1. いま聞きたいQ&A
Q

公的資金投入とはいったい何ですか?
どこから来るおカネでどこに投入してどんな効果があるのですか?

公的資金投入とは政府がおカネを民間金融機関に入れることを指します。
具体的には、国債を発行した資金で、金融機関の株式を買い入れることです。

なぜ、国が民間金融機関の株式を購入するのでしょうか。
金融機関のバランスシート(貸借対照表)を利用して説明してみましょう。
バランスシートでは負債と資本(株主資本)の合計と資産と等しくなっています。
金融機関の資産の多くは企業への貸出債権(決められた額を決められた期日、方法で返済してもらう権利です)となっています。負債の多くは私たちが預けている預金であり、資本は株主が投じたおカネと今まであげた利益の一部を積み立てたものからなります。

長引く不況と地価下落で、金融機関の貸し出し先の中には借り入れの返済が滞るところが増えています。倒産してしまう企業も少なくありません。倒産してしまうと、金融機関はその企業から担保としてとっていた資産などを売却して貸出金を回収しますが、それだけでは足りないので、そうした事態に備えて積み立てていたおカネ(貸倒引当金)を取り崩して穴埋めします。貸倒引当金は貸出金の返済状況に応じて一定金額を積むことを求められているので、穴埋めで減った分を積み増さなければなりません。

貸倒引当金を取り崩すと、金融機関には損失が発生します。こうした損失は業務で補えるだけの利益をあげることができたり、株式や不動産を売却して利益をあげることができればいいのですが、損失が多額になれば、赤字決算をしなければなりません。赤字になれば、当然、これまで資本として積みたててきたおカネにまで手をつけなければならなくなっています。つまり、株主資本が減少するわけです。

一方、金融機関は資産に対する資本の割合を一定水準以上に維持することが求められています。資本を取り崩すとこうした基準を満たせなくなります。そもそも、株主資本の比率が低下すると経営が不安定になります。
そこで、金融機関に新たに株式を発行させ、公的資金で購入することで、金融機関の資本を拡充し、経営を安定化させようというのが公的資金投入なのです。

政府は1999年秋にも金融機関に公的資金を投入しました。
しかし、現在の金融機関の経営状況はその当時よりも悪化しています。経営に問題にある貸出先の整理せず、温存したうえ、そうした企業から金融機関がとっていた担保の価値が地価下落で一段と下がってしまったためです。経営に問題のある金融機関の整理を行わなかったことも影響しています。金融システムに対する不安が強まっていることが日本の景気回復の障害になっているとの見方は多く、金融システムを安定化させるためにも現在、公的資金再注入が議論されているのです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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