1. いま聞きたいQ&A
Q

ソトー巡る買収合戦で注目、TOBって何?

「米系ファンドがTOB価格を引き上げ」「会社側が引き上げで対抗」――。株式市場で東証第2部上場の毛織物染色加工会社、ソトーを巡るTOB合戦が加熱しています。日本の株式市場を舞台にした本格的なTOB合戦は初めてのことで、株式市場関係者は事の成り行きを固唾を飲んで見守っています。

では、にわかに注目を集めているTOBとはそもそも何なのでしょうか。TOBは英語の「Take Over Bid」の頭文字を取った略語で、日本語では「株式公開買い付け」と訳されます。ある企業の株式を大量に取得したい場合に、新聞広告などを使って一定の価格で一定の期間に一定の株数を買い取ることを表明し、不特定多数の株主から一挙に株式を取得する方法のことです。株数が目標に達しない場合には、買い付けをすべて取り消すことができるなど、購入希望者にとって使い勝手のいい株購入の手段です。

米国では企業を買収する際の手段として広く利用されていますが、同じ買収目的のTOBでも「敵対的なTOB」と「友好的なTOB」では大きな違いがあります。敵対的TOBというのは買収される側が株の買い集めに同意していないにもかかわらず、一方的に株式の買い付けを宣言する場合です。これに対して友好的TOBは、被買収企業が株式の購入に同意して協力的なケースで、M&Aなどをする際によく利用されています。

TOBを使う目的は買収だけではありません。これまで日本で最も多かったのは、企業が自社株を購入するのに使うケースです。株式買い付けの期間や条件を事前に公表することで、インサイダー取引規制に触れることを回避できるからです。最近では、企業が上場しているグループ会社を完全子会社化するためや、グループ外の企業を傘下に収めるために株式を購入するなど、事業再編に活用する例が増えています。2004年1月27日付日経金融新聞1面の「TOB最多、狙いも多彩」という記事は、2003年の国内企業に対するTOBが52件、買い付け金額は1兆738億円と過去最高だったと伝えています。

ソトーのケースがこれだけ注目されているのは、日本で初めての本格的な敵対的TOBだからです。米国系の投資ファンドであるスティール・パーオナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドがソトーにTOBをすると発表したのは2003年12月のこと。これに対してソトーは2004年1月15日、大和証券系のエヌ・アイ・エフベンチャーズ(NIF)と組んで現経営陣による企業買収(MBO)で対抗する意向を表明しました。スティールが当初提示したTOB価格は1150円。これに対してNIF側は1250円での株購入を申し出て、TOB合戦が始まりました。その後、スティール側は買い付け価格を1400円に引き上げ、それを見たNIF側がさらに価格を見直す方針を打ち出すなど、買収合戦は日を追って過熱しています。この間、ソトー株は800円台半ばから、2004年2月5日時点で1435円まで急騰しました。

日本でこれまで敵対的なTOBがなかったのは、多くの企業が強固な株式の持ち合いによって身を固め、TOBに応じる浮動株が少ないと思われていたのが一因です。また、経営陣の意向を無視したTOBは「株の買い占め」というイメージが強く、買われる側に大きな抵抗があり、たとえTOBに成功してもその後は円滑な経営が難しくなると思われたのも理由です。

しかし、株式持ち合いは1990年代後半から大きく崩れ、企業経営者の意識も経営効率を重視するようになって、事業の売却や合併・買収(M&A)に対する抵抗は薄れてきました。本来、株式市場では割安と思われる株を買おうとするのは当然の行為で、買い手が誰であれ、それを止めることはできません。本格的なTOBの登場は、日本の株式市場が当たり前に機能するようになってきたことの表れとも言えるでしょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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