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いま聞きたいQ&A

投資信託を購入するにあたって、初心者はどのような選択をすればいいですか?(後編)

まずは「長期で積み立てる」と決めてしまうこと

投資経験の有無や多寡にかかわらず、一般個人の長期的な資産運用において株式投資が有力なツールになることは、異論のないところだと思われます。期待リターンが相対的に大きいことはもちろん、企業活動を通じた利益成長と価値創出が投資家に還元されるという仕組みは、リターンの源泉として非常に分かりやすく、長期的な資産運用の方法として理にかなっていると考えられるからです。

初心者が投信の購入を検討するにあたって、「株式投信」はまず外せない選択肢ということになるわけですが、例えば日本株投信にまつわる以下のような現実を知ったら、あなたはどう思うでしょうか。

投信評価会社モーニングスターのデータによると、代表的な日本株投信のなかで昨年(2018年)の1年間に基準価額が上昇したのは、わずか1本にとどまりました。運用残高が100億円を上回る公募型の日本株投信を対象に17年末と18年末の基準価額を比較したところ、149本のうち148本が下落し、運用成績を日経平均株価の年間騰落率(マイナス12%)と比べても8割弱が下回っていたということです。

昨年は7年ぶりに日経平均株価の年間騰落率がマイナスとなり、これまで上昇基調が続いてきた日本株相場は転機を迎えていると考えられます。日本株投信の運用が全般に不調だった主因をそこに求めるのだとしたら、個人投資家のなかには2つの疑問が湧いてくることになるでしょう。

  • (1)いま日本株投信を購入するべきなのか
  • (2)購入するのは日本株投信だけでいいのか

(1)については投資の初心者を中心に相場の先行きに対する不安が広がり、始めたばかりの投信の積み立てを手控えようかと悩む人も出てきている模様です。一方、まったく別の観点から同じ疑問を抱く人もいるかもしれません。これから相場の不安定化が進むのならば、もっと十分に下落するまで購入を待って安値を拾うべきではないかという見方です。

いずれの場合も、「長期で積み立てを継続する」と決めてしまうことで対処が可能です。投資助言会社イボットソン・アソシエイツ・ジャパンのデータによると、日経平均株価に連動するインデックス型投信に1989年1月~昨年9月(約30年間)、98年1月~昨年9月(約20年間)、08年1月~昨年9月(約10年間)という各期間で毎月同じ金額ずつを積み立てた場合、すべての期間で最終的な資産額が積立総額の1.6~1.8倍に増えています(税金・手数料は除く)

日経平均株価は89年12月29日に史上最高値の38,915円を付けた後、バブル崩壊を経て09年3月6日には直近の安値となる7,173円を記録。昨年10月1日には直近の高値にあたる24,245円まで上昇するなど、大きく上下動しています(株価はいずれも終値)。目先の相場に惑わされず長期にわたって積み立てを継続することにより、価格変動の荒波を越えて一定の収益をもたらす効果が期待できるわけです。

日本を含む先進国株指数に連動する投信が有力候補

(2)の疑問については、さまざまな意見があると思います。例えば前述のように、日本株投信だけでも長期で積み立てれば相応の収益が期待できるのだから、他の金融資産に投資する必要はないという考え方。反対に、少子高齢化が進む日本では経済の成長性が乏しいので、将来的なリターン水準の維持・向上を図るために、国外の株式で運用する投信も加えておきたいと考える人もいるでしょう。

「MSCIワールド指数」は日本を含む先進国の株価指数ですが、この指数に20年間および30年間にわたって毎月同じ金額ずつを積み立てたと仮定すると、90年12月末~昨年末のどの時点で換金しても、ほぼすべての期間で投資収益はプラスになります(配当込み、円ベース)。「09年2月末までの20年間」に積み立てた場合のみ投資収益はわずかなマイナスですが、この例外も含めて20年間の積み立てでは最終的な資産額が積立総額の平均2.3倍に、同じく30年間の積み立てでは平均3.5倍にそれぞれ増えることになります。リターンを年率に換算すると、いずれも平均7%程度です。

積立期間を20年以上という十分な長期間に設定できる人の場合、日本を含む先進国株に幅広く投資すれば、最終的に投資収益がプラスになる可能性は相当に高まります。期待リターンも、市場関係者が株式投資に求める年率(長期金利プラス5~7%程度)とおおむね合致しており、まず文句のない水準でしょう。初心者が最初に購入を考える投信銘柄として、MSCIワールド指数に連動するインデックス型投信などは有力な候補といえるのではないでしょうか。

将来のあらゆる投資環境に備えるため、国内外の債券で運用する投信や新興国株投信、さらにはREIT(不動産投資信託)なども購入して万全を期すべきという考え方もあります。ただし、今後は世界的に金利が上昇に向かう可能性があるため、債券は投資妙味が薄いと指摘する専門家もいるなど、これらの金融資産は初心者にとって取り扱いがいささか難しいかもしれません。ある程度、投資に慣れてからそれぞれの投信タイプの購入を検討しても遅くはないような気がします。

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