1. いま聞きたいQ&A
Q

株式投資を行うにあたっては、数学的な能力も必要なのでしょうか?(後編)

日本株相場の下落期間は相対的に短い

過去に日経平均株価が大きく上下動した局面について、いまいちど数値で振り返ってみます。まず上昇については、前回紹介したようにバブル期の1985年から89年末にかけて4年で3倍になったほか、21世紀に入ってから大きな上昇トレンドが2度ありました。ちなみに後者は、ボックス相場から上昇相場への転換が鮮明になった時期を起点としています。

  • ●2003年の安値~07年の高値(4年2カ月)=2.4倍に上昇
  • ●12年~18年の高値(5年2カ月)=2.6倍に上昇

一方の下落については、次のような局面が代表的です。

  • ●1989年の高値~92年の安値(2年8カ月)=下落率63%
  • ●2000年の高値~03年の安値(3年)=下落率64%
  • ●07年の高値~09年の安値(1年8カ月)=下落率61%

興味深いことに、日経平均株価が大きく下落する際には、それに要する期間が上昇時に比べて意外と短いことが分かります。すなわち日経平均株価には、ある程度長い期間をかけて大きく上昇し、相対的に短い期間で急落するという傾向がうかがえるわけです。

もう少し大きな視点で世界の株式市場をながめると、21世紀に入って以降は日経平均株価の下落のほとんどが海外要因によるものであり、そうした要因に対して世界中の投資家が細かくリスクオン・オフを繰り返すという傾向があります。最近でも、米国の利上げ動向や米中による貿易摩擦、欧州の政治混乱、中東および北朝鮮情勢などに世界の投資マネーが右往左往するという、相変わらずの状況が続いています。

以上のことを踏まえながら、いずれはやってくる株式相場の下落局面に備えるための方策を、私たちはそろそろ真剣に考えておくべき時ではないでしょうか。長期的な資産運用の観点からみると、株価の下落時は次の上昇相場へ向けて新たな投資を仕込むチャンスと捉えることができます。特に下落のきっかけが海外要因だった場合、円高などによって日本企業の本来的な実力以上に株価が下がることもままあるため、割安に株式を購入できる機会は多いはずです

ただし、前述のように日経平均株価(日本株相場)の下落期間は相対的に短いので、それほど悠長に構えていられるわけでもありません。どこかの時点で「買い場」を決めることと、そこで実際に投資できるだけの資金を前もって用意しておくことが重要になります。

売り場は少し早いぐらいでちょうどよい

その際、新規の投資資金として現金を用いてもいいのですが、手持ちの株式や投信の一部を売却して投資資金に充てる方法もあります。注意したいのは、上昇相場が続いた後の成熟~調整~下落局面において売却の決断を下すことは意外に難しいという現実です

例えば、ある投資家がAという日本株投信を基準価額1万円で購入し、当初の目標とする価額が1万5,000円だったとします。首尾よく価額が上昇して1万5,000円になった時、日本株相場の上昇がまだしばらく続きそうなため、この投資家は新たな目標値として基準価額2万円を設定したとしましょう。このとき、投資家にとっての参照点(投資成果を評価する際に用いる基準値)が、当初は基準価額1万円でスタートしたものの、途中で1万5,000円にシフトしてしまうケースが結構多いのです。

その後、価額が1万3,000円まで下落した場合、当初の1万円からみればまだ十分にリターンが得られる水準にあるわけですが、1万5,000円という新たな参照点からみるとマイナスになるため、そこで投信を売却することは投資家にとって「損切り」の感覚が強くなりがちです。当初の目標値がはっきりしていない場合でも、相場の上昇トレンドが長期化するなかで手持ちの株式や投信の「売り場」を逃してしまい、相場が成熟局面に入った後もずるずると持ち続けてしまうことは珍しくありません

今年(2018年)6月7日現在、日経平均株価の終値は2万2,823円で、直近の高値だった1月23日の2万4,124円と比較すると5%強の下落です。ここにきて株価には再び上昇傾向が見られるため、この先、高値を更新する可能性もないとは言い切れません。

しかし、前もって下落リスクを回避しながら次なる投資資金を用意するという資産運用上の大きな目的に照らすならば、高値から5%程度の下落で収まっている現状は売り場として十分と考えることもできるでしょう。参照点のような心理的問題に振り回されないためにも、一般的に売り場は少し早いと感じるぐらいでちょうどよい気がします。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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