1. いま聞きたいQ&A
Q

最近、日本株の上昇基調が続いているのはなぜですか?

業績相場で幅広い業種に買いが拡大

今年(2010年)3月31日に、日経平均株価は1万1,089円94銭という終値をつけました。2009年度の騰落率は36.8%のプラスとなり、年度あたりでは3年ぶりに上昇を記録したことになります。日経平均株価は特に今年の2月以降、上昇基調を強めており、年度明けの4月2日までに8週間連続して上昇しています。

世界の株式市場の中でも出遅れ感が強かった日本株にとって、直接の転機となったのは、2009年12月1日に日銀が追加金融緩和策を打ち出したことでした。これを受けて市場では、デフレ脱却へ向けて日本政府と日銀が積極的に動き始めたとの見方が広がり、日本株に対する強気な姿勢が目立ってきます。

今年に入ってからは円安が進行し、日本企業の業績改善も鮮明になってきました。3月には日銀がさらなる金融緩和を発表。4月には日銀短観で景況感の回復が確認され、米国の雇用統計にも明るい兆しが表れるなど、日本株に追い風となるニュースが相次いでいます。ようやく日本株を安心して買える環境が整ってきた、というところでしょうか。

今回の上昇に関して特に注目したいのは、自動車や電気機器など円安が有利にはたらく輸出関連の業種だけでなく、素材や部品といった幅広い業種にまで投資家の買いが及んでいることです。これは日本株が、いわゆる「業績相場」に移行したためと考えられます。

2008年秋のリーマン・ショックと金融危機以降、日本ではこれまで、大規模な財政出動や金融緩和によるカネ余りが顕著な「流動性相場」が続いてきました。こうした相場環境では企業業績の裏付けが乏しいため、例えば円安やエコ減税、補助金など、時どきのテーマに沿った特定の業種や銘柄に投資が集中しがちです。

証券各社では日本企業の業績について、2009年度は1ケタ~1割台の経常増益、2010年度は4~8割の経常増益とそれぞれ予想しています。株価の上昇ピッチが速いことや上昇銘柄数の多さから、相場の過熱感を指摘する声もありますが、リーマン・ショック前の株価水準と比較すると、日本株の回復レベルはまだ世界各国の株式市場に遅れをとっています。相対的な上昇余地がある、すなわち下値不安が少ないことも併せると、企業業績の改善に期待した日本株の買いは今後も膨らむかもしれません。

外国人が買い越すと日本株は上昇する

もうひとつ、外国人投資家の動向にも大いに注目が必要です。東京証券取引所が発表する株式売買動向によると、年金基金などに代表される外国人投資家は、2009年度に日本株を6兆円以上も買い越しました。一方で日本の個人や投資信託、金融機関など他の主要な投資主体はすべて日本株を売り越しています。この1年、日本株は外国人によって買い支えられ、今回の上昇も外国人によって演出されたといっても過言ではないわけです。

外国人が日本株相場を左右するという状況は、何もいまに始まったことではありません。1990年代以降、東京・大阪・名古屋の3市場において、証券会社を通じた委託売買注文に占める外国人投資家の比率はほぼ一貫して上昇傾向にあり、ここ数年は50~60%台で推移しています。そんななか、外国人が買い越した年にはおおむね日経平均株価が上昇するという関係が確立されてきました。

影響力の大きさを考えると、外国人の投資スタイル(姿勢)が、日本株の今後を占う上でひとつの参考になりそうです。例えば、一般に外国人は株価のトレンドを追って売買する「順張り」の傾向が強いといわれています。株価の上昇局面ではさらに投資額を増やし、下落局面では売りを継続することから、外国人の売買は一定期間、同じ方向で続きやすいという特性があります。

これは裏を返せば外国人がトレンドの潮目に敏感なことを意味します。今後はおそらく、日本企業の成長の持続性に焦点が当たってくるのではないでしょうか。それを示すことができなかった場合、せっかくの業績相場も上値の重い展開が続くことになりかねません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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