貸しはがしに明確な定義はないようですが、金融機関が企業に貸し付けている資金を、企業がいやだといっているのに回収してしまうこと(つまり返済を迫ること)を指しているようです。
おカネを貸すのが銀行の仕事のはずなのに、どうしてこんなことをするのでしょうか。
Q&A「公的資金投入とはいったい何ですか?」の欄でも説明しましたが、金融機関にとって貸付金は「資産」です。
金融機関は業務を行ううえで、「資産」に対する「資本」(株主から預かったおカネや今までの利益を積み立てたもの)の比率(自己資本比率と呼ばれます)を一定比率以上に高めることを求められています。
しかし、長引く経済停滞や地価下落によって、「資産」である貸出金の中から返済が滞るもの、利息や返済期限などの条件を緩和しなければならないもの、返済されない可能性がでてきてしまったもの(こうした資産、貸し出しのことを総称して不良債権と呼んでいます)が増えてきました。こうした不良債権を処理する過程では会計上、費用や損失がは発生、それを現在の利益だけでは穴埋めできず、資本も取り崩しているため、自己資本比率は悪化、つまり下がってしまいます。
分子の資本が減少しているなかで、自己資本比率を引き上げる方法は2つしかありません。
(1)新たに株式を発行して第三者に買い取ってもらい資本を増やすか、
(2)資産を圧縮するか、です。
貸しはがしは後者の資産圧縮の過程で生じています。
過去、政府は銀行の資本を増加させるために、公的資金投入を行ってきました。狙いは資本を増やすことで、企業が資産を圧縮しなくても自己資本比率を引き上げることができるようにするためでした。背景には企業への貸し出しが停滞して景気に悪影響を与えないようにしたいとの考えがあります。
事実、金融機関は公的資金を受け入れるときに、政府に対して中小企業向け融資の拡大などを約束しています。
ところが、実際は融資を増やすどころか、逆に圧縮しています。
「貸しはがし」という言葉には「ひどい仕打ち」という意味が含まれており、金融機関に対する不満が込められているようです。