4.9%を占める数字であり、日本株の保有額ランキングではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に次ぐ2位に相当します。

こうした政策が日本における株価の安定および企業や投資家の心理好転に一役買ったことは誰もが認めるところでしょう。しかし、ここにきてその副作用や弊害を指摘する声も目立つようになってきました。

ETFの買い付けでは、個別企業の業績の好不調に関係なく指数構成銘柄をすべて購入することになります。購入一本やりで売却はしないため、日銀はすでに東証1部上場企業の約半数において上位10位以内の大株主になっています。結果として購入対象となる銘柄では、株価が実態より高止まりすることによって企業経営の規律が緩んだり、日銀が大株主になることで企業への監視体制が甘くなるといった懸念が生じてきます

日本の株式市場では元来、個人投資家と外国人投資家が逆の売買をする傾向の強いことが知られています。例えば外国人の売りによって日経平均株価が下落する局面では、個人がすかさず買いを進めるといった具合です。ところが15年3月以降、外国人の日本株保有比率が下がっているにもかかわらず、個人株主の保有比率はそれほど上昇していません。

その一因と考えられるのが、実は日銀の存在です。日銀はETF購入に際して、日経平均株価が下落した日に大口の買いを入れるという動きを徹底しています。外国人の売りによって日経平均株価が下がる日には、日銀が大量の買いを入れて相場を支えるため、個人が買いたいと思う水準まで株価が下がらなくなりました。つまり、見方によっては日銀のETF購入が個人投資家の買い場を奪っているとも言えるわけです。

インデックス型の日本株投信にこだわる必要性は低い?

日銀は基本的に今後も緩和的な金融政策を継続する姿勢を示しており、ETF購入がいつ終了するのか定かではありません。そんななかで私たち一般個人が株式への投資を考えるとしたら、どのような点に留意すべきでしょうか。

一例として、インデックス型の日本株投信に毎月一定額の積み立て投資を行うケースを想定してみます。注目点としてまず挙げられるのは、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数が日銀のETF購入によって「かさ上げ」されるため、指数が下がった局面での購入量が本来より少なくなる可能性があることです。

こうした投資効率面の懸念に加えて、前回も紹介したように株式相場の先行きが不透明なことを考えると、いまあえてインデックス型の日本株投信にこだわる必要性は低いかもしれません。近い将来、本当に日本株相場が調整局面を迎えて、日銀のETF購入でも支えきれないほど株価指数の下落基調が鮮明になるならば、そこまで待ってから積み立てを始める方が長期的には有利だからです

いますぐ日本株への投資を始めたいという人や追加購入を検討している人は、株価指数(相場)の動きに左右されにくい面を重視して、アクティブ型を選択するのもひとつの手だと思われます。アクティブ型の日本株投信を積み立ててもよいし、予算が許す範囲内で個別銘柄に投資するのもよいでしょう。ただしその際には、できれば何らかの根拠を持って臨みたいところです。

「市場を見る目を養う」という観点に立つと、やはり相対的に割安な銘柄を探すことが基本になります。特に目新しい手法ではありませんが、不透明な環境下だからこそ株式投資の原点に立ち返り、PER(株価収益率)などの株価指標を使って銘柄の割安度を測ることに挑戦してみてはどうでしょうか。アクティブ型日本株投信の積み立てを検討する場合には、公表されている直近の組入上位銘柄について割安度をチェックすることで、各投信の運用姿勢を知ることができます。

簡単におさらいしておくと、PER(倍)は「株価(円)÷1株当たり当期純利益(円)」という計算式によって表され、ある銘柄の現時点の株価が1株当たり当期純利益の何倍に相当するかを示すものです。株価は将来の企業業績を織り込んで動くため、1株当たり当期純利益は過去の実績値ではなく、予想値を用いるのが一般的です。

基本的にはPERの倍率が高いほど株価は割高、倍率が低いほど割安とみなすことができますが、PERを実際の投資に活用するにあたってはもう少し工夫が必要になります。業種の成長性によってPERの平均的な水準は異なるため、複数の銘柄間でPERを比較する際には、業種が同じで事業モデルが近い企業を選ぶのが大原則です。また、ある銘柄について現在と過去のPERを比較しながら、PERが動いた要因を探ることも非常に重要です。

次回はテーマを変えて、PERを中心に株価指標の意味や具体的な活用法について、さらに突っ込んで考えてみようと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。