投資信託は市場平均に投資するインデックス型を選ぶべきなのでしょうか?
インデックス型投信は個別銘柄のパッケージ
私たち個人投資家は、いったい何のために投資信託(投信)を買うのでしょうか。大きな観点でいうならば、答えは「自分の資産を増やすため」でしょう。それでは、もう少しフォーカスを絞って改めて問います。私たちは自分の資産を増やすために、どうして投信を買うのでしょうか。
まず考えられる答えは、多くの人にとって投資対象となる銘柄を自分で選ぶ(決める)ことが難しいからです。例えば株式投資なら、個別株の選択や入れ替えといった実際の運用行為を、その道のプロに代行してもらうのがアクティブ型の株式投信ということになります。対して、あらかじめ複数の個別株がパッケージされたものがインデックス型の株式投信です。
一般に、インデックス型の投信を買うことは「市場平均を買うこと」に等しいといわれます。日本株の市場平均として代表的なTOPIX(東証株価指数)を構成するのは東証1部上場の全銘柄(約2,000銘柄)であり、日経225(日経平均株価)を構成するのは定期的に入れ替えながら厳選された225銘柄です。米国のダウ工業株30種平均は、その名のとおり厳選30銘柄で構成されています。
私たち投資家側からみたインデックス型投信の意味合いは、市場平均をまるごと買える便利な商品というより、複数の個別銘柄がパッケージの状態で提供された分かりやすい商品という方がしっくりきます。どうしてこんな“まどろっこしい”話を持ち出すかというと、インデックス運用に関して投資家の間に思い込みや勘違いが広がっているように思われるからです。
一昨年(2015)年から2016年にかけて、日本の投信業界では手数料の引き下げ競争が激化しました。その主戦場となったのがインデックス型投信で、日経平均株価に連動するタイプにおいては、信託報酬が最も低いもので年0.180%(税抜き)まで下がっています。大幅なコスト低減が実現したのは、インデックス型投信が投資対象となる企業の調査・分析やそれに基づく投資判断などを省略し、決められた銘柄群の値動きに連動することを目指してひたすら機械的な運用を行っているからです。
インデックス型投信のコスト低減を受けて、一部の専門家や個人投資家の間では「長期の分散投資に適した商品がようやくそろってきた」と評価する声があがっています。確かに毎年の運用にかかる信託報酬が下がることは長期投資において有利だし、市場平均への投資を通じて自動的に複数の銘柄に分散投資できる点もインデックス型投信の魅力といえます。
日本株投信においては定説を覆すデータも
しかし、こうした機能性を喧伝(けんでん)する声はあっても、投資対象に関する議論がほとんど聞かれないのはなぜでしょうか。インデックス型投信が連動を目指す指数は市場平均と呼ばれてはいるものの、実際はある銘柄群の値動きにすぎません。あくまでも銘柄群は市場や運用側などの“誰か”が選定したものであり、それらの値動きは世界中の投資家がそれぞれの考えや思惑に基づいて個別銘柄を売買した結果なのです。
すなわち一般に市場平均と呼ばれているものは、人間の投資判断を排除した合理的な市場価格などではなく、極めて恣意的な投資家の投資行動の集積ということもできるわけです。このように考えると、インデックス型投信のメリットは市場平均に投資できる点よりも、むしろ少額から手間ひまをかけずに低コストで複数の銘柄パッケージに投資できるという、単純な使いやすさや分かりやすさにあることになります。
アクティブ型投信の信託報酬は、平均するとインデックス型投信の2.5倍程度にのぼります。投資家にとってはそのコスト分だけリターンが削られるほか、1人の運用担当者が相場に勝ち続けることも難しいため、アクティブ型投信のリターンは運用期間が長くなるほどインデックス型投信を下回りやすいというのが投信業界の定説です。
ただし、日本株投信においてはいささか状況が異なるようです。2005年末以前に設定された追加型の日本株投信について、昨年9月末時点で過去10年の平均リターンをアクティブ型とTOPIX連動のインデックス型で比較すると、年率で前者がプラス0.3%、後者がマイナス0.6%となり、アクティブ型が上回っています(ETFやDCおよびラップ専用商品は除く)。実質信託報酬の平均はアクティブ型が1.57%でインデックス型が0.65%。リターンは信託報酬などを控除した後の値なので、それでもアクティブ型が上回っているということは定説を覆すデータになっています。
もう一度、最初の問いに戻りましょう。投資対象が市場平均(と呼ばれるもの)であろうが、コストがどれだけ低かろうが、最終的な運用成績がプラスにならなければ自分の資産を増やすことはできません。アクティブ型にしてもインデックス型にしても、私たちが投信を利用する場合には運用を他人任せにしており、投資成果はどこまでも他力本願であることを忘れてはならないと思います。