1. いま聞きたいQ&A
Q

長期金利の上昇は何を意味するのでしょうか?

結果として景気の拡大を示す

市場金利には、大きく分けて「短期金利」と「長期金利」の2種類があります。

短期金利は期間が1年未満のお金の貸し借りに関する金利のことで、銀行が日々の資金繰りでお金を融通し合うケースなどに用いられます。短期金利は基本的に日本銀行が定める政策金利をもとに決められており、国がその時どきの金融情勢を見ながら策定する金利と言うことができます。ちなみに今年(2007年)の7月13日現在、基準貸付利率(従来の「公定歩合」)は0.75%、翌日に返済する必要がある「無担保コール翌日物」の金利は0.529%となっています。

一方の長期金利は、1年以上のお金の貸し借りに関する金利のことです。企業が設備投資などの資金を銀行から借りる際の金利や、個人が住宅ローンを組む際の金利などが、これにあたります。長期金利は短期金利の影響も受けますが、それ以上に景気などの経済動向を色濃く反映しながら、需給関係という市場メカニズムによって決まるという特徴があります。

企業や個人など、お金の借り手が増える(景気が拡大する)と長期金利は上昇し、逆に借り手が減る(景気が後退する)と長期金利は下落します。この仕組みを、長期金利の指標である「国債利回り」(新発10年物国債利回り)で考えてみましょう。

国債を大量に保有している銀行や生命保険会社などは、景気の先行きが明るいと判断すれば国債を一部売って、株式など他の金融商品での運用に切り替えます。債券は価格が下がると利回りが上がる関係にあります。すなわち国債が売られれば、国債利回り=長期金利は上昇するというわけです。日本の長期金利は過去数年にわたって上昇傾向をたどってきましたが、それは2002年2月に始まって戦後最長を記録した景気拡大の結果と考えることができます。

インフレや円高の兆しにもなる

ここにきて長期金利の急激な上昇ぶりが目立ってきました。今年の5月初めに年率1.6%台前半だった国債利回りは、6月中旬には2%台の目前まで迫り、7月13日現在も1.930%と高い水準を維持しています。この急上昇には、市場関係者のあいだで日銀が早ければ8月にも政策金利を引き上げそうだという観測が高まったことが影響している模様です。

長期金利は、将来の物価や為替レートの動向を読み解くヒントにもなります。たとえば今後インフレ(物価上昇)が進んで、日銀が金融引き締めのために政策金利を大きく引き上げると、それに合わせて1年物や2年物の定期預金の金利も大きく上がることになります。そのような状況が近い将来に予想される場合には、金利が固定されている10年物国債を購入する人は減るでしょう。すなわち、国債の価格が下がって長期金利は上昇することになります。

物価動向も考慮に入れて世界15通貨の実力を割り出した「実質実効為替レート」は、今年5月時点の為替相場が94.9と、1985年9月のプラザ合意時(94.8)と並ぶ円安水準にあることを示していました。これほどの円安を招いた一因として、日本の金利が主要各国に比べて低すぎることがあります。今後は円高に修正される余地も大きく、長期金利の上昇がその呼び水になる可能性も考えられます。

現在のところ、物価についても為替についても、目立った動きは見られません。長期金利が急上昇したと言っても、5%台の米国などと比べれば、まだまだ低い水準です。ただし、長期金利の上昇が景気拡大の「結果」であると同時に、物価高や円高の「兆候」にもなり得ることは知っておいた方がいいと思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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