• いま聞きたいQ&A
  • いわゆる「逆張り」の投資戦略は、効果が期待できるのでしょうか?
いま聞きたいQ&A

いわゆる「逆張り」の投資戦略は、効果が期待できるのでしょうか?

株価急落時の買いは1年後の利益につながりやすい

ひと言で「逆張り」といっても、その意味をどのように捉えるかによって内容は異なってきます。ここではまず、金融用語として使われる一般的な意味の逆張りについて考えてみましょう。

一般論としての逆張りとは、株式相場の下落局面で買いを入れて上昇局面で売るという具合に、あたかも相場の大きな流れに逆らって動くような投資手法を指します。実はこの手法、日本の個人投資家にとってはお家芸ともいえるものです

日経平均株価は今年(2020年)3月19日に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて年初来安値となる1万6358円19銭(終値)を記録し、3月の月間下落率は10%超に達しました。ところが東京証券取引所の投資主体別売買動向をみると、その3月中に個人は日本株を8454億円買い越しています。これは18年10月以来、1年5カ月ぶりの大きな買い越し額に当たります

18年10月は米国で長期金利が上昇したのをきっかけに、日米の株価がそろって下落基調となった時期です。日経平均株価の月間下落幅は2199円とリーマン・ショック直後の08年10月以来、10年ぶりの大きさでしたが、その1カ月間にも個人はやはり日本株を1兆円以上買い越しました。

さらに遡ると、英国が国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めた16年6月や、日銀がマイナス金利の導入を発表した同年1月など、日経平均株価が大きく下落した月に個人の買い越しが膨らんだ例は、過去に多数見られます。こうした逆張り戦略は、実際に一定の投資成果につながった可能性の高いことが統計的にも確認されています。

リーマン・ショック後の08年10月から今年10月26日までに、日経平均株価が前日比5%以上の下落を記録した日のうち、1年後の株価が検証できるケース(19年10月26日までが該当)は21回ありました。各日の終値で日経平均株価に連動するインデックス型投信を購入したと仮定すると、1年後に利益が出たケース(*)は実に20回にも上ります。このうち17回では利益率が10%を超えており、21回を単純平均した上昇率も20%と高い数字になっています

(*)日経平均株価が上昇したケース(手数料等の影響は除く)

低PBR時の投資ほど5年後の株価上昇率は高くなる

投資・運用の世界で1年間というのは短期に相当するので、上記のデータでもってすぐに、逆張りが長期の資産運用に効果を発揮すると言い切ることはできないでしょう。そこで、もう少し長い期間についても違った角度から検証してみます。

株価の割安度を示す指標の一つに、PBR(株価純資産倍率)があります。このPBRが低い時期の投資ほど、5年後の株価上昇率が高くなるという傾向がデータによって示されています。

例えば2000年1月以降の日経平均株価について、毎月末のPBRの水準ごとに株価の推移を調べると、PBRが0.9~1.0倍台の場合には、5年後の株価がおおむね1.5~2倍以上に上昇していました。一方でPBRが2.5倍以上の場合には、5年後の株価がおおむね1倍以下(下落)となっており、その差はいたって明瞭です。

このようにPBRが低い時期の投資が5年程度の中期で報われやすい傾向は、米国株指数や新興国株指数についても同様に確認されています。一般に「安く買って高く売る」ことが投資の基本と言われますが、統計的な見地からはむしろ「安く買うからこそ高く売れる」という言い方がふさわしいのかもしれません。

さらに角度を変えてみましょう。市場で支持されているトレンドを少なからず疑ってみることも、ある意味では逆張りと考えられます。例えば、ここ数年で隆盛を誇っているインデックス運用は、誰にも低コストの投資機会を提供してくれるという点で、利便性が非常に高いことは確かです。しかし、投資家が「従来の期待リターン」を前提とした上で、低コストがもたらす効率を最優先してインデックス運用を選んでいるのだとしたら、そこには落とし穴がありそうです

世界経済の成長率が低下するなか、特にリーマン・ショック以降は金融市場が何らかのショックに見舞われても、各国中央銀行の緩和策などを通じて金融環境が下支えされる状況が続いています。株式や低格付け債券など、いわゆるリスク資産の変動率は相対的に低く抑えられ、結果として投資から得られるリターンも低水準にとどまりやすくなっています。

いまなお収束のメドが立たない新型コロナウイルスの感染拡大は、社会や産業、ひいては企業に大きな構造改革を迫りつつあります。インデックス運用が連動を目指す各種の株価指数には、変革によって新たな成長が期待できる企業だけでなく、逆に収益機会を失うであろう企業も多く含まれています。

こうした現状を踏まえると、今後は市場平均+αの超過リターンを目指すアクティブ運用が、再び注目されることになるかもしれません。効果のほどは現時点では分かりませんが、低成長時代における逆張りの選択肢の一つとして、運用力に定評のあるアクティブ型投信をリストアップしてみるのも一考ではないでしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。