1. いま聞きたいQ&A
Q

投資信託の最新動向について教えてください。

新興国と毎月分配型に人気が集中

日本の投資信託(投信)には以前から、特定の種類のものに人気が集まる傾向が見られましたが、それにしても昨今の集中ぶりは尋常ではありません。

いつでも売買ができるオープン型株式投信について、ある投資情報会社が調べたところによると、2009年度における資金流入額(新規購入から解約と償還を差し引いた額)の5割が、いわゆるBRICs関連の投信によって占められる見通しです。BRICs各国の債券に投資する投信も分類上は株式投信となるため、その中に含まれています。

同じくオープン型株式投信の純資産残高においては、「毎月分配型」の占める割合が今年(2010年)1月末に初めて6割を超えました。これは昨年来、相次いで設定されて人気を呼んだ「通貨選択型投信」の大半が毎月分配型だったことによるものです。通貨選択型投信の中には米ドル建てで新興国債券に投資するものもあり、切り替え先の通貨は投信全体の7割近くがブラジル・レアルを選択している模様です。

こうして見ると、日本で購入されている投信が新興国投資型と毎月分配型にどれほど偏っているか、よく分かるでしょう。確かに経済の成長性からみれば、新興国の株式と通貨は将来的に大きな値上がりが期待できるし、金利の相対的な高さから新興国債券の魅力が大きいことも事実です。今後、私たちが運用資産の収益性を高めるためには、新興国への投資は不可欠と言ってもいいかもしれません。

自分の投資について意味を把握しているか

ただし、条件が2つあると考えられます。ひとつは、新興国への投資はあくまでも運用資産のごく一部で、なおかつ、できる限り長期でおこなうべきだということ。もうひとつは、毎月分配や通貨選択などの仕組みを含めて、自分がどのような投資を行っているのか、その意味をきちんと把握することです。

今、こうした条件をあえて強調しておきたいのは、投信の人気が偏っている背景として、以下のような個人投資家の事情や思惑が見てとれるからです。

  • ● 2008年秋のリーマン・ショックや金融危機による損失をいち早く取り戻すために、より大きなリターンが期待できる投資先に運用資金を移したい。
  • ● 先進国の国債などに投資する毎月分配型ファンドで分配金が引き下げられたため、より高い分配金を出しているファンドに運用資金を移したい。
  • ● 直接の投資先である高利回り債券の収益に加えて、「いまが旬」の新興国通貨による収益チャンスも同時に享受したい。

新興国の資産ならではのリスクとして、例えば市場規模の小ささを挙げることができます。日本を含む先進国と比較すると、新興国の市場規模は株式が4分の1、国債(自国通貨建て)が14分の1程度に過ぎません。このような市場では、資金の急激な流出入によって短期的に価格変動幅が大きくなる傾向があります。

通貨に関しても同じようなことがいえます。現在、日本と新興各国の政策金利には大きな差がありますが、こうした国の通貨同士では短期的に為替変動幅が大きくなる傾向が見られます。これは低金利通貨で資金を調達して高金利の新興国通貨に投資する、いわゆる「キャリートレード」を通じて、資金の流出入が一方通行になりやすいからです。

すなわち新興国の資産へ投資する場合には、一部の余裕資金を長期で運用しながら、将来的な市場規模の拡大による資産価格の高位安定や通貨の切り上げを気長に待つ、というスタンスが適しているといえるわけです。

また、毎月分配型へのニーズは依然として根強いようですが、経済合理性から見た毎月分配型のメリットは、基準価額が下落する局面において「マイナス複利」の効果が薄まることぐらいしか見当たりません。運用しながら定期的にお金が入ってくる安心感や分かりやすさは捨て難いのかもしれませんが、結局のところ、実際の運用成績を知るためには、現在の基準価額に過去の分配金をすべて加えて計算する必要があります。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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