1. いま聞きたいQ&A
Q

コロナショックから私たちが学ぶべき資産運用の教訓とは何でしょうか?

バランス型投信の基準価額が大幅に下落した

経済関連のニュースで「レバレッジ」という言葉を目にしたことがあるかと思います。本来は「てこの原理」という意味ですが、経済および金融の世界では、借入金などを利用して投資や経営における利益率を高める方法を指します。実は今回、新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、このレバレッジにまつわる興味深い出来事がありました。

2019年に最大のヒット商品となった投資信託の基準価額が、2月から3月にかけて急落したのです。その投信は日興アセットマネジメントが運用する「グローバル3倍3分法ファンド」(以下「3倍3分法」)で、18年10月に設定され、投信分類ではバランス型に属しています。1年決算型・隔月分配型という2つのコースが用意されており、両コースを合わせた資金流入額は19年に5276億円と、公募型投信のなかでトップでした。

バランス型投信といえば一般に、短期間で大きなリターンは望めないものの、リスクを抑えながら長期で安定的にリターンを期待できることが特徴とされています。「3倍3分法」は国内外の株式と債券、REIT(不動産投資信託)に投資する点では通常のバランス型投信と同じですが、先物取引を活用して3倍のレバレッジを効かせ、元本の3倍分にあたる投資を実行します。

すなわちバランス型の仕組みはそのままに、獲得リターンを通常の3倍まで拡大することで、従来のバランス型投信につきものの「利益率の限界」を打ちやぶろうという狙いがあるわけです。ただし当然のことながら、それはかぶる損失も通常の3倍に広がることを意味します。

19年末に1万2771円だった「3倍3分法」の基準価額は、20年2月21日には1万3604円まで上昇していましたが、そこから大幅な下落に転じ、3月19日には8,559円という設定来安値を記録しました。4月に入って基準価額は再び1万円を超えましたが、一時的な急落の要因として、コロナショックの影響により株式と債券、REITのいずれもが同時に大きく下落したことや、相場環境が急変する局面でも資産配分比率を変えない設計であることなどが指摘されています。

ひとつの運用手段に期待できる効果は限られている

ここで改めて、私たち一般個人がバランス型運用を行うことの意義について考えてみたいと思います。

バランス型運用とは、いわば各金融資産の将来的な相場状況が予測できないことを率直に受け入れ、そうした不確実性に対処するために生み出された手法です。各金融資産の値動きが読めないからこそ、例えば国内外の株式と債券の4資産に25%ずつ、均等にバランス良く長期間投資を続けることで、将来的にどのような相場環境になっても対応できる体勢を整えておく――。それこそがバランス型運用の本来的な意義であり、王道といえるものではないでしょうか。

王道のバランス型運用では、確かにリスクは相対的に低く抑えられるものの、リターンもそこそこのレベルにとどまるケースが多いのもまた事実です。そこで各金融資産への投資配分に偏りを持たせたり、投資対象に国内外のREITを加えたり、はたまた先物取引でレバレッジを効かせたりと、リターンを底上げするためのさまざまな工夫が試されてきたわけです。ただし、そのように手を加えることで、バランス型運用の本来的な意義がゆがめられてしまう可能性も否定できません。

ちなみに「3倍3分法」の資産配分は、3倍のレバレッジをかけたうえで株式60%、REIT40%、債券200%というもの。債券部分が全体の3分の2を占めており、王道のバランス型運用と比べても保守的な資産配分といえます。信託報酬も年0.484%(税込み)と相対的に低く、長期運用に向いた投信と評価する声も少なくありませんが、なにぶんレバレッジを効かせているがゆえに、一時的な下落率は他の一般的なバランス型投信よりも大きくなりがちです。

また、今回のコロナショックを通じて基準価額の下落が小幅にとどまったバランス型投信には、機動的なリスク管理手法を導入している商品が多いという指摘もあります。つまり、相場環境の悪化時に株式やREITの組入比率を引き下げて、運用リスクを意図的に低くすることが可能な設計だったからこそ難を逃れたという見方です。

機動的なリスク管理といえば聞こえはよいのですが、これはタイミング投資を行っていることにほかなりません。王道のバランス型運用がわざわざ4資産に25%ずつの投資を固定するのは、まさしくタイミング投資の弊害を排除するための苦肉の策であることを考えると、運用の途中で資産配分比率を大きく変えるのは、本来の目的に逆行しているといわざるをえないでしょう。

できる限り低リスクで高リターンを求めようとする個人投資家も、そうしたニーズにできる限り応えようとする運用会社も、目先のリスクやリターンをコントロールしたいという欲求や、コントロールできるという幻想にとらわれ過ぎているような気がします。

ひとつの投信商品に、あるいはひとつの運用手段に期待できる機能や効果は限られているという当たり前の現実を、私たちはいまいちど冷静に受け止める必要があるのではないでしょうか。逆にいえば、だからこそ積み立て投資など時間分散の重要性がクローズアップされてくるわけです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

目次へ戻る