1. いま聞きたいQ&A
Q

コロナ後の投資について、何かヒントになる考え方はありますか?(前編)

日本の個人の資金が米国株に向かい始めた

新型コロナウイルス感染症の拡大が経済や社会、ひいては人々の生活様式に大きな変化をもたらすなか、「投資の在り方」についても興味深い変化が見られるようになってきました。

例えば日本の個人投資家の間では現在、米国株への投資が広がりつつあります。日本の個人といえば元来、投資・運用に際してホームカントリーバイアス(自国資産への偏重)が強いことで知られていました。ところが今年(2020年)8月には、ネット証券大手3社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)における米国株の売買代金が19年12月の約3.5倍に拡大しており、ここにきて個別株、投資信託ともに「米国もの」の購入が目立つようになっています

8月末には、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株をまとめ買いしていたことが明らかになりました。バフェット氏はここ数年、「The American Tailwind」(米国株への投資で追い風に乗れる)という言葉を好んで使っており、その米国株に対する厚い信頼ぶりはずっと前から有名です。そんなカリスマ投資家による初の本格的な日本株投資がいったい何を意味するのか、いま市場ではさまざまな憶測が飛び交っています。

これら2つの変化が一過性のものなのか、あるいは構造的なものなのか、現時点ではっきりとしたことは分かりません。しかしながら、コロナ後の投資の在り方を考える上で、こうした明瞭な変化は私たちに何らかの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

日本の個人の資金が米国株に向かい始めた背景としては、まず米国株が身近な存在になったことが挙げられます。アップルやグーグルなど米国の製品・サービスが日本人の生活に浸透した上に、米国企業の情報も今日ではネットで容易に入手できるため、米国株への投資に以前ほど抵抗感がなくなってきました。ネット証券各社が19年に相次いで米国株の最低取引手数料を引き下げたほか、スマートフォンのアプリを使った株式購入サービスが登場するなど、実際に投資を始めやすい環境も整ってきています。

もうひとつ、コロナ禍で経済のデジタル化が加速していることも大いに関係しています。在宅勤務をはじめとするテレワークや巣ごもり需要などの拡大を受けて、IT(情報技術)企業はいわば社会インフラとしての地位を確立し始めており、その存在価値やさらなる成長性への注目が改めて高まっています。大型のIT銘柄やハイテク銘柄が主力の米国株式市場は、コロナ・ショックによる下落からの回復局面でも大きな上昇を記録しました。

GAFAM(グーグル(運営会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)など、特に成長期待の高いIT企業を中心に構成されるナスダック総合株価指数は、今年6月10日に初めて終値で1万ポイントを突破。直近の安値(3月23日/6860.67)から高値(9月2日/12056.44)までの上昇率は76%に達しています。9月2日にはS&P500種株価指数も3580.84ポイントの史上最高値(直近の高値)を付け、同じく3月23日に付けた直近の安値からの上昇率は60%となっています。

正しく選び抜いて株式を購入することの難しさ

米国株は過去10年以上にわたって長期上昇相場を形成してきました。今年に入って米国株への投資を始めた人の多くは、米国企業が今後もさらに成長し、株価に上昇余地があると考える、いわゆるグロース(成長株)投資を志向していると思われます。米国景気が転換点を迎えつつあるなか、専門家の間では米国株相場の調整が近いという見方も増えており、グロース投資については従来以上に慎重な姿勢が必要かもしれません。

“グロース投資の雄”として知られる伝説の投資家フィリップ・フィッシャーは、「正しく選び抜いて購入した株式には、売り時などほぼ存在しない」と考えました。景気動向や株価水準などにかかわらず、企業の将来的な成長に確信が持てるかどうかが重要であり、だからこそ株価が十分に高くなったことは売る理由にならないし、買いを控える理由にもならないというわけです。

フィッシャーの思想に従うならば、たとえ近い将来に米国株相場が調整局面を迎えるとしても、それを乗り越えてこの先10年、20年と成長を続ける米国の個別株を選んで持ち続ければよいことになります。問題は、一般個人にフィッシャーのような投資ができるかという点でしょう。

日本の個人にも人気が高い米国の個別株として、例えば電気自動車のテスラやオンライン会議システムのズーム・ビデオ・コミュニケーションズがあります。19年末と今年9月29日の株価を比較すると、前者が約5倍、後者は約6.8倍まで上昇しています。

今年に入ってからの株価急騰には、両者への将来的な成長期待が相当程度まで織り込まれているはずです。さらなる株価上昇には市場の予想を超える成長が必要であり、一般個人にとってはそれほどの成長を的確に見抜けるか、あるいは成長が実現するまで待てるかがポイントになってきます。日本株においてでさえ難しいこうした判断を、米国の個別株について行えるかといえば、答えは自明ではないでしょうか。

一方で、インデックス型投信などを通じて米国の株価指数に投資する個人も増えています。こちらは調整が近いといわれる相場そのものへの投資ですが、今後の展望をどのように考えればよいのか、次回はその話を中心に、引き続きコロナ後の投資のヒントを探ります。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

目次へ戻る