11 「株式投資」が日本の企業を変えていく!
これまでの日本
日本人は貯蓄好きな国民であるといわれる。よく働き、コツコツお金を貯めてきた。
そのお金の多くは銀行に預金され、銀行はそのお金を会社に貸していく。お金を借りた会社は大きな仕事をして利益を上げていく。
かつて、第二次世界大戦後の「高度経済成長」といわれた時代では、これがとてもうまくいき、人々のお金が銀行を通じて大企業に回され、大きく発展していった。その反面、新しくできた実績のない会社は、銀行からなかなかお金を貸してもらえず、活躍するチャンスは少なかった、といえる。
新しい時代の幕を開けるためには、新しい企業にもお金を回し、新しい産業を切り開いて、企業を育てることが必要なんだ。
ベンチャー企業
アメリカでは、世界トップクラスのIT企業であるDellやGoogleなど、高校生や大学生のつくったという企業がたくさんある。
優れた技術や革新的な発想を武器にして、新しい産業を切り開こうとしている企業を「ベンチャー企業」っていう。アメリカでは「NASDAQ(ナスダック)」といって、こういう企業の株式が気軽に買えるような仕組みが整備されている。
NASDAQで取引される株式は、証券取引所ほど厳しい審査をクリアしたわけではないから、なかには経営状態のよくないものも混ざっている。だけどNASDAQのおかげで、未来を切り開く開拓者のような企業がたくさん成長して、アメリカ経済をリードするような大きな存在になっていったんだ。
こうした考え方に立って、日本でも、ベンチャー企業の株式を買えるようなしくみを整備して、世の中の人々から広くお金を集められる株式市場がつくられた。これを「新興市場」という。東京証券取引所に置かれている「マザーズ」や「JASDAQ(ジャスダック)」などがそうだ。
企業を見極める目が日本経済を変えていく
もちろん、新しいタイプの株式市場が生まれ、株式が上場されただけでは、企業が育たない。
投資する側が、株式投資への意義を認識して、企業を見る目を養っていかなければならない。
適切な判断で株式投資ができるようになれば、日本の経済・産業の構造をよりよい方向へ動かせるはずだ。
「本当に社会から必要とされるのはどんな企業か?」「これから成長していくのはどんな分野のどんな企業か?」・・・こういうことをしっかりと見極める。そして、期待に応えてくれそうな企業の株式に投資していく。
適切な株式投資が増えていけば、企業はいままで以上に努力し、株式と株主の重要性を認識する。優秀な企業が少しずつ育って、これからの日本経済を引っ張っていくような新しい産業も生まれていくはずだ。