1. いま聞きたいQ&A
Q

最近、銀行の自己資本比率という言葉をよく見ますが、どういう意味ですか?

自己資本とは株主が払い込んだ資本金や資本準備金のほか、過去に稼いだ利益を配当や取締役の賞与などに回さず内部に貯めてきた利益準備金などの合計のことを指します。
会社が万が一のときに備えるための蓄積ともいえ、その処理は株主総会で決めることになっています。基本的には株主のものに位置付けられており、最近では株主資本と呼ぶのが一般的です。
自己資本(株主資本)比率とは総資産に対する株主資本の割合を指し、この比率が高いほど経営の健全性が高いといわれています。
銀行の場合、国際的な金融機関や金融取引を監視、規制する国際決済銀行(BIS)が国際業務を行う銀行にとって必要な自己資本比率を取り決めています。

銀行は預金などで調達したおカネを企業向け中心に融資することで利ザヤを稼いでいます。
預金は負債(他人資本)であり、融資(貸出債権)は資産ということになります。
現在、日本の銀行では不況の長期化で、貸出債権の悪化(不良債権化)が進み、実際に債権の回収ができなくなったり、回収不能に備えて引当金を計上する必要がでています。こうした回収不能になった債権の発生や引当金計上は銀行にとって損失となります。損失がわずかであれば、正常な融資で稼ぐ収益や株式や債券の運用収益などでカバーできますが、損失額が多額になると、赤字を計上しなければなりません。しかし、大企業の倒産などでこの赤字額が膨らむと、これまで積み上げてきた自己資本を取り崩す必要がでてきます。株主のものである自己資本を減らす必要がでてくるということです。資産をよほど圧縮しない限り、自己資本比率も低下します。

日本の景気低迷の大きな原因には銀行の不良債権問題があります。
政府は銀行に不良債権の処理を加速するようにすすめています。
ただ、思いきった不良債権処理を進めると、銀行に損失が発生し、自己資本が減少することになります。減少した自己資本を増やすために、公的資金を注入し(要するに政府が銀行に出資し株主になる)、自己資本比率の低下を防ぐことが検討されているわけです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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