米国は国際収支表での経常収支の赤字(経常赤字)と、政府財政の赤字(財政赤字)という二つの問題を抱えるようになっています。最近、ニュースなどで見かける場合は、このことを指す場合が多いようです。
まず、基本的なことから確認しましょう。
各国が共通の方式で計算する「国際収支表」は、誤差脱漏や外貨準備増減などを除いて大きく分けると、貿易収支、サービス収支などで構成する「経常収支」、投資収支などで構成する「資本収支」という二つの項目から成り立っています。つまり、財・サービスの移動を示す経常収支と、資金の流れを示す資本収支の両面から対外取引を見ることが出来るものです。
米国の2002年の経常収支は、5034億ドルの赤字で前年に比べ28%増え、過去最大を更新しています。
一方、財政赤字は、2003会計年度(2002年10月~2003年9月)に過去最大の3000億ドルを上回る見通しですが、対イラク武力行使に伴う戦費負担が加わることで、さらに膨らむのは必至です。
米国の双子の赤字が注目されるのは1980年代以来のことです。
90年代にはニューエコノミーとも呼ばれた長期の好景気によって財政が黒字になり、貿易の赤字があっても余り問題になりませんでした。
米国では財政赤字を他の部門の黒字でまかなえない状態にあります。
これは国内貯蓄が不足していることに呼応しています。不足するお金は海外から集めなければなりません。これまでは、世界中で最も投資のチャンスがあるのは米国と言われてきましたので、その不足分の調達に苦労することはありませんでした。
最近は米国への資金流入が細ってきて、ドルが他の通貨に比べて安くなっています。そのため、世界経済への影響を伴わずに双子の赤字をいつまで続けることができるのか、このことを心配する声も出てきています。