1. いま聞きたいQ&A
Q

「つみたてNISA」について、どのように評価すればいいですか?

月初の株価上昇で表面化した積み立て投資の影響力

今年(2018年)1月から、積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」がスタートしました。金融庁の肝煎りで導入された、いわば初心者向けの投資優遇税制ですが、その評価については何かと意見が分かれるところかもしれません。

日本経済新聞社が主要な証券会社やメガバンクなど大手11社に対して行った聞き取り調査によると、つみたてNISAの口座申込件数は今年1月末時点で合計37万8,000件でした(「積み立て投資に勢い NISAやiDECO、150万口座 若者『手軽さ』支持」日本経済新聞、2月25日)。14年にスタートした「一般NISA」では、同年1月末時点の口座申込件数が主要証券10社だけで300万件弱に達しており、それに比べるとつみたてNISAの出遅れぶりが目立ちます。

ただし、口座申し込みの内訳は興味深い結果になっています。金融庁によると、つみたてNISAの口座は新規開設が62%を占めており、一般NISAからの切り替えは30%にとどまるとのこと。世代別でも20~40歳代が7割にのぼり、若年層を中心に投資の未経験者や初心者を呼び込んで長期の分散投資を促すという当初の目的は、ある程度達成されたとみてよさそうです

実はここにきて、日本の個人の間では積み立て投資が急速に拡大しつつあります。つみたてNISAと同じく積み立て型の投資優遇税制である個人型確定拠出年金「iDeCo」や、一般NISAにおける積み立ても合わせると、積み立て投資の口座数はすでに全体で150万件を突破しています。

こうした傾向はつみたてNISAが始まる以前から顕著となっており、それが株式市場にも一風変わった影響をもたらしています。各月の第1営業日の日経平均株価(終値)が、16年7月から今年2月まで20カ月連続して前営業日より上昇したのです。3月には連続記録が途切れたものの、月初にだけ株式を買う投資家が存在する証しではないかと、市場の話題になりました

例えば証券会社を通じて積み立てで投資信託を購入する個人の買い付け日を調べると、毎月1日(月初)が最も多くなっています。買い付け日を月替わりに設定することで口座への入金忘れを防ぐなど、個人投資家が利便性を考慮した結果と思われますが、積み立て投資の無視できない影響力が株価上昇を通じて図らずも表面化した形といえそうです。

投資における1つのステップを提供するという意味

今後の注目は、積み立て投資の本丸ともいえるつみたてNISAがどこまで広がるかという点でしょう。つみたてNISAの大きな特徴は、投資対象が金融庁によって長期の資産形成に適していると認められた投信やETF(上場投資信託)に限られていることです。今年3月19日時点で金融庁が投資適格としている投資対象は、指数に連動するインデックス型の投信が127本、アクティブ型の投信が15本、ETFが3本の合計145本で、全体の約9割をインデックス型が占めています。

投資対象が特定のタイプに偏っている現状について、投信業界には「インデックス型の長期積み立てが唯一絶対の投資手法だと誤解されかねない」などの懸念を表明する向きもあります。本稿でもかつて、一般NISAの非課税期間が恒久化される可能性が残るなか、あえて投資金額や投資対象が限定されたつみたてNISAの存在価値はどこまであるのか、といった趣旨の内容を紹介しました(「各種の投資優遇税制を選ぶ際のポイントを教えてください」いま聞きたいQ&A、2017年2月1日)。その印象はいまだに変わりませんが、最近の積み立て投資の拡大ぶりをみるにつけ、投資における一つのステップを提供するという意味では、こうした形態もあり得るのかなという気がします。

未経験者や初心者にとっての「投資の入り口」という役割を考えると、運用の仕組みが分かりやすくコスト(信託報酬)も低いインデックス型投信が中心になるのは自然な成り行きではないでしょうか。そもそも日本の個人の間には「投信は商品数があまりに多すぎて、どれを選べばいいか分からない」という声がずいぶん以前からありました。結局のところ、そのような意見に投信業界は自ら応えることができず、代わって国が「お勧めの投資先」を選んで個人に提出した格好です。

国の推奨モデルをきっかけとして新たに投資を始める個人が増え、投資経験を積むなかで他の投信や個別株などにも興味を持ち、少しずつ投資対象の範囲を広げたり、投資対象を見直してみたりする――。そんな流れが生まれるならば、投信業界にとっても悪い話ではないでしょう。インデックスかアクティブかといった議論は、投資の本質にかかわる正論であることは確かですが、これから投資を始めようという初心者にとっては余計な雑音にすぎないかもしれません。

一方で、投信をめぐってはまったく別の動きもあります。今年1月~2月に資金流入額が大きかった投信をみると、上位10本中5本を自動車関連とロボット関連のいわゆるテーマ型が占めていました。売買タイミングが投資成果を大きく左右することで知られるテーマ型が、いまだに手を変え品を変え登場して人気化するところに、日本の投信業界と個人投資家の問題があるのではないでしょうか。そんな現状に一石を投じてくれることを、積み立て投資の拡大には期待したいと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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