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Q

米国の利上げと為替相場の関係について、注目点を教えてください

市場はFRBによる利上げの限界を意識し始めた

東京外国為替市場の円・ドル相場は、今年(2018年)7月5日17時の時点で1ドル=110円65~66銭という水準にあります。今後の相場動向については、米中貿易摩擦の影響から18年内に105円超の円高が進むという見方がある一方で、FRB(米連邦準備理事会)による利上げがドル上昇を促して114円程度まで円安が進むという見方もあり、専門家の間でも意見が大きく割れているのが現状です。

為替相場の動きが読みづらいのは相変わらずのことですが、当面は上記のような関係に沿って相場が動くと考えていいのではないでしょうか。すなわち、貿易摩擦や新興国からの資金流出、中東情勢の緊張など世界的なリスクが顕在化した場合にはリスク回避の円高が進み、米国の利上げが加速して日欧との金利差が拡大し、ドルの相対的な投資魅力の高まりが強く意識された場合には円安が進むという図式です

リスクの顕在化については予測が難しいので、ここではまず米国の利上げについて考えてみます。FRBは6月13日に今年2回目となる利上げを決め、政策金利を0.25%引き上げて1.75~2.00%としました。その際、18年内の想定利上げ回数を従来見通しの3回から4回に増やして、年内にあと2回の利上げ実施をほのめかしています。19年にも3回の利上げを予定しており、金融引き締めのペースは主要先進国のなかで断トツの速さです。

米商務省が発表した5月の個人消費支出(PCE)統計によると、FRBが重視するPCE物価指数は前年同月比2.3%と、6年2カ月ぶりの大きな上昇を記録しました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率も約6年ぶりに2%台に乗せたほか、米国では失業率が3.8%と18年ぶりの水準にまで下がっており、利上げの加速を後押しする条件はそろっているといえます。

ただし、最近になって見逃せない問題が浮上してきました。FRBは6月の時点で、景気を冷やさず過熱もさせない「中立金利」を2.9%に設定しています。毎回の利上げ幅が0.25%ずつだとして今後、FRBが予定通りに利上げを進めていくと、19年半ばごろには中立金利の水準に達する公算が大きいため、市場は早くも利上げの限界を意識し始めている模様です

米国の政策金利が1965年から2000年まで平均7%超あったことを考えると、利上げが3%程度で打ち止めとなるのは不可解な気もしますが、結局は21世紀に入って以降、先進国に共通してみられる「経済病」に米国も直面しているというのが実情かもしれません。潜在成長率の低下や債務負担の増大、人口高齢化などによって米国経済の基礎体力が落ちており、過去の利上げ局面に比べると利上げへの耐久力も落ちているため、FRBはいわば手加減せざるを得ないというわけです。

こうした市場の見立てが正しいならば、FRBによる利上げが円売り・ドル買い(円安)を促す力は思いのほか弱いことになります。このところ世界経済の先行き不透明感から投資家はリスクに敏感になっており、何らかの事件をきっかけにリスク回避の円買い(円高)が進む可能性の方がむしろ高いともいえそうです。

次回の危機発生時は米国経済にとって試練になる?

注意しておきたいのは、ここまでの話はあくまでも短期的な見通しにすぎないということです。一部の市場関係者が指摘しているように、中長期的には再び世界規模の金融危機が発生する懸念もあります。その際には為替の動向はもちろん、世界経済がどのような状況に陥るのか、まったく想像がつきません。

冒険投資家のジム・ロジャーズ氏は「次の金融危機は、我々の生きている間で最悪のものになる」と語っています。08年に発生したリーマン・ショックと金融危機後の量的緩和によって、日米欧などの国・中央銀行が抱える債務は前代未聞の規模にまで膨らみました。前回の危機では中国が巨額資金の出し手となり、結果的に世界を救った格好となりましたが、現在はその中国でさえ債務を抱えており、もはや有事の救世主役を期待するのは難しそうです。

その意味でも、前述した「米国の利上げ限界説」は大きな問題をはらんでいます。将来的に景気が悪くなる局面に備えて、中央銀行は金利を上げられるときにできるだけ上げておきたいものでしょう。戦後の景気後退局面でみると、FRBは平均5%強も利下げして経済の底割れを防いできた歴史があります。もしも今回の利上げ局面でそこまでの緩和余地を確保できないとしたら、次回の危機発生時は米国経済にとって試練になるような気がします

もしもドルが急落するような事態に陥ったとき、ドルに代わって買われるのはどの通貨でしょうか。その日までに日欧が金融緩和で膨らませた債務を縮小し、金利面で緩和余地を十分に確保できていると考えるのは、いささか楽観的すぎるように思われます。ならば円やユーロが積極的に選ばれる理由は乏しいわけで、為替相場の行方はいよいよ混沌としてくるかもしれません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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