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いま聞きたいQ&A

「良い投資信託」とはどういうもので、それを選ぶ方法があれば教えてください

定性評価まで踏み込まないと真の実力は分からない

前回に引き続き、今回もどのように解釈するかという点にこだわりながら話を進めてみようと思います。結論からいうと、私たち一般個人が厳密な意味でより良い投資信託(投信)銘柄を選ぶのは、極めて難しいのが現実です。投信は初心者でも手軽に投資を始められる金融商品といわれていますが、良質な商品を選ぶのが難しいという側面においては、決して手軽ではないことを心しておくべきでしょう。

より良い投信銘柄とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。一般個人がこれから数十年というタームで投資を計画する場合、良質な投信とは「将来的に投資環境がどのように変化しても、その時々で相対的に優れた運用成果を期待できる商品」という解釈が成り立ちます

そのような商品にアプローチするひとつの方法として、できるだけ長期の運用実績を持つ投信を選ぶべきという意見があります。過去10年~20年の長期にわたって相応の運用成果(リターン)を残してきた投信ならば、すでにさまざまな投資環境を経験し、それらに如才なく対応してきたはずだから、将来的にも同様の柔軟な運用が期待できるだろうと考えるわけです。

過去の一定期間におけるリスクとリターンの関係を比較して、運用の効率性という観点からアプローチする方法もあります。日本株など投資対象が同じ投信同士の比較が前提となりますが、リターンをリスクで割って求める「シャープレシオ」という指標を用いると、取ったリスクに見合うリターンを上げた効率的で隙のない投信がどれなのか判断することが可能です。

モーニングスターなどの投信評価会社では、シャープレシオをはじめリターンやコスト、純資産など複数の項目ごとに投信を相対評価し、ランク付けしています。これらは投信を多角的に比較するのに役立ちますが、注意しなければならないのは、あくまでも公表されている数値データに基づいた「定量評価」の情報にすぎないということ

例えばアクティブ型の株式投信では、ファンドマネージャーが個別株を取捨選択しながら分散投資を行い、その結果が一定期間内のリターンとして数字に表されます。一方で、ファンドマネージャーがある時点でなぜA株を買い、B株を売ったのかという投資判断にあたる部分については基本的にブラックボックスです。いわゆる「定性評価」の情報が欠けているわけで、これではファンドマネージャーの運用能力が実際に優れているのか、あるいはマグレも多く含まれているのかを投資家が見抜くことはできません。

裏を返せば、本当の意味でより良い投信銘柄を選び出すためには、定量評価によって候補となる複数の投信を絞り込んだうえで、それらすべてに対して一般個人が自らの手で定性評価を行う必要があることになります。これは「初心者でも手軽に投資を始められる金融商品」という投信の一般的な定義に大きく反するのではないでしょうか。

指数構成銘柄は長期的な投資対象としてふさわしいのか?

定性評価を行う意志も能力もない個人がアクティブ型投信を購入した場合、実際の運用をその道のプロにお任せできるという点ではなるほど手軽ではあります。しかし、お任せする相手の真の実力が分からないままに資金を投じることとなり、何とも中途半端な状態で投資が実行されているという解釈が成り立ちます。

その中途半端さが気になる人は、少なくとも自分が注目したいくつかの投信銘柄については、すでに可能な範囲内で自分なりの定性評価を行っているはずです。こうしたいわばマニアックな行為を突き詰めていくと、最終的には投信に関してまた新たな解釈が生まれてくるような気がします。つまり、定性評価まで目を配るぐらいなら、自分で自分だけの投信(分散投資ポートフォリオ)をつくってしまう方がてっとり早いし、投資の納得度も高いのではないかという考え方です

反対に、アクティブ型投信の運用力が判別しづらいのであれば、最初からインデックス型投信を無条件で選んだ方がむしろ納得できるという人も多いことでしょう。市場をまるごと買うという行為は、すべてが相場次第という他力本願ではあるものの、少なくとも前述した中途半端さとは無縁のように感じられます。

ここで考えてほしいのは、インデックス型投信が連動を目指す指数もやはり、複数の銘柄を集めたパッケージにすぎず、そのパッケージが本当に意味あるものなのかどうかは分からないということです。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)の構成銘柄を、どこかのファンドマネージャーが選んだ銘柄群と仮定した場合、インデックス型の日本株投信を「非常に投資銘柄数の多いアクティブ型の日本株投信」と解釈することも可能でしょう。

機械的な運用であるがゆえにコストが低く抑えられる点は、一般個人が長期投資を目指すうえで大きなメリットとなることは確かです。しかしながら、より良い投信銘柄を選ぶという観点に立つならば、インデックス型投信が連動を目指す指数の構成銘柄として「なかば長期にわたって固定される銘柄群」が、本当に長期的な投資対象としてふさわしいのかどうか、もっと十分に検証されて然るべきだと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。