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いま聞きたいQ&A

Q.なぜ企業に「ウェルビーイング経営」が求められているのだろう?

【この記事でわかること】

  • ウェルビーイングは生産性や創造性と相関がある
  • 日本企業によるウェルビーイング向上への取り組み
  • 自律性が低いと仕事に面白さを感じにくい

従業員の幸福度と、生産性や創造性との間には相関があることが、ウェルビーイングの研究を通じて明らかになってきました。特に日本企業においては、仕事の面白さにつながる自律性を高めることがウェルビーイング向上のカギとなりそうです。

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幸福度の高い従業員は創造性が3倍も高い

ウェルビーイング(Well-being)とは、人間が身体的・精神的・社会的に良好で満たされた状態にあることを指します。これを企業活動にあてはめたのが「ウェルビーイング経営」で、従業員が心身ともに幸福や充足を感じながら生き生きと働けるようにする取り組みです。

企業経営にとっては利益追求が大きな目標であり、ウェルビーイングはなじまないようにも思えます。しかし、近年の社会変化を背景に、日本企業の間でもウェルビーイングの向上を目指す動きが広がっています。

例えば新型コロナウイルス禍を経て、人々の働き方は多様化しました。若年層を中心に、自身の成長や幸福を実感できる職場への欲求も高まっています。また、ウェルビーイングの研究が進んだことで、生産性や創造性との相関を統計学的に示せるようになってきました。

米国で行われた研究では、幸福度の高い従業員は低い従業員に比べて生産性が31%、売り上げが37%、創造性が3倍もそれぞれ高いという結果が出ています。他の研究では、ウェルビーイングの高い従業員ほど「燃え尽き症候群」に陥りにくいことも報告されています。

ウェルビーイング経営によって、従業員一人ひとりの仕事のパフォーマンスが高まれば、結果として企業の利益向上にも結びつくと考えられるわけです。

活動への没頭が充足感や満足感をもたらす

従業員のウェルビーイングを高めるためには、具体的に何が必要なのでしょうか。

ハンガリー出身の心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏が唱えた「フロー理論」によれば、自身の能力と挑戦のレベルが釣り合っていて、時間を忘れるほど活動に没頭できる(フローの状態)と、人は充実感や満足感が高くなるといいます。

丸井グループでは、このフロー理論をウェルビーイング戦略に取り入れています。新規事業プロジェクトへの挑戦や職種変更などの制度を数多くそろえ、従業員が自ら仕事を選択できる体制を整備。好きな仕事を通じてフローの状態を体験できる機会を増やし、従業員の創造力を最大限に引き出すことを目指しています。

積水ハウスでは2020年から毎年、全従業員を対象に「幸せ度調査」を行い、「自分の人生は理想に近いか」など、さまざまな質問を重ねて従業員の幸せを多面的に計測しています。幸福度と業績評価の因果関係を分析すると、「評価が高いから幸せ」より「幸せだから評価が高い」という具合に、幸福度が評価に及ぼす影響の方が1.5~2倍ほど高くなっていました。

仕事のマネジメント変革がカギに

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の明日山陽子研究員は、日本や米国など10の高所得国を対象に、「仕事が面白い」と感じる労働者の割合とその決定要因について調べました。日本は「仕事が面白い」という回答の割合が最も低く、逆に「仕事が面白くない」という回答の割合は最も高くなっています。

一部で先進的な取り組みは見られるものの、日本企業においては従業員のウェルビーイングが国際水準よりも低く、まだ改善の余地は大きいと考えられます。

明日山氏の分析では、日本の労働者が仕事に面白さを感じにくい要因として、特に自律性の低さが大きな影響を与えているとのこと。実は前述した積水ハウスの幸せ度調査でも、自律的に働いていると感じる度合いが高いほど、幸福度は上がるという結果が出ています。

日本の職場ではこれまで、人間関係やチームワークを重視する傾向が強く、仕事の自律性への関心は薄かったかもしれません。個人の判断や裁量で行える業務の範囲が広がれば、従業員は達成感や自己の成長を感じやすくなるでしょう。日本企業がウェルビーイング経営を進めるにあたっては、仕事のマネジメント変革が一つのカギになりそうです。(チームENGINE 代表・小島淳)

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。