1. いま聞きたいQ&A
Q

株式市場の先行きと投資の在り方について、どのように考えればいいですか?(前編)

日米で強まりつつある企業業績の下振れ懸念

私たち一般の個人投資家にとって、現在は株式投資の判断が非常に難しい局面かもしれません。米国の景気拡大は今年(2019年)7月で、とうとう11年目に突入しました。米ダウ工業株30種平均は、7月15日に2万7,000ドル台の史上最高値を記録するなど相変わらず上昇基調が続いています。

その裏では米国で長短金利の逆転現象(逆イールド)が発生し、景気後退の前兆ではないかとささやかれ始めました。調査会社リフィニティブによると、米主要企業の純利益は19年7~9月期まで3四半期連続の減益となる見通しで、株価の上昇とは裏腹に企業業績の減速傾向が鮮明になりつつあります。

企業業績の下振れが懸念されているのは日本企業も同様です。2020年3月期における日本企業の純利益は2年連続の減益が見込まれており、特に米中貿易戦争で大きな打撃を受ける中国関連やハイテク関連企業に対する懸念が強まっています。

ここにきて海外投資家が日本株から資金を引き揚げる動きも目立ちます。東証が7月4日に発表した投資部門別売買動向によると、今年1~6月に海外投資家は日本株を約1.8兆円売り越していました。日本株を組み入れて運用する世界のアクティブ型投信について、モーニングスター・ダイレクトのデータをもとに集計を行ったところ、昨年8月から今年6月まで11カ月連続で資金流出が流入を上回ったことが判明しています。

大雑把にまとめるならば、米国株には長らく続いた上昇基調が近いうちに下落基調へ転じそうな気配が色濃く漂い、日本株はひと頃のアベノミクス効果が剥げ落ちて、米国景気や米中貿易戦争の影響次第では大きな調整もあり得る、といったところでしょうか。日米の株式市場ともに相場が転機を迎えつつあることに加えて、米国株の動向はいずれ各国の株式市場にも波及することが必至なため、世界全体として株式市場の先行きが不透明になっているといえます。

人智を超えたアルゴリズムが存在するわけではない

ここでひとつ、冷静に考えてみたいことがあります。経済・金融に関して「先行き不透明」という言葉をよく見かけますが、それでは反対に、どこからどう見ても先行きが透明だと言い切れるような都合の良い局面はあるのでしょうか。あるいは、たとえ先行きがどれだけ不透明でも上手にリスクの波をかいくぐりながら、常にある程度のリターンを稼がせてくれるようなありがたい投資法が、本当にあるのでしょうか

どういうわけか、世の中には成功が約束されない限り、投資などにお金を使いたくないという人が結構多いようです。これはいわば、その時々の経済・金融環境にマッチした「投資の必勝法」がどこかにきっとあるはずだと、人々が信じていることの裏返しです。近年のはやり文句では、そんな必勝法を見つけ出してくれるのがAI(人工知能)ということになるのでしょうが、AI開発の第一人者であるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授は意外な持論を展開しています。

いま仮に、AIに住宅ローンの可否を決定させるシステムをつくるとします。そのAIはこれまで長年にわたってローン審査などに従事してきた人々の、実際の仕事を通じた判断データをもとに学習トレーニングを積むことになります。結果的にそのAIが特定の人種の個人に対してローンを実行しないと判断したら、それは「ローン審査に従事する人々のバイアス(偏向)の反映である」とヒントン氏は言うのです。

何のことはない、市場や相場をつくって動かしているのは人間であり、そこに投資という形で資金を投じたり引き揚げたりしているのも人間です。AIをつくって投資への応用をめざしているのも、もちろん人間です。天災の影響など一部の例外を除けば、経済・金融のほぼすべてのプロセスには人間の思考や行動がかかわっており、人智を超えた投資のアルゴリズム(問題を解決するための方法や手順)が独立で存在するわけではありません

ヒントン氏はこんな話もしています。「あなたが『それはスマホだ』と言えるのは、あなたの脳に入っている過去の膨大な経験のつながりがあるからだが、具体的にどの経験をもとにスマホと言えるのかを説明することはできない」。かように人間の暗黙知とは、数値化やデジタル化が困難だということでしょう。

投資の必勝法を探すのが悪いとはいいませんが、それ以上に私たちは「市場を見る目」を養うことにもっと力を注ぐべきではないでしょうか。例えば現在、日本の株式市場では日銀による株式の購入量が異常に増えており、さまざまな弊害が指摘され始めています。一方で、そんな状況だからこそ明確に見えてくる、株式投資に関する気付きや心得といったものもあるような気がします。

次回はそのあたりの話を中心に、これから株式投資を考えている一般個人にも役立ちそうな着眼点や注意点について探ってみようと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

目次へ戻る