1. いま聞きたいQ&A
Q

投資信託は、本当にもうからない金融商品なのでしょうか?

銀行顧客の半数近くが損失を抱えていた?

金融庁が今年(2018年)6月末に公表した投資信託に関するデータが、ちょっとした波紋を呼んでいます。投信を販売する都銀や地銀の合計29行を対象に18年3月末時点の運用損益を調べたところ、投信を購入した顧客の46%が損失を抱えていることが明らかになったのです(投信で損失、個人の半数 金融庁調査、7月4日付 日本経済新聞)

この調査では、①運用損益別の顧客比率②預かり残高上位20商品のコスト・リターン分布③同リスク・リターン分布(②と③については5年年率)という3つのデータが成果指標として公表されました。金融庁では個人が投信の運用成績を比較できる物差しとして、販売会社である金融機関に成果指標の自主的な情報開示を期待しており、もしも公表しなければ、そのことも個人が金融機関を選別するための重要な情報になると考えている模様です。

今回の調査について業界関係者の一部からは、「あくまでも一時点の経過を切り取ったもので実態を反映していない」という声が上がっています。運用損益の計算対象は3月末時点で顧客が保有している投信に限られ、すでに売却した投信は対象外になっているため、例えば基準価額が上昇して顧客が売却した結果、売却益が出たようなケースは計算に含まれないことになります。

確かに一時点での運用成績は個人の購入時期によって変わってくるし、一括投資か積み立て投資かといった投資手法によっても数値は大きく変わります。金融庁としては調査データを用いて、金融機関が投信販売にどこまで顧客本位の姿勢で取り組んでいるかを測る狙いがあるようですが、少なくとも運用損益別の顧客比率については一律に解釈するのは難しいかもしれません

個人にとって参考になりそうな興味深いデータもあります。調査では投信の保有期間と運用収益の関係も分析され、保有期間が長期になるほどリターンを得やすいという傾向が浮かび上がってきました。また、運用期間中の定期的なコストにあたる信託報酬の高低が、運用収益の大きさとは必ずしもリンクしないことも判明しています。

信託報酬は何のために支払うのか改めて考えたい

一般に日本の個人は、投信運用において2割程度のリターンが出ると売却して利益を確定する人が多く、投信の保有期間は平均で2~3年程度といわれます。これについては販売会社が手数料収入を優先して個人の短期売買を助長しているという批判も根強いわけですが、一方で個人が投信の効果的な活用法をきちんと理解していない、あるいは理解しようとしない現実もあるのではないでしょうか。

個人がどちらかというと短期主義に走りやすい背景として、例えば運用の途中で含み損を抱えることを必要以上に嫌う性質が関係しているように思われます。要するに、自分の運用資産が価格の上下動を繰り返しながら時間をかけて大きく育っていくのを、気長に待つことができないのです

今年8月末までの過去5年間において日経平均株価の月末値をその前月末値と比較すると、上昇した月数は36、下落した月数は24でした。1カ月単位の短期投資としてみると、4割はマイナスだったことになります。ところが同じ期間中に日経平均株価は年率11.30%の上昇を記録しているので、日経平均株価に連動するインデックス型投信を5年間保有し続ければ、十分なリターンを得られたことが分かります。

経済学者のポール・サミュエルソン氏はかつて、「株式投資はカンバスの絵の具が乾くまで待つような退屈なものだ」と語りました。大和住銀投信投資顧問の苦瓜達郎シニア・ファンドマネージャーも、割安株投資の極意について次のように説明しています。「市場が放置している銘柄に投資するのだから、自分の都合で急いではいけない。やはり株式を買ったら上がるまでじっと待つというのが基本になる」。長年の経験に基づく専門家たちの見方に、私たちはもっと目を向けるべきなのかもしれません。

投信の信託報酬は毎年かかるコストなので、運用期間が長期になるほど収益に及ぼす影響は大きくなるといわれています。これはまさしくその通りで、投信運用における大前提と考えてもいいでしょう。ただし当然のことながら、リターンの大きさがコストだけで決まるわけではありません。

投信評価会社モーニングスターの「ファンドランキング」で、日本株投信の今年8月末時点における過去10年間のリターン実績(年率)をみると、上位にランクされている投信はいずれもアクティブ型で、信託報酬は年1.6~2%程度のものが多くなっています。ここ数年、インデックス型の日本株投信が信託報酬0.1%台の低コスト競争を繰り広げていることを考えると、コストはずいぶん割高に感じますが、それに見合うだけの大きなリターンを上げている投信も確かに存在することが分かります。

信託報酬に関してはもうひとつ、何のために支払うのかという視点も大切でしょう。例えば最近、「損失限定型」と呼ばれる投信に注目が集まっていますが、このタイプは信託報酬がおおむね年1%前後で、想定リターンは年率1.5~2%程度のものが多いようです。株式の想定リターンは年率5~7%程度といわれますが、インデックス型の日本株投信では信託報酬が0.1%台であり、より高いリターンを期待できる株式投信の方が劇的に信託報酬が低いという、いわば逆転現象が起きていることになります。

結果として損失限定型の投信では、リターンを削ってまでリスクをコントロールしてもらうことにそれ相応のコストを支払うことになるわけで、投資・運用という観点からみると本末転倒のような気がします。投信を「もうかる金融商品」として使いこなすために、私たちが改めて考えたり工夫すべき余地はまだまだ大きいのではないでしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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