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いま聞きたいQ&A

投資や運用の合理性について、どのように考えればいいですか?(前編)

プロセスとしての投資行為が合理的かどうか

投資は端的にいえば「結果論の世界」なので、その成果についてはある程度の時間が経過してみないと分かりません。特に長期で資産の形成や運用を考えている人にとっては、成果が判明するのは数年後あるいは数十年後ということになります。その意味では、投資のゴール(最終地点)に到達するまではすべてが途中経過であり、プロセスとしての投資行為が適切かどうかについても、やはり結果が出てみないと分からないわけです。

一方、投資は数値との関係が深い「論理の世界」でもあるため、投資行為が本当に適切かどうかはさておき、それが理にかなっているかどうかを判断することは可能です。なかには例外的に非合理な投資が成果につながるケースもあるかもしれませんが、私たちが将来的に満足できる成果を得たいと願うならば、プロセスとしての投資行為が合理的であるに越したことはないでしょう。

こうした観点からみた場合、一般個人が行っている投資には、首をひねってしまうものがいささか目立つような気がします。問題点は主として次の2つではないでしょうか。

  • (1)「日々の投資状況は単なる途中経過である」と割り切ることができない。そのため値動きの大きさや一時的な損失を必要以上に気にかけ、少しでも自分が安心できるような投資状況をつくって維持したいと考える。
  • (2)将来的なリターンの拡大よりも、目先の小さくても安定したリターンや心の平穏を優先する。結果として長期運用の観点からは非合理な投資行為を選択し、リターンを得る機会をみすみす逃したり、短期売買を繰り返すような事態に陥りやすい。

分かりやすい例として、わが国における投信(投資信託)の利用状況を改めて振り返ってみましょう。かつて人気を誇った「毎月分配型」の投信は、金融庁が「顧客本位ではない商品」と批判したこともあり、このところすっかり影が薄くなりました。しかしながら、当の個人投資家が金融庁の批判内容を理解していたのかというと、はなはだ怪しいと言わざるを得ません。

毎月分配型の問題点は、まず月々の分配金という形で運用益の一部を頻繁に払い戻すことにより、長期運用の利点である「複利効果」が十分に効かなくなること。さらには商品間で分配金利回りの大きさを競う動きが激化したため、運用益を分配金に回すだけでなく、元本を取り崩して分配金に充てる投信も目立つようになったことです。

高齢者を中心に、なぜ多くの個人投資家が毎月分配型投信を支持したのか――。預貯金よりもお得に見える分配金利回りに誘われて、なかば小遣い稼ぎのような感覚で何となく購入した人も一定程度はいると思います。その人たちにとっては複利効果のことなど最初から眼中になかったことでしょう。

もう少し「ひいき目」に見るならば、長期にわたって投資資金のすべてを値動きのリスクにさらし続けるのは怖いという心理が働いていたのかもしれません。だからこそ、複利効果よりむしろ投資の果実がこまめに現金化されること、すなわち定期的な利食いを安心で好ましいものと感じた。たとえそれが一部では勘違いや幻想にすぎなかったとしても、です。

値動きを恐れるあまり、当初の趣旨から逸脱していく

最近ではNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)での運用に向く商品として、「バランス型」投信の人気も高まっています。この投信の魅力は、国内外の株式や債券、不動産などへの分散投資を通じて、中長期で安定的なリターンを期待できること。

なかでも「アセットアロケーション型」と呼ばれる変動タイプは、相場状況に応じて株式や債券への投資比率を機動的かつ大胆に変更するため、株式相場の下落が続くような局面でリスクを抑える効果が高いといわれています。半面、上昇相場で大きなリターンを獲得するのは難しいようですが、個人投資家にとって下落時の変動率が小さいという特徴は安心感につながるため、とりわけ大きな魅力として映るのかもしれません。

しかし、バランス型の本来的な意義を考えると、このアセットアロケーション型には矛盾する点もあることに気付きます。値動きの性質が異なる複数の資産に“バランスよく”投資することで、長期的にはどのような相場環境にも対応できる柔軟なポートフォリオ(資産構成)をつくるというのがバランス型の趣旨であり、目的でもあります。そのためには、例えば国内外の株式と債券に25%ずつ投資するというような、十分にバランスの効いた状態を長く続けなければ意味がありません。

相場状況に応じて各資産への投資比率を大胆に変更するというのは、いわば複数の資産を対象としたアクティブ型投信にあたるものであり、バランス型投信の利点を自ら薄めてしまっているような気がします。投資家が短期的な値動きの大きさを恐れるあまり、当初の趣旨や目的から逸脱した投資行為を選んでいるのだとしたら、それもやはり非合理といえます。

こうした投資や運用における非合理を避けるためには、どうすればいいのでしょうか。非常に難しい問題ですが、次回はそれについて個人投資家の心構えを中心に考えてみたいと思います。

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