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いま聞きたいQ&A

高騰する金価格の現状から見えてくることを教えてください。

国内の金小売価格が40年ぶりに最高値を更新

金価格に関して今年(2020年)、歴史的ともいえる注目の出来事がありました。日本国内の金小売価格が1980年の過去最高値を40年ぶりに更新したのです。

国内の金小売価格(単位グラム)は、ドル建て(単位トロイオンス)の国際金価格を円・ドル為替レートに基づいて円建て価格に換算し、そこに消費税を加えて決められます。ドル建て価格が変わらない場合、円安になると国内価格は上昇し、円高になると下落する関係にあるのは、他の外貨建て資産と同様です。

国内地金商最大手の田中貴金属工業が4月13日に公表した小売価格は1グラム6513円(消費税込み)で、消費税導入前の80年1月に記録した6495円を上回って過去最高となりました。その後も小売価格は上昇傾向にあり、7月15日には1グラム6909円と過去最高値をさらに更新しています。

相次ぐ記録更新の要因としては、国際金価格が高位で推移するなかで円安が進んだことが挙げられます。国際指標のニューヨーク金先物は、取引の中心となる「8月渡し」が7月8日に1トロイオンス1820.60ドル(終値)を付けました。これは中心限月の終値としては11年9月以来、約8年10カ月ぶりの高水準です。

11年9月当時、円・ドル為替レートは1ドル=76~77円台で推移していました。いわずと知れた超円高の時代です。その円高の影響をもろに受けて、国内の金小売価格はおおむね4000円台の後半にとどまっていました。今年7月の円・ドル為替レートは1ドル=106~107円台の水準なので、単純に考えると相対的に円安になった分、国内価格は上昇したということができます。

ただし、円安の局面でいつも国内価格が高くなるかというと、そうではありません

例えば5年前の15年7月には、円・ドル為替レートは月間平均で1ドル=124円台という、現在よりはるかに円安の水準でした。ところが国際金価格が平均で1100ドル台だったため、国内価格は平均で4500円程度のレベルにとどまったのです。

このように、従来は円安すなわちドル高になると国際金価格が下落する「ドルと金の逆相関」の関係が強かったのですが、ここにきてその関係に変化が生じています。ドル高の局面でも国際金価格は下がりにくくなっており、国内の金小売価格は現在、いわば国際価格の上昇と円安による上昇をダブルで受ける環境にあるわけです。

通貨の価値低下競争にいよいよ円も加わった?

ドル高でも国際金価格が下がりにくくなった背景として、さまざまな要因が指摘されていますが、なかでも特に注視しておきたいのは、世界の基軸通貨である米ドルへの不安や不信感が広がっていることでしょう

振り返れば08年のリーマン・ショック後にFRB(米連邦準備理事会)が大規模な金融緩和に乗り出して、ドル紙幣が世界中にばらまかれた結果、国際金価格は以降の3年間で約3倍に上昇しました。ここ数年では「ビットコイン」の価格が急騰するなど、金融市場で暗号資産(仮想通貨)の実現性を試すような動きも強まっています。新興国を中心に各国の中央銀行が外貨準備の一環として金の購入量を増やしているのも、ドル不信を示す象徴的な出来事といえます。

実は円と金の関係からも、同じような構図が見えてきます。ドル建ての国際金価格は11年9月に1911ドル台の過去最高値を記録し、それと前後してユーロ建てやポンド建ての金価格も最高値を更新しました。日本国内の円建て価格だけはそれらの動きに追随せず、80年の最高値が長らく君臨してきましたが、ついに今年、それが破られたわけです。

金が各通貨建ての過去最高値を更新するということは、逆にいえば、金に対して各通貨が過去最安値になったことを意味します。意地の悪い物言いをするならば、金を物差しとした通貨の価値低下競争に、いよいよ円も加わることになったと考えることができるのです。

田中貴金属工業が公表している参考小売価格(消費税抜き)によると、国内金の年平均価格は15年に4564円となり、その時点ですでに80年の過去最高値(4499円)を上回っていました。その後も17年が4576円、19年が4918円と過去最高を更新し続けています。これはドルやユーロの場合と同様に、日銀が大規模な金融緩和によって円の価値を薄め続けていることと無縁ではないでしょう。

通貨に対する不安や不信感は、一般に将来的なインフレを予想させますが、前回紹介したように今日では特に先進国においてインフレをイメージしづらいのが現実です。金価格を指標にすると、例えばそれは主要通貨の価値がおしなべて低くなり、マネーの国外流出が起きにくくなっているからかもしれません。国際協調による金融緩和にはそのあたりの計算も働いていると考えるのは、あまりにうがった見方でしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。