1. いま聞きたいQ&A
Q

外貨建て資産へ投資する際の着目点を教えてください。

通貨によっては為替手数料の影響大

今年(2021年)に入って円・ドル為替レートは円安・ドル高基調が続いており、今後も当面は緩やかな円安傾向を予想する声が多くなっています。為替変動リスクの点から見れば、現在は日本の個人が外貨建て資産への投資を手がけやすい時期といえるのかもしれません。

ただし、米ドル以外の外貨建て資産に投資する場合は当然のことながら、その通貨と円についての為替変動リスクを考える必要が出てきます。また、為替変動リスク以外にも利回りやコストの計算など、外貨建て資産には何かと分かりにくい要素がつきまといます。今回は2つの事例を取り上げて、外貨建て資産に投資する際の着目点や注意点を整理してみたいと思います。

一つ目は、証券会社などで取り扱っている高金利の外国債券に投資するケースです

ある証券会社が販売しているトルコリラ建ての既発債券を見てみましょう。商品情報によると額面が10000トルコリラ、利率は年8.00%で、今年5月21日現在の参考価格は額面金額の83.27%、利回りは年15.84%、残存期間は約2年9カ月となっています。利率よりも利回りが大きいのは、発行後に債券価格が下落したため、その価格で購入して満期償還まで持ち切ると、償還時に戻ってくる額面金額との差益もリターンとして加わるからです。

円・トルコリラ為替レートは過去1年間では一時的に円安・トルコリラ高が進んだ局面もありましたが、3~5年の中期や10年以上の長期では、基本的に円高・トルコリラ安の傾向が続いています。年率で15%を超える利回りは非常に魅力的ですが、過去の傾向からみて償還までに為替が円高に振れる可能性は否めず、為替リスクの懸念は避けられそうにありません。

さらに注意したいのは、この証券会社ではトルコリラ建て債券の購入時と償還時(あるいは売却時)に1トルコリラ当たり1.5円ずつ、すなわち往復で3円の為替手数料がかかるということ。5月21日の時点で為替レートは「1トルコリラ=12.9円」ですが、往復3円を為替レートに換算すると「3÷12.9=0.23」となり、実に23%にも相当します。すなわち、保有期間中の為替レートが一定だと仮定しても、この外債への投資では為替手数料だけで利回りの1年分超が失われる計算になるわけです。

同じ証券会社で米ドル建て債券に投資する場合の為替手数料は、1ドル当たり往復で0.5円です。為替レートに換算した比率は「1ドル=110円」なら0.45%にすぎず、為替手数料が運用に及ぼす影響はトルコリラ建ての場合より大幅に小さくなります。このように為替手数料の水準は通貨によって異なるほか、同じ通貨でも金融機関によって異なるケースがあるので、事前に比較・検証が必要です。

為替ヘッジが有効な通貨を探してみる

もう一つの事例は、海外の株式や債券で運用する投資信託の購入にあたって「為替ヘッジあり」のコースを選ぶケースです

為替ヘッジ(回避)には、外貨建て資産に投資する段階で、将来の換金時にその通貨をいくらで売るかを決めて予約する方法(為替予約)が用いられます。換金時に実際の為替レートがどれだけ円高になろうとも、事前に予約したレートで外貨を円に戻せるため、文字どおり為替リスクを回避することが可能になります。

為替予約のレートは、例えば1年後に換金する場合、日本と相手国(投資国)における期間1年の金利にしたがって、円と相手国通貨でそれぞれ1年間運用した際の損得が同じになるように決まります。そのため、日本より金利が高い国の通貨を1年後に売って円に戻す予約レートは、金利差の分だけ現在の為替レートよりも割高(円高)に設定されることとなります。

これがいわゆる「ヘッジコスト」と呼ばれるもので、私たち日本の個人が外債投信などの運用において為替ヘッジありコースを選ぶと、ヘッジコストによってせっかくの高金利も相殺されてしまうのが一般的です。ところが興味深いことに、現在は基軸通貨である米ドルに関してヘッジコストがゼロに近いという例外的な状況が続いています

外債投信などの運用会社が実際に為替ヘッジをかける場合、為替予約は通常1カ月程度の短期で行って繰り返し更新していきます。米国では新型コロナへの対応策として20年3月から事実上のゼロ金利政策を導入しており、日米ともに現状は短期金利がほぼゼロの状態にあります。つまりは為替予約を短期で行うかぎり、短期金利差に基づく米ドルのヘッジコストもゼロに近くなるわけです。

新興国でも、例えば南アフリカの短期金利は4年前の17年5月には7%ありましたが、現状は3.5%まで低下しています。投信などの運用対象のひとつである10年国債利回りは8.9%台で推移しており、ヘッジコストを差し引いても南アフリカランド建て債券への投資妙味は残ります。相対的に為替変動リスクの大きい新興国への投資では、短期金利と長期金利の差を見ながら、為替ヘッジが有効な通貨を探してみるのも一考ではないでしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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