1. いま聞きたいQ&A
Q

TOPIX改革の内容と、それがもたらす影響について教えてください。

採用基準が未達の銘柄は25年1月に完全除外

東京証券取引所が今年(2022年)4月に実施する市場再編は、プライム市場の上場基準や経過措置に関して専門家から「期待はずれ」との指摘があるなど、どうにも中途半端な印象はぬぐえません。一方で、投資家が資金の運用先やベンチマーク(運用目標)として活用するTOPIX(東証株価指数)については、待ったなしで改革が実施されるもようです

TOPIXの構成銘柄は以下のようなプロセスで見直し作業が進められます。

まず、新しい市場体制が始まる4月4日以降は、所属する市場区分にかかわらず、4月1日時点の構成銘柄が当面そのまま維持されます。TOPIXはしばらくの間、プライム市場に所属する銘柄と、スタンダード市場などプライム以外に所属する銘柄が混在する形になるわけです。

TOPIXの採用基準はプライム市場の上場基準と同じく、「流通株式の時価総額で100億円以上」。現状のTOPIX構成銘柄がこの基準を満たしているかどうか、21年7月、22年10月、23年10月と3回にわたって判定作業がおこなわれます。ちなみに、すでに実施された21年7月の第1回判定では486社が100億円未満となっていました。

それら486銘柄については、今年10月に実施される第2回判定で翌期の改善状況が確認されます。第1回・第2回の判定ともに100億円未満だった銘柄は、10月末から段階的にTOPIXへの組み入れ比率が引き下げられていきます。

23年10月には、(1)第2回判定の翌期に流通株式の時価総額が100億円以上(2)年間売買代金回転率が0.2回転以上――という2点を対象に、再評価の判定がおこなわれます。そこで(1)と(2)の両方を満たした銘柄はTOPIXへの組み入れ比率を22年10月以前の水準に戻し、(1)だけを満たした銘柄については、組み入れ比率の引き下げを停止します。

そして、判定を最後までクリアできなかった銘柄は、25年1月末をもってTOPIXから完全に除外されることとなります。

新陳代謝が進む市場設計に本気で取り組めるか

今回のTOPIX改革では、市場区分と株価指数を分離することが大きなテーマとなっています。従来のTOPIXは、東証1部(市場区分)に上場する全銘柄がそのまま株価指数に採用されるという、国際的にみても異質な状態にありました。これだと企業が東証1部に上場してそれを維持する限り、いわゆるパッシブ運用や日銀のETF(上場投資信託)購入にともなう資金が無条件で流れ込むことになります。

こうした買いは時価総額の規模が小さい企業ほど株価へのインパクトが大きいため、一部の企業に経営規律が働きにくくなるという問題が指摘されていました。また、成長力の乏しい企業も含まれた株価指数は、資金の運用先として適切でないといった声も多いのが実情です。

今後は、例えば企業が経過措置によってプライム市場への上場という「看板」を維持できたとしても、TOPIXの構成銘柄には採用されない可能性が出てきます。成長性や流動性に問題がある企業は、世界的なパッシブマネーの獲得という「実利」を得られなくなるわけで、株価指数による選別を通じて企業の意識変革をいっそう促す効果が期待できます。

TOPIXで構成銘柄のウエートを決める際には、「浮動株」の比率がひとつの基準となります。発行済み株式から大株主の保有分や自己株式などの「固定株」を除いたものを指すという点では、浮動株も流通株と同様です。ただし、浮動株は株価指数の算出に日々利用されるため、算出者にある程度の裁量が与えられることになっており、流通株に比べれば定義が厳格ではありません。

今回の改革では浮動株の定義が見直され、従来は含まれていた「政策保有株」も浮動株から除外されることとなりました。政策保有株とは他の上場企業が保有する株式のことであり、定義見直しの背景に、いわゆる持ち合い株の解消をテコ入れする目的があることは明確です。

一部の市場関係者は、持ち合い株の解消が進むことで、結果として割安株に脚光が当たるきっかけになると期待を寄せています。株価が割安に放置されている銘柄のなかには、政策保有など安定株主の存在が変革を妨げてきたものも多いと考えられます。それらの企業が本気で経営変革に取り組むことで、従来は無視されていたような銘柄も有望な投資対象になり得る、というわけです。その意味では、TOPIX改革が株価指数だけでなく、個別銘柄の魅力向上にも一役買うことになるのかもしれません。

他方、TOPIX改革についてもやはり「物足りない」という指摘があります。見直し作業が終了した段階で、TOPIXにはなお1500程度という多めの構成銘柄が残りそうだからです。指数の連続性を保つために、銘柄数を極端に絞り込めないという事情があることも確かですが、それならばせめて銘柄の入れ替えは頻繁に実施すべきではないでしょうか。

時価総額上位100社の創業からの平均社齢をみると、中国が30歳未満、欧米が60歳代なのに対して、日本では約80歳となっています。プライム市場やTOPIXが国際的な投資資金の受け皿として真に機能するためには、新陳代謝が進む市場設計に本気で取り組み、成長性の高い企業が育ちやすい環境を整えることが喫緊の課題といえそうです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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