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いま聞きたいQ&A

インデックス運用について、改めて着目すべき点を教えてください。(後編)

人々が抱く「株価指数=株式相場」というイメージ

インデックス運用が連動を目指す「指数」とは、具体的に何を意味するものなのでしょうか。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数を例にとって考えてみます。

「株価指数は株式市場の平均値である」とか、「インデックス運用は株式市場をまるごと買うことである」という言い方をよく耳にしますが、これは正確な表現ではありません。株価指数は、株式市場の全銘柄の値動きを反映しているわけではないからです

例えば今年(2021年)7月16日の時点で、東京証券取引所に上場している企業数は3788社ですが、このうち日経平均株価に採用されているのは225銘柄のみ。TOPIXを構成している東証1部上場企業も2192銘柄です。米国の代表的な株価指数のひとつ、ダウ工業株30種平均にいたっては、たった30銘柄で構成されているに過ぎません。

にもかかわらず、株価指数は「株式市場の全体的な動きの目安」として、人々の間で広く認知されているようです。その証拠に、日々のニュースでは日経平均株価やTOPIX、ダウ平均の動きによって日本株および米国株の好不調が伝えられ、ほとんどの人がそれを素直に受け入れています。

株式市場の全体的な動きを「株式相場」と呼ぶならば、「株価指数は株式相場である」と表現した方が、人々のイメージに近いのかもしれません。

こうしたイメージが高じると、何が起きるでしょうか。いま一般個人でも、投資信託やETF(上場投資信託)を通じて世界中のさまざまな株価指数に低コストで投資することが可能です。結果として、世界中の株式相場を見ながら「次に上がりそうなところ」を物色し、株価指数から株価指数へ資金を移していくような投資が増えたとしても不思議ではないでしょう

あるいは、日本株だけに投資したい日本人なら、こう考えるかもしれません。「日本株相場が上昇している間は株価指数への投資を続けておいて、相場が下落に転じたら売ってしまおう。また上昇傾向が見えてきた段階で、すぐに買い直せばいいのだから」

かくして株価指数に連動するインデックス型の株式投信は、株式相場の変動局面で短期売買に利用されやすくなると考えられるのです。

配当の再投資や積立方式の活用が意味を持つ

改めて冷静に眺めると、株価指数とは数ある株式銘柄のなかから特定の銘柄を選び出し、パッケージのようにまとめて、それらの値動きを平均化したものであることが分かります。株価指数に連動するインデックス型の株式投信は、見方を変えれば「投資する銘柄数が非常に多く、なおかつそれらのほとんどが長期にわたって固定され続けるアクティブ型の株式投信」と言うこともできそうです。

株価指数を市場平均や株式相場に類するものではなく、単なる株式銘柄群とみなした場合、私たちのインデックス運用に対する考え方は変わってくるのではないでしょうか。まず着目したいのは、株式銘柄群から得られる配当を再投資に回すことで、複利運用の効果が生じる点です

日経平均株価は今年2月16日に終値で3万467円を付け、30年半ぶりの高値を記録しました。ただし、それでもまだ1989年末のバブル時に付けた3万8915円という史上最高値からみれば、8割に満たない水準です。

一方、日経平均株価の配当込み指数にあたる「日経平均トータルリターン・インデックス」を月次でみると、20年11月末時点でバブル時の最高値を超えています。つまり、日経平均株価は配当込みで考えれば、すでに史上最高値を更新しているわけです。

一般的なインデックス型の株式投信では、自動的に配当が再投資に回されます(ETFは自動的に再投資できません)。私たちが日経平均株価に連動するタイプのインデックス型投信を購入すれば、運用成績には当然、配当が加味されることになります。

さらに、同タイプのインデックス型投信をバブル崩壊後の90年1月から毎月同額ずつ、積立方式で購入したと仮定すると、20年末には資産額が累計積立額の2.4倍まで増えた計算になります。これは定期定額購入により、平均購入単価の低減効果が働いた結果です。

過去30年あまりにわたって、日経平均株価は大きく下がった後に大きく上がるという、積立投資には理想の値動きをみせました。したがって、同じような効果が他の株価指数にもあてはまるとは限りません。

ただ、いずれにしても私たちは、インデックス運用においても配当の再投資や積立方式の活用が大きな意味を持つことを、改めて再認識しておく必要があるのではないでしょうか。経費率の低さに加えて、こうした基本的な投資手法がもたらす効果にも意識を向けたとき、おのずとインデックス運用が長期投資に向いていることに気付くはずです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。