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いま聞きたいQ&A

株式市場の現状について、できるだけ分かりやすく教えてください。(後編)

コロナ禍でバブルを容認する空気が醸成されている?

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて菅義偉首相は2021年1月7日、東京と神奈川、埼玉、千葉の1都3県に緊急事態宣言を発令しました。続いて13日には大阪や愛知、福岡など新たに7府県が加わり、対象地域は11都府県まで拡大しています。民間エコノミストの予測によると、日本の1~3月期の個人消費は従来予測から1兆円程度の下振れが見込まれており、同期における実質国内総生産(GDP)成長率は再びマイナスとなる見通しです。

そんななかでも日経平均株価は1月8日に2万8139円と、1営業日の終値としては30年ぶりの高値を付けました。米国のダウ工業株30種平均も連日最高値を更新し、7日から8日にかけてはドイツやインド、ブラジル、韓国などで代表的な株価指数がいずれも史上最高値を記録するなど、「コロナ禍の株高」は世界的な広がりを見せています

株価上昇の直接的な要因としては、米国で民主党が大統領と上下両院の過半数を握る「ブルーウェーブ」が実現し、バイデン次期政権による追加の経済対策へ向けて期待が高まったことが挙げられます。並行して米国では20年12月、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数が8カ月ぶりに減少へ転じました。雇用回復の遅れからFRB(米連邦準備理事会)がしばらく低金利政策を続けるとの臆測も強まり、いわゆる流動性相場に拍車がかかった格好です。

市場では株価の現状について、実体経済から乖離(かいり)したバブルと見なす声も多く聞かれます。本当にバブルなのかどうか、真偽のほどは定かではありませんが、すでに気になる兆候はいくつか確認されています

例えば今日の株高に対しては、社会全般にバブルへの認識や批判が以前よりも薄いといわれています。コロナ危機によって一部の業種や中小・零細企業にかかわる人々の苦境が長期化しており、それらに対する配慮が重みを持つことで、緩和的な政策やそれがもたらす資産価格の上昇を容認する空気が醸成されているとも考えられます。

過去の株高局面では、いわゆる「資産効果」によって個人消費が活性化されるという図式が一般的でした。今回はコロナ禍で消費が低迷するなか、そうした経済効果は表れず、むしろ金融資産を持つ人と持たざる人の間で富の格差が拡大する方向にあります。この点から見ても、現状の株高は実体経済から離れたマネーゲーム的な要素が強いと言えそうです。

ワクチンの普及が早すぎても遅すぎてもリスクに

とりわけ危惧されるのは、そんなマネーゲームに個人も便乗している気配が濃厚なことです。米証券業金融市場協会(SIFMA)によると、米国の株式市場における個人の売買高シェアはこれまで10%程度で推移してきましたが、最近では推計で約25%まで上昇しています。

コロナ禍で「巣ごもり」を余儀なくされ、消費の機会が乏しくなるなか、米国では一般個人が失業者向け給付金の一部を株式投資に振り向けたり、借り入れで株式購入を膨らませるケースも見られるとのこと。米証券当局は株式相場が崩れた際に投資の初心者が予期せぬ損失を被り、社会問題化することを警戒しています。

日本でもコロナ禍をきっかけに株式投資を始める個人が増えているもようですが、現状のように株価の上昇がすでに相当程度まで進み、バブルも意識されているような局面では、さしあたって何に注意を払えばいいのでしょうか。

市場で危機が勃発した際に、大きな痛手を被る投資家は2つに大別できると言われます。ひとつは危機前に楽観論へ傾斜しすぎて、リスクを取りすぎてしまったタイプ。もうひとつは、想定外の出来事に恐怖を感じるあまり、相場の急落時に「投げ売り」に走ってしまうタイプです。すなわち株式投資においては、相場を読んで過度に強気になるのでもなく、相場に振り回されて過度に弱気になるのでもなく、常日頃から急変に備えてどれだけ心の準備をしておけるかが大切ということになります。

例えば当面の懸念材料として、金融緩和の出口が一気に近づく事態を警戒する声が増えています。ワクチンの普及によって経済が好転すれば、21年内にもテーパリング(量的緩和の段階的縮小)があり得るといった指摘が、FRB内部からも出てきました。リスクに敏感な市場参加者の間では、「どこで上昇相場から降りるか」のチキンレースがすでに始まっているという見方もあります。

ワクチンの普及と景気回復が早すぎてもリスクになるわけですが、想定より遅れた場合にはさらにダメージが大きくなりそうです。ワクチン普及の大幅な遅れや重大な副作用の顕在化は、現状の株価にそれほど織り込まれていません。一部の専門家は、ワクチンによる感染抑制がうまくいかないケースでは10~30%程度の株価調整があり得ると予想しています

コロナ禍という終わりの見えづらい特殊要因がさまざまな影響を及ぼすなか、株式市場では今後しばらくの間、一般の個人投資家にとっても難しい相場環境が続きそうです。その難しさを実感することで、私たちにはいまから心の準備を進めることが求められているのかもしれません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。